「ロンドン橋落ちた」の歌詞でよく知られているロンドン橋(London Bridge)は、ロンドンの中心を流れるテムズ川に多数かかる橋の中でも、知名度が群を抜いて高い。「London Bridge station」という駅もあるほど、ロンドンでは親しまれている歴史ある橋だ。
しかし、その知名度とは裏腹に、世界中から来る多くの観光客がより映える見た目の一大観光地「タワーブリッジ(Tower Bridge)」と間違えている。
2つともロンドン中心部で、歩いて行けるほどの距離しか離れていないが、人の集まり具合はだいぶ異なる。
今回は、そんなロンドン橋とタワーブリッジについて詳しく紹介したい。
目次
ロンドン橋と頻繁に間違えられるタワーブリッジとは
ロンドン橋はおそらくイギリスで最も有名な橋だ。イギリスを代表する橋ということで、多くの人が「一目見たい!」と思い、「これがロンドン橋だろう」と思って訪れてしまうのがこれだ。
堂々とテムズ川にそびえる、ゴシック様式のタワーを2本備える大きな橋。これはタワーブリッジである。ロンドン橋ではない。
なぜロンドン橋と間違えられてしまうのか?
単純に、派手な造形や欄干の鮮やかな青色も相まって「いかにもロンドンを代表する橋です」という顔をしているからだろう。
また、テムズ川の画像といえば、この橋がかなりの確率で映っている。それくらいフォトジェニックだし、ロンドンのアイコン的存在なのだ。
夜はこんな風にライトアップされるし、目立つ目立つ。さらに、すぐ隣にはこれまた一大観光地であるロンドン塔があるため、「これがかの有名なロンドン橋だろう」と思っても仕方ない。
このタワーブリッジについての詳細はもう少し後で紹介するとして、もう1つ混同の理由を説明したい。本物のロンドン橋の姿がほとんど知られていないことだ。
実際のロンドン橋は、どんな橋なのだろうか。それを知っておけば、今後2度と間違えることはないだろう。
実際のロンドン橋
じゃん。これがかの有名な「ロンドン橋」である。
地味。ひたすら地味。知らなかったら絶対に見過ごしている(一応、夜はピンク色にライトアップしているが)。
渡ってみても地味。特筆すべきことはない。観光で行く価値は「ロンドン橋を渡ってみた」という事実くらいしかない。名前だけが先行した、完全にがっかりスポットである。
また、ロンドン橋に行くには、ロンドン・ブリッジ駅よりもモニュメントという別の駅の方が近い。なんだそれは。(ロンドン・ブリッジ駅からももちろん徒歩で行けるけど)
それなのになぜ、童謡で歌われるほど有名になったのか。それは、この橋がロンドンの歴史とともに受け継がれてきたからである。
2000年もの歴史を持つ橋
現在のロンドン橋のある場所には、古代ローマ時代から2000年近くさまざまな橋がかけられてきた。ロンドン橋は、記録に残っている中でテムズ川上最古の橋である。
最初の橋は木製で、紀元50年頃に古代ローマ人によってかけられたという。橋の付近には徐々に商業を営む人々が集まり、集落、街、そして都市へと発展していった。
この橋は、歴史の中で破壊、再建を繰り返してきた。古代ローマ人が去ってから、ロンドンにはさまざまな民族が大陸から訪れ、その領土を争った。その都度、橋は敵勢により破壊され、勝利者によって再建された。
有名な童謡「ロンドン橋落ちた」の「落ちた」は、11世紀の王権争いにより橋が破壊された事件を指しているという説もある(この歌詞の由来は諸説ある)。
1209年にできた橋は、その後600年以上壊されることはなかった。中世には、このロンドン橋上に店を開いてもいいという許可が国王から出され、200近くの店が建てられたという。商業の中心の1つであったのが、この橋だったのだ。
大量の店舗によって道路幅が狭まったのに加え、交通量も多いこの橋では、引き車が壊れたり馬が言うことを聞かなかったりすると、渡り切るのに1時間かかることもあった。そのため船を使って水上から川を渡ろうとする者も多かったという。
さらに、橋の上では謀反罪を犯した者の生首がさらされたという記録もある。
18世紀終わりには、600年耐えてきたロンドン橋を新しいものに換える計画が立てられ、新しい橋が1831年に完成。だがこの橋も、基礎部分が沈下してしまったため取り壊すことになってしまった。結果的には、壊さずにアメリカの実業家に1968年に売却し、今でも観光名所になっているという。
この時にはタワーブリッジができており、すでにロンドン橋との混同が起きていた。「アメリカの実業家はタワーブリッジと勘違いしてロンドン橋を購入した」という都市伝説まで生まれたという。約50年前から、この2つは取り違えられていたのだ。
現在のロンドン橋は、1972年と比較的最近できたものである。
なぜロンドン橋は派手に装飾しなかったのか
現在のロンドン橋のデザインは、建設当時の一般的な橋のデザインだという。
ここまで古くからある伝統的かつ重要な橋を、なぜこんな地味にしたのだろう、と疑問に思うが、この橋は機能性を優先し、かつ長い年月の利用に耐えることを想定して建設されたため、装飾のないシンプルな作りになったようだ。
観光ならタワーブリッジ一択
というわけで、ロンドン観光でテムズ川を渡るなら断然タワーブリッジをおすすめする。こちらも、歴史はロンドン橋には敵わないとはいえ、1894年に完成したそこそこ古い橋だ(現在のロンドン橋よりも古い)。
基本的には塔の下の歩道(↑)を歩く。
高さのある船が下を通る時は、中央部分がパカッと開くようになっている。開いている間は当然、歩行者も車もしばらく通行止めになる。頻繁に開くわけではないので、見られた人はラッキー。
どうしても開くところが見たい! という人は、公式サイトで開くタイミングを確認できるので、スケジュールを立てるべし。
2本の塔を結ぶ上の回廊は、元々は「下の道路が開いた時でも上に登れば通れるように」ということで作られたらしいが、上に登るよりも橋が閉まるのを待つ人が多くてあまり使われなかったようだ。
現在は博物館の展示スペースとして利用されているほか、展望台スペースとしても人気がある。
タワーブリッジを渡るのは無料だが、タワーの上に登ったり展示を見るのは有料となる。
タワーブリッジを挟んでテムズ川北岸には、近代的なビルが多く立ち並ぶ金融街「シティ」と、世界遺産である中世の城塞「ロンドン塔」が隣り合わせになっている。
特に夜はライトアップされ、現代的な夜景と中世の建物が入り混じった、なんとも幻想的な風景となる。南岸から見るのがポイントだ。
また、暖かい季節には水上バスで移動するのもおすすめ。ルートによってはタワーブリッジの下をくぐることができる。
住所:GW4F+5V St Katharine’s & Wapping, London
料金(博物館のみ):大人9.8ポンド(オンライン購入8.8ポンド)、子ども4.2ポンド(オンライン購入3.8ポンド)
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