ロンドンに住むことはイギリスに住んでいると言えるのか、と時々考える

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ロンドン・イギリス生活

東京からロンドンに移住して、5年が経過した。「イギリスの文化」「イギリスの●●事情」について、これまでいろいろな人にさまざまな分野で質問をされたし、仕事でも、このブログでも紹介してきた。

ただ最近、「私は『イギリスでは〜』と話す機会が多いけれど、ロンドンしか知らないのに、そういうふうに言っていいのかなあ」と思うことがちょくちょくある。

最初に断っておくが、この記事は上記のような思ったことをつらつら書いただけの記事で、オチは特にない。

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そもそもなぜロンドンに住むことにしたのか

どこに住むにも、メリット・デメリットどちらもあるだろうけれど、ロンドンを選んだのは大きな都会が好きだから。これにはいろいろな理由があるが、私が特に重視したのはミュージアムである。

イギリスには入場無料のミュージアムが全土にあるが、その中でもミュージアム群最上級の質・量を誇るのは間違いなくロンドンだ。歩けば美術館や博物館にぶつかるこの街は、美術、歴史好きの私にとっては天国のようなところ。

参考:イギリス全土で国立の博物館や美術館が入場無料! その理由と背景とは(姉妹サイトの記事に飛びます)

あとは、さまざまな文化イベントやフェスティバルが年中行われていて、常に何か見るものがあるのもエキサイティング。

もちろん、将来的には違う生活スタイルに変わったり、興味が他に移ったり、その他いろいろな理由で、住む地域やまたは国さえ変える可能性もある。ただ、今はロンドンが大好き。

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ロンドンはイギリスの中でも特殊? 

そもそもイギリスは違う国が4つ集まってできている(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)という、日本人にとってはなかなか理解し難い前提を持っている。元は文化も言語も違う国で、今でもそれぞれの国が政府を持っている。

ウェールズ語、スコットランド語、アイルランド語は英語とどう違う? 
イギリスは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの国で構成されており、それぞれの国にそれぞれのオリジナル言語がある。 ここでは、それらの言語について調べてみたことを、ざっくりと紹介していきたい。 イギリスには4つの言語がある ©Matt Lewis それぞれの国で使われているのは、英語、ウェールズ語、スコットランド語、アイルランド語である。もちろん共通語は英語で、...

この中の国のどれを選ぶかでも、触れる文化はだいぶ異なるに違いない。

私はロンドン以外のイギリスの地域に住んだことがない。だから、ロンドン以外の状況は理解しているとは言えないのだ。ニュースで読むことくらいしかわからない。

もちろんロンドンでイギリスの生活や文化に触れられることは間違いないが、一歩ロンドンの外に出れば状況は違うという事柄も多々あるのだと思う。

EU離脱でもそうだ。ロンドンはEU残留派が多く、イングランド内のロンドン以外の地域では離脱派が多いという結果になった。ロンドンに住んでいたら、まさかまさか、離脱派が勝つなんて思いもよらないだろう。私はそうだった。ほぼ残留派しか周りにいなかったのだから。でもイングランドの他の地域に住んでいたら、そうした印象は全然違うものになっていたのかもしれない。

ロンドンは、世界の中でもマルチカルチャーな都市だ。世界各国から人が来て、住み、働いている。街中を歩いている時、バスや電車に乗った時、聞こえるのはさまざまな言語。英語が聞こえなくて外国語だけしか聞こえないこともある。

以前、イギリスに住む移民に関する統計についての記事「【統計で見る】イギリスにイギリス人は何人いる? 8人に1人が外国出身者」を書いたことがあったが、それに記載したように、イギリスで外国出身者が最も多く住んでいる地域はロンドンで、外国出身者は37%に上る。私もその一人だが。

ロンドンでは、イギリス人だけに囲まれた生活を送るとは限らない。むしろ私の場合は真逆に近い。仕事の相手(と言っても在宅なのでリモートでの付き合いがほとんどだが)は日本、欧州に限らず多国籍だし、夫はドイツ人で、仲の良い友だちはイタリア人、トルコ人、最近始めたボルダリングで会う仲間は、オーストラリア、チェコ、フランス、イギリスと多様である。多国籍文化にどっぷり、と言ったほうが正しいような気がする。

もちろん皆、英語を使いイギリスの文化や風土のもと生活しているのだけれど、それでも時折にじみ出るさまざまな文化に触れられるので、こうした人たちと過ごす日々はとっても楽しい。

皆さまざまなバックグラウンドを持っており、2つアイデンティティを持っている人もいる。私が定期的に通っている歯科の先生はイギリス人だけれど、家族はインド出身で、彼女のアイデンティティはイギリスとインド両方にある。

そして、流行のものが来るのも、さまざまな新しいお店やポップアップストアが生まれ消えていくのも、実験的なイベント開催も、年中ロンドンで見られる光景である。

イギリスで(おそらく)一番マルチカルチャーで、流行が生まれ、最先端のものや文化が集まる街。日本の中の東京のように、ロンドンはイギリスの中である意味異質な存在である、と言えるだろう。そんな特殊な場所に住むことを、「イギリスの文化の中で生活している」とは言い切れないのでは、と考えることがある。考えすぎかもしれない。「そんな特殊なロンドンも含めてイギリスの文化なのだ」という考え方もある。私はそっちの方が柔軟な感じでスキだ。

そういえば日本でも東京しか住んだことないんだった

まあ、イギリス=ロンドンというイメージはほとんどの人が持っていて、ロンドンに関する話題の方が需要があるのは実際そうなのだ。そういえば、日本=東京、と思っている外国人も多いよなあ、東京しか知らない人も多いけど……とつらつら思いながら、「あ、私は日本でも東京しか住んだことないな」とハッとした。

東京の生活しか知らずに、日本を知っていると言えるのか。もちろんイギリスのことよりは詳しいとはいえ。私の知らない日本の中での暮らしや風習、文化は数え切れないほどある。これは疑いようがない。

全容の把握は難しい

そもそもその国の文化をすべて把握するなんて無理な話だ。生まれ育った国でさえこうなのだから。人は結局、自分が見ているもの、自分に起きていること、身の回りのことしか理解できない。

だから結局、住んでいる場所で起きていることや見たものについてしか語れないし、それでいいと思う。ロンドンについてだってまだまだ知らないことの方が多いし。

ただ、その時でも「イギリスでは」とひとくくりにする前に少し立ち止まって考えてみる意識を持とう、と思った。そして、「自分が見ているものは、全体のほんの一部にしか過ぎない」と認識することも大事だと。情報発信の結果としてはあまり大きく変わらないかもしれないけれど、この意識を持つだけでもものの見方の偏りを少しは減らせるのではないか、と思っている。

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