ウェールズ語、スコットランド語、アイルランド語は英語とどう違う?

2018年5月5日

イギリスは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの国で構成されており、それぞれの国にそれぞれのオリジナル言語がある。

ここでは、それらの言語について調べてみたことを、ざっくりと紹介していきたい。

イギリスには4つの言語がある

©Matt Lewis

それぞれの国で使われているのは、英語、ウェールズ語、スコットランド語、アイルランド語である。もちろん共通語は英語で、基本的にはどの国でも英語が話されているが、英語も国ごとに独特のアクセントや発音がある。

特にスコットランド英語は、イギリス人にとってもかなり聞き取りづらいことでも有名だ。
イングランドの中でも、もちろん地域によって別の言語、また英語の方言や訛りがある。

それぞれの国に行くと、英語とオリジナル言語と2言語が併記されている看板が多い。

では、英語以外の3言語はどんな特徴があるのだろうか。私は言語学者ではないので専門的なことは書けないが、調べてみてわかったことをまとめてみた。

ケルト語と英語

その前に、少しだけ歴史的なことを。イギリスと呼ばれるこの島には、大きくわけて2種類の古い言語があった。

現在のイギリス人の祖先であるアングロサクソン人は、5世紀にグレートブリテン島に渡り、先住民族だったケルト人・文化を駆逐していった。

このアングロサクソン人の言葉(ゲルマン語派)→イングランド語(英語)の基礎

先住民のケルト人の言葉(ケルト語派)→イングランド以外の地域の言語の基礎 

となったのである。

これを踏まえて、以下を読んでもらいたい。

ウェールズ語

起源

ガロ・ブリトン語群Pケルト語というケルト語の一派から来ている。ローマンアルファベットこそ使っているものの、文法も発音も語順もかなり異なる。

特徴

英語のアルファベットは26文字なのに対し、ウェールズ語は28文字。J、K、Q、V、X、Zなどが存在しない(外来語には使うこともある)代わりに、FF、RH、NGなど2つのアルファベットがくっついて1文字となっているものがある。fを「ヴ(v)」の音で発音するらしい。だからVがいらないのだろうか。「フ」の音には、ffというアルファベットがあるようだ。

文の語順はVSO(動詞・主語・目的語)が基本。名詞には性(男性・女性)、数(単数・双数・複数)の区別があり、それぞれ変化する。双数とは数が2つの物に限り用いられる変化形で、英語にはない。

変わった音の変化として、単語が2つ並ぶとその組み合わせに応じて、2つ目の単語の最初がスペルと音が変わるのだという。変化のパターンは3種類あるようで、聞くだけでかなり複雑そうである。

英語との関係

ウェールズで英語が公用語となったのは、イングランドに合併された1536年以降。ウェールズとは古英語で「よそ者」を意味し、ウェールズ語ではウェールズ語を「Cymraeg(カムライグ)」と呼ぶ。

英語が公用語となるとともにウェールズ語の使用が禁止されたため、現代にかけて話者はかなり減ったが、20世紀を過ぎてからウェールズ語保護・復興の動きが起こり、話者の数はまた増加し始めたそうだ。現在は小中学校でウェールズ語の授業があるという。

備考

ウェールズには世界一長い名前の駅がある。Llanfairpwllgwyngyll-gogerychwyrndrobwll-llantysilio-gogogoch駅である。

日本語で無理やり表すと、「スランヴァイルプールグウインゲルゴウゲールウクウィールンドロブウリスランダスイハオゴゴゴッ」となるらしい。まるで何かのバグみたいだ。最後の「オゴゴゴッ」が特に。

しかし、公式文書上ではこの駅名はLlanfairpwllと短いものしか登録されていないらしく、オフィシャルに一番イギリスで長い駅名は、やはりウェールズにあるMaes Awyr Rhyngwladol Caerdydd Y Rhwsらしい。

スコットランドの言語

起源

スコットランドで話されるオリジナル言語は、スコットランド・ゲール語とスコットランド語(スコッツ語)の2種類がある。

スコットランド・ゲール語はゴイデル語群Qケルト語に属する。ウェールズ語のガロ・ブリトン語群Pケルト語とは異なる派のケルト系言語である。
スコットランド語は、中世英語から分離したゲルマン語の一派で、古い英語の発音が残っているという。

  • スコットランド・ゲール語とアイルランド語
  • スコットランド語と英語

これらは兄弟のような言語なのだそうだ。スコットランド語を英語の一部とする説もある。
ここでは、その英語に近いスコットランド語の方を見ていきたい。

スコットランド語の特徴

文法も語彙も英語にかなり近く、語順は英語と同じSVO型である。スペルが異なるものも結構あるようだ。about→aboot、welcome→walcomeなど。

1983年出版のスコットランド語版新約聖書の一説だと、こうなる。

スコットランド語:Aa this happent at the wurd spokken bi the Lord throu the Prophet micht be fulfilled.

英語:All this happened at the word spoken by the Lord through the Prophet might be fulfilled.

表記が違う単語もあるとはいえ、かなり英語と近いことがわかるだろう。

英語との関係

16世紀半ばから、政治や上流階級のイングランドとの交流により、書き言葉に英語の影響が増え始めたとされる。20世紀までの間に、スコットランド語は「教育を受けていない者の言語」として扱われ、世代を経るごとに話者はどんどん少なくなっていった。

ただ元々が英語に近い要素があるため、スコットランド英語と呼ばれるスコットランド特有の単語や発音を用いる英語にシフトしていったようである(実際、スコットランド語とスコットランド英語は境界もあいまいなようだ)。

しかし現在ではスコットランド語の復興の動きが出てきており、学校教育にも取り入れられるようになったりしている。

アイルランド語

起源

アイルランド語もゲール語の一種ゴイデル語群Qケルト語に属し、アイルランド・ゲール語とも呼ばれる。スコットランド・ゲール語と同じ起源を持つとされる。

特徴

英語のアルファベットが26文字あるのに比べ、アイルランド語のアルファベットはA、B、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、O、P、R、S、T、U +Vの19文字しかない。

文の語順はVSO(動詞・主語・目的語)が基本。

名詞は男性名詞・女性名詞に分けられる。数の区別は単数・複数のみだが、複数形のパターンが多様なため、すべて覚えないといけないらしい。

発音はスペルに沿っているとは言い難く、wikiに載っていた一例をあげると、アメリカ合衆国= Na Stáit Aontaithe Mheiriceá(ナ・スターチ・エンティハ・ヴェリキャー)、日本=An tSeapáin(アン・チャパーン)、ドイツ=An Ghearmáin(アン・イェルマーン)など、だいぶスペルと発音が離れているような印象を受ける。

英語との関係

イギリスの一部である北アイルランドは、アイルランド共和国に比べてアイルランド語話者が圧倒的に少ない。

アイルランド共和国では、義務教育でアイルランド語履修が必須であるという(それでも英語で生活している人が多いので、大人になると忘れてしまうらしいが)。アイルランド政府はアイルランド語の公的な使用を推奨、さまざまな保護政策を行っている。が、今時アイルランド語をしゃべっているとインテリぶっていると敬遠される雰囲気もあるらしい…。

備考

古アイルランド語よりもさらに古い、元の元である原アイルランド語は、最古のゲール語(4~7世紀)だという。アイルランドとグレートブリテン島の一部で碑文が発掘されたことで知られている。

©Jaqian

使われたアルファベットはオガム文字といい、文字というより線を組み合わせただけのような形で、音の違いを表すのに用いたとされる。上の画像の碑文は「NMSILLANNMAQFATTILLOGG」と書いてあるらしい。


ケルト語派のウェールズ語、スコットランド・ゲール語、アイルランド語は、ゲルマン語派の英語とは成り立ちが異なるので、まったく別の言語である。スコットランド語は同じゲルマン語派なので、英語の仲間のようなものだ。

ケルト言語系の言語をもともと使っていた人たちは、今は英語で生活している。古代の「侵略」が言語を通じて少し見えたような気がした。