この記事では、イギリスの最低賃金(minimum wage)と、生活賃金(living wage)について紹介したい。この2つは異なるのでイギリスに住む際には注意が必要だ。
イギリスの最低賃金
イギリスの最低賃金は、労働者の年齢によって変わってくる。また、最低賃金は毎年4月に更新される。
2020年現在、イギリスで法律で定められている最低賃金(時給)は、政府の発表によれば以下のとおり。
18歳未満……4.55ポンド/時間
18~20歳……6.45ポンド/時間
21~24歳……8.20ポンド/時間
25歳以上……8.72ポンド/時間
この最低賃金は、以下の人を除いてすべて適用されなければならないものだ。
- 自営業者
- 会社重役
- 16歳未満
- ナニーやオーペアとして住み込みで働き、部屋や食事を与えられている者
- 軍隊所属者
- ボランティアや職場体験活動者
- 宗教団体内で活動する者
- 囚人
- インターン
- その他国が定めた特定のプログラムに参加している者
しかし、実際の「生活するために必要とされる賃金=生活賃金(living wage)」はこの通りではないようだ。
イギリスの生活賃金
イギリス政府によると、生活賃金と最低賃金はイコールであるらしい。が、これは実際の生活費とはかけ離れているようだ。よりリアルな生活費を算出するために、Resolution Foundationという財団が、最低賃金とは別に生活賃金を算出している。
それによると、最新の生活賃金データは2019~2020年度のもので、ロンドンは10.75ポンド/時間、その他の地域は9.30ポンド/時間となっている。
最低賃金はこれより低く、特にロンドンでは最低賃金と生活賃金の差が顕著である。ロンドンで最低時給で働いていると、なかなか生活は苦しくなる、ということは理解しておいたほうがいい(もちろんうまくやりくりできれば、やりようはあるだろうけど)。
しかし、ロンドンでも最低賃金程度の時給で雇用しているところはたくさんある。ホテルの最上階に入っているオシャレなバーのバーテンダーでさえ最低時給のところもある、という話を聞いたことがある。
最低賃金未満で働いている人がたくさんいる
現実は厳しい。法で定められているにもかかわらず、最低賃金未満で働かされている人がイギリスにはたくさんいるようなのだ。
国家統計「Low pay in the UK: Apr 2016(当記事執筆当時最新)」によると、推定ではあるが、2016年4月時点で全体の1.3%の仕事が最低賃金未満であったらしい。数にすると36万2000。
フルタイムとパートタイムにわけると、フルタイムの仕事のうち0.9%が、パートタイムの仕事のうち2.4%が最低賃金より下。パートタイムの方が割合が多い傾向にある。
最低賃金未満の仕事が多い業界
※青が仕事の数、オレンジが割合
横軸は左から、美容師、保育、サービス業(飲食店など)、清掃、ソーシャルケア、小売、レジャー・旅行・スポーツ、食品加工、転職・就職エージェント。
上記統計のグラフより抜粋。一番割合が多いのは美容師業界で7%。その次に保育、サービス業が続く。
職探しの際は注意
ワーホリ等で来る人は仕事をイギリスで探すことが多いと思うが、職探しの時は、上記の最低賃金を守っている職場であるかきちんと確認するよう注意したい。
ちなみに、イギリスでは基本、企業から交通費は出ない(日系の会社なら出るところもある)。交通費が出ないのは違法ではないので、これも注意されたし。
もし最低賃金未満の支払いしか受けていない場合は、きちんと雇用主に話をするべきだ。
こちらは、そうした時のためのガイドライン。もし雇用主と話をしても解決しない場合は、最終的に法廷まで持っていく手続きも紹介されている。
この最低賃金の過去20年の推移はこちらから。
【統計で見る】イギリスの過去20年間の最低賃金(時給)の推移とは?
イギリス人の平均的な給料の統計はこちらから。
コメント