イギリスで生活していると、ちょくちょく「the UK and Europe」という言い方に出会う。ニュースだったり、オンラインコンテンツのコメントだったり、ちょっとした会話の中だったり。
イギリスもヨーロッパの国の1つのはずなのに、なんでだろう? と不思議だった。
なので、この謎に迫るべく調べたり考察したりしてみた。
島国と大陸
「ヨーロッパ」という言葉は、しばしば「イギリスを抜いたヨーロッパ」の意味で使われることがある。
地理的なことから言えば、イギリスはヨーロッパにある。これは間違いない。だが、イギリスは自分たちを大陸ヨーロッパから切り離して考えるメンタリティを歴史の中で発展させてきたのだ。
大陸から離れた島国であるという地理的要素の影響は大きい。地続きで他の国に簡単に行けない、また簡単に侵入されないという歴史は、イギリスのいわば隔離、孤立した状態を作ってきた。同じ島国である日本人ならよく意味がわかるに違いない。
島国はどうしても、地続きの場所に比べたら外との交流も狭まる。その結果、文化や個性も大陸とは異なってくる。
現代でも大陸ヨーロッパと違うシステムを採用している例として、身近なのは通貨。EUに加盟していた時も、イギリスは頑なにポンドを貫き通した。また、今でも測量単位には他のヨーロッパの国と違ってヤード・ポンド法を用いている。
あと、地味なところでいえば、「イングリッシュブレックファースト」と「コンチネンタル(大陸の)ブレックファースト」の違いなどもある。笑 「Continent(コンチネント)」は「大陸」という意味の一般名詞だが、イギリスでは大陸ヨーロッパを指す意味で使われることも多い。
また、強大な軍事力で世界中に植民地を作り、英語を世界共通語にするまでにいたった「大英帝国」の歴史も深く刻まれているし、大陸ヨーロッパの国々と多くの戦争を行って対立したことは歴史が語るとおりだ。
こうしたことが複雑に絡み合い、自分たちの国は自立しており、どこかに属するものではない、という意識が一層強いのかもしれない。
今でも知られている、イギリスの新聞タイム紙が1940年代に出した有名な見出しがある。
Heavy fog in Channel — Continent cut off(海峡を濃い霧が覆い、大陸は切り離された)
これは、「イギリスが大陸から切り離された」のではなく、「大陸がイギリスから切り離された」と言っている。この言葉は、イギリスの独立思考のシンボルとしてよく引き合いに出される。
その証明とも言えるものが、最近行われたEU離脱だ。ヨーロッパの同盟から抜けたがった人々が、(残留派と僅差であったとはいえ)過半数いた。
イギリスは自分たちをヨーロッパ人だと思っている人が少ない
実際、イギリスでは自分たちを「ヨーロッパ人」だと考えている人が他の国に比べて少ないのだという。
2016年のニュースでは、「ヨーロッパ人の中で自分たちをヨーロッパ人と考えている人が一番少ないのはイギリス人」と報じられている。
このニュースによると、欧州委員会がヨーロッパ人を対象に行なった調査で、「自分のアイデンティティはどこにあると思うか」という質問に対し興味深い結果が出たという。
この質問に対する答えは4種類から選べ、「自分の国のみ」「自分の国でありヨーロッパ」「ヨーロッパであり自分の国」「ヨーロッパのみ」で、どの国でも最初の2つがほとんどの割合を占めた。
「自分の国でありヨーロッパ」と「ヨーロッパであり自分の国」は、どちらにも属しているがどちらがより優先されるか(先にくる方を優先)の違いだ。
ちなみに、自分たちを「ヨーロッパ人」だと思っている人たちが一番多かったのはルクセンブルグで、「自分の国のみ」が17%、「自分の国でありヨーロッパ」が61%、「ヨーロッパであり自分の国」が14%、「ヨーロッパのみ」が7%という結果であった。
他にも、自分を「ヨーロッパ人」だと思っている人たちが多めの地域は、ドイツ、オランダ、スペインなど。
一方、イギリス人は真逆で、自分たちをヨーロッパ人と考えている人が一番少なかった。
内訳はこうだ。
「自分の国」が64%、「自分の国でありヨーロッパ」が31%、「ヨーロッパであり自分の国」が2%、「ヨーロッパのみ」が1%。
他にも自分たちの国に対してのアイデンティティが強い国はキプロス、ギリシャ、ラトビアなどだが、イギリスがぶっちぎりの上位である。
というわけで、イギリスはヨーロッパなのだけれども、人々はイギリスとその他のヨーロッパをわけて考えることが多いようだ。それは地理、歴史、それに伴う文化の違いなどが絡み合って生まれたマインドなのだろう。
ちなみに、イギリスの中にも4つの国がある。歴史と文化は複雑で、呼称のバリエーションも多いのだ。
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