ロンドンで暮らしていると、街中にどんな店が多くあるかがわかってくる。例えばパブ。日本のコンビニくらいの頻度で見かけるのだ。実際どちらが多いのだろう。そんなことを思い立ち、実際にイギリスにあるお店の数を複数業種ピックアップして調べ、まとめてみた。
日本の店舗数とも比較してみている。日本の人口はイギリスの約2倍(日本約1億2600万人、イギリス約6700万人、2019年の国家統計より)なので、人口に対する店舗の割合を考える際には、イギリスの店舗数を2倍にするとだいたいの規模がわかりやすいかもしれない。
※ただ、この記事で取り上げる店舗数統計はすべて新型コロナウイルス流行前のものである。2020年にコロナ禍で閉鎖した店も多いため、現在の数字とは異なる可能性があることを留意いただきたい。
目次
イギリスのパブの数は約4万軒(2019年)
イギリス人にとって欠かせないものであり、アイデンティティでもあるのがパブ。イギリスではどこを歩いても必ずパブに着くくらい、本当に多くの店がある。
BBCの記事によれば、国家統計で出された2019年のイギリス全体のパブの数は約4万軒(チェーンだけでなく小規模の店も含む)。2008年までは5万軒を超えていたというから、年々減少している。
とはいえ、人口6600万人に対し4万軒はすごい数である。もしイギリスが日本と同じくらいの人口だとすると、パブの店舗数は約8万軒という規模になる。
日本の居酒屋の数と比較してみたかったが調べてもいまいちわからなかったので、やはり全国に多数あるコンビニで比べてみた。同年(2019年)の日本全体のコンビニの数は約5万6000店(大手チェーンのみで個人店は含まれない)。一人当たりに対する店舗数はイギリスのパブの方が日本のコンビニより多いようだ。
こう見ると、イギリスにはいかにパブが多いのかがわかる。イギリス人にとってパブは古くから社会に根付いている、切っても切れないものなのである。
そんなイギリスのパブに関してもっと詳しくはこちら。
カフェはイギリス全体で2万5000軒(2019 年)
紅茶大国のイメージがあるイギリスだが、コーヒーももちろん人気がある。イギリスでは1日に9500万杯のコーヒーが飲まれている(ただ、紅茶は1日1億6500万杯なので、紅茶の方がずっと多く飲まれているのは事実だ)という統計もあり、街中にはカフェやコーヒーショップが多く存在する。
2019年のイギリス全体のカフェの数は約2万5000軒(個人店や小規模店も含む)。イギリスが日本と同じくらいの人口で同割合のカフェがあると考えると約5万軒といったところか。
では日本のカフェ・喫茶店の数はどうだろう。見つけられた一番新しいデータが2016年だったので同じ年ではないのが残念だが、その数約6万7000軒(個人店や小規模店も含む)であった。日本の方が一人当たりの店舗数が多い。イギリスよりもカフェの需要が高いようだ。
イギリスのケバブショップは2万軒(2019年)
ケバブはもはやイギリスで国民食化しているといってもよい。安い、早い、うまいで人気の座を勝ち取っているファーストフードである。ケバブだけでなく、ハンバーガーやピザを一緒に売っていることもある。
ケバブショップもそこら中にある。ロンドンの観光地だらけの中心部では見かけることは少ないが、少し中心部から外れたり住宅エリアに行くと多数出現する。
ケバブ業界(独立した業界ができるくらい大きいということだ)の統計によれば、2019年のイギリスにあるケバブショップは2万軒以上。パブの半分。イギリスが日本と同じくらいの人口で同割合のケバブ屋があると考えると、約4万軒。ふむ。
日本では明らかにケバブショップは少ないので比較はできないが、日本のラーメン屋みたいなもんかな? と考え、ラーメン屋の数を探してみた。ラーメン業界の動向を追っているサイトによると、2020年3月の段階では全国のラーメン屋の数は約2万7000軒だという。
うーむ、イギリスのケバブ屋は日本のラーメン屋よりも人口一人当たりの店舗数がずっと多いのか…。すごいな……。ちなみに、ケバブは「飲んだ後のシメ」としての需要もあるので、本当に日本のラーメン的な立ち位置かもしれない。
イギリスの美容院・床屋の数は約4万3000軒(2017年)
美容院や床屋は多くも少なくもないイメージだったが、実際に調べてみたら意外な結果だった。
NHBFという美容・理容業界団体の統計によれば、2019年のイギリスにある美容院や床屋の数は約4万3000軒。パブより多い…!!
日本と同じ人口だと考えて換算すると6万8000軒、約7万軒だ。
では日本は? と思って同年(2019年)のデータを調べてみたら、ものすごい数字が上がってきた。厚生労働省の統計によると、その数なんと美容院(美容所)だけで約25万軒。別枠にされている床屋(理容所)は約12万軒なので、合計すると約37万軒となる。
何かの間違いではないかと思って何回も確認してしまった。コンビニとカフェとラーメン屋を足しても全然及ばない。一人当たりの店舗数はイギリスの5倍以上。すごい。日本は美容院・床屋大国だったのだ。
イギリスのドラッグストア・薬局は約1万2000軒(2019年)
イギリスのドラッグストアは、日本とほぼ同じような業務形態となっている。薬、化粧品、衛生用品、日用品、軽食や飲み物などを販売し、処方箋カウンターも備えている。薬販売と処方箋を主に扱う小規模な薬局もまた存在し、どちらもpharmacyと呼ばれる。
統計会社の統計によると、2019年のイギリスのドラッグストア・薬局店舗数は約1万2000軒。イギリスが日本と同じくらいの人口で同割合のドラッグストア・薬局があると考えると、約2万4000軒。
では日本はどうか。同じく2019年のドラッグストア含む薬局数は約6万軒という結果となった。イギリスに比べるとかなり多いし、日本国内だけで比べてもコンビニより多い。健康大国の本気を数で見た感じがする。
さて、複数業種の店の数を日英で比較してみたが、調べているうちに、イギリスの事情よりも「えっ日本の美容院や薬局ってコンビニよりも多いの!?」という驚きに気を引かれてしまった。
個人的には、イギリスは日本と逆でパブやケバブ屋を減らし、その分ドラッグストアを増やせばもっとヘルシーな国になるのでは……と思った。社会的に深刻な肥満問題なども少し改善されるのではないか。
こんな切り口でイギリスを見てみるのもなかなか楽しいものだ。
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