【統計で見る】イギリス人は貯金・投資している?個人のお金事情

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お金・経済

イギリスを統計で見るシリーズ。

今回は、イギリスの個人の財政状況について。日本でもiDecoやNISAなどの個人投資サービスがだんだん広まってきているが、イギリスにもさまざまな個人投資用のサービス、プラットフォームがある。私もイギリスで積立投資(インデックスファンド)をするようになった。

この記事では、貯金・投資という2つの側面において、イギリスではどのような状況なのか、統計資料から見ていく。日本円換算は当記事執筆時点での為替レート(1ポンド=約152円)を参考にしている。

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イギリス人の貯金事情

元資料:金融、経済に関する大手メディア「Finder」の「Saving statistics」(リンク先は定期的に最新の情報に更新される。当記事執筆陣に参考にしたのは2021年2月更新版。今後、リンク先の内容は当記事の内容と変更になる場合あり)

  • イギリス人の9%はまったく貯金を持っていない。また、1/3は600ポンド(約9万円)未満の貯金しか持たない。
  • イギリス人の41%は収入なしで1カ月生きられるだけの貯金がない(ちなみに、専門家によると最低3カ月生活できるだけの貯金があることが望ましいとされている)。

これは結構衝撃である。4割以上が働かなくては1カ月も生活できないとは……。

  • 2020年の1年間でイギリス人が貯金した平均額は6757ポンド(約100万円)であった。

ただ、上記のように貯金が少ない人がかなり多いことを考えると、この平均額は多額の貯金をしている少数の人が押し上げている数字である可能性がある。

また、世代ごとの平均貯金額は以下のようになっている。

  • Z世代(1996年以降生まれ)…2530.71ポンド(約38万円)
  • ミレニアル世代(1981~1996年生まれ)…4614.04ポンド(約70万円)
  • X世代(1965~1980年生まれ)…6160.57ポンド(約94万円)
  • ベビーブーマー世代(1946~1964年生まれ、日本の団塊の世代に該当)…9758.54ポンド(約148万円)
  • 沈黙の世代(1928~1945年生まれ)…9497.96ポンド(約144万円)

20代イギリス人の貯金状況

若い世代の統計資料がイギリス統計局で見つかったので、さらに深掘りしてみた。上の統計よりやや古い資料となる。

元資料:イギリス統計局「How well are you doing compared with other young people?(2018年発表、統計期間は2014~2016年のもの)」

  • 22~29歳の53%は貯金がまったくない(41%だった2008年と比較すると貯金なしの割合は10%以上増加している)。
  • 一方、同世代で貯金をしている人の平均貯金額は1600ポンド(約24万円)であった。
  • また、借金(学資ローン、奨学金を除く)をしている人の割合は37%と、2008年の49%より10%以上減っている。ただし、借金がある人の借金額は平均1900ポンド(約29万円)で、2008~2010年の1800ポンドよりもやや増えている。
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イギリス人の投資事情

 

元資料:金融、経済に関する大手メディア「Finder」の「Investment statistics」(リンク先は定期的に最新の情報に更新される。当記事執筆陣に参考にしたのは2021年2月最新版。今後、リンク先の内容は当記事の内容と変更になる場合あり)

※イギリスでは、個人の投資に使われている口座はstocks & shares ISAという日本のNISAのモデルとなった個人投資用口座が主流である。ISA内の取引で得られた利益には税金がかからず、2021年現在は毎年最大2万ポンド(約300万円)まで積み立てられる。そのほか、ISAには貯金用や生命保険用、住宅用など複数の種類があるが、ここでは投資用のISAに限った数字を紹介する。

概要

  • 2019年時点でstocks & shares ISAを持っている人は220万人。全体の3%に該当する。
  • ISAを持つ人のうち、男性は56.5%、女性は43.5%。
  • 男性の73%、女性の61%が投資を考えている。
  • stocks & shares ISA口座の平均資産額は2万7000ポンド(約410万円)。男女別では男性が2万9500ポンド(約440万円)、女性が2万5800ポンド(約390万円)。
  • イギリスの株の13.5%は個人が保有している(残りは投資会社や銀行などが保有) 

新型コロナウイルスと世代別の投資に関する意識

イギリスではオンラインやアプリでの投資サービスが多く出ており、多くの人が投資について考えるきっかけは増えてきている。

資料参照先の金融・経済大手メディア「Finder」の行った意識調査では、「新型コロナウイルス流行の間に投資をすでにした・または検討する」と答えた人はZ世代(1996年以降生まれ)で75%、ミレニアル世代(1981~1996年生まれ)で74%と、3/4を占めた。

一方、X世代(1965~1980年生まれ)は69%、ベビーブーマー世代(1946~1964年生まれ)は60%、沈黙の世代(1928~1945年生まれ)は41%と、年代が上がるにつれ投資に興味を持つ人の割合は減っていくという結果となった。

投資をする理由

同じくFinderの意識調査では、投資をする理由も明らかになった。

多かった理由は以下だ。

  • 通常の貯金用口座の金利が低すぎる(54.90%)
  • 配当収入がほしい(51.38%)
  • うまくいっている企業があれば投資したい(33.43%)
  • 投資サービスにアクセスしやすいから(28.87%)
  • うまくいっていない企業があれば投資したい(22.21%)
  • 多くの人が投資をするようになったから自分もやってみたい(16.68%)

投資を検討している人のうち、「市場の崩壊によって、今後12カ月以上の投資をしようと思うようになった」と答えた割合が特に高かった世代は、Z世代(28%)とミレニアル世代(26%)であった。また、この世代は投資用のプラットフォームやアプリが出てきたことにより、より投資をを検討し始めるようになったとも答えている。

さらに、配当を狙っているのはミレニアル世代が特に多いようで、42%が投資をする理由に「配当」を挙げた。


 

イギリス人の収入、賃金については以下も併せてご覧いただきたい。

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