※イギリスでは、国営の保健サービス(NHS)の救急車は、居住者であろうと観光客であろうと無料です。事故や緊急事態の場合、迷わず999に電話してください。
イギリスの医療システムは、日本とはかなり異なるので、日本人には最初はわかりにくい。この記事で簡潔に説明しておきたいと思う。
目次
イギリスの医療システム
要約するとこの2点である。
- どんな症状でもまずはGPという専門医にかからなければならず、最初から専門の科(耳鼻科、皮膚科、外科など)に直接かかれない(緊急時を除く)。
- イギリスにはNHSとプライベートという2つの保険システムがある。
1つずつ説明していこう。
GPという制度
これは日本人には馴染みのない制度である。
イギリスの病院で診察を受けるには、まずGP(General practice)という「かかりつけ医」に自分の住んでいる地域内で登録しないといけない。なので、選べる医院は限られている。
上記はNHSのページ。ここから自分の家のポストコードを入れると、登録できるGPのリストが出てくるので、その中から選んでオンラインで登録する。実際に訪問しての登録も可。
※2015年から、この範囲外のGPにも登録できるようになったそうだが、その申込みを受け入れるか受け入れないかはGPが判断するとのこと。
引っ越しなどでGPを変えたら変更登録をする必要がある。診察履歴は受け継がれるようになっている。
NHS病院には必ずGPがおり、プライベート病院でも総合病院にはGPはいるので、必ず最初はGPの診察を受けることになる。
プライベート病院の場合は、普通に病院に予約をし、行った先でGPの診察を受けることになる。
どんな症状であろうと、まずこのGPにかからないといけない。このGPは幅広く一般的な症状を見られる医師とされていて、包括的にどんな症状でも診てくれる。
最初から専門の科に直接かかれない
日本のように、症状によって「今日は耳鼻科に行こう」「内科に行こう」などができない。
まずGPの診察を受け、GPが「これは専門医にかかった方がいい」と判断したら専門医に紹介状を書いてくれて、そこで初めて専門の科にかかれるという仕組みだ。
この場合、通常NHSの専門医を紹介されるが、個人で保険に入っていて希望すれば、プライベートの専門医にもレターを書いてくれるはずだ。
日本では、最初から眼科、耳鼻科、内科、外科など、専門医に診てもらえるが、ここではワンクッションおかなくてはいけない。
私はいまだにこのGP制度に慣れない。はっきり言って非効率だと思う。
プライベート診療とNHS診療
上のGP制度に加えて、イギリスの病院は、2種類にわけられる。プライベートとNHSだ。
プライベート
プライベート病院とは、NHSは使えず、自費診療または個人で加入している保険を使って治療を受ける病院。日本の海外旅行保険が使える日本人対応の日系病院などはプライベート病院に属する。
メリット
- NHSと比べるとサービスはいい。
- 自分で行く病院を選ぶことができる。
- 予約も比較的すぐとれる。
デメリット
- 自腹で払うととんでもなく高い。
- どの保険にどの病院が使えるか確認しなくてはならない。
NHS
NHSとは国民保健サービス(National Health Service)で、要は国民健康保険が使える病院だ。日本はどの病院でも基本保険診療が使えるが、イギリスは「NHS専用」の病院しかNHS保険を使えない(といっても国内全土に数多くある)。
メリット
- 外国人でも使える
- 無料で診療を受けられる(薬代はかかる)
- 救急車や緊急外来も無料
デメリット
- 予約がとれない。最低2週間前などざら。風邪などには使えない(ただもちろん緊急の場合の緊急外来はある。)
- 適当な医者もいる
というのは、無料なのでいつも混んでいるのと、NHS提携病院の医師は、プライベートの医者とは違って、どんなに患者を診ても収入が変わらない。なのでモチベーションが低い医師も多い。
※NHSの保険料はイギリスで働く場合、給料から天引きされる。だが、2015年から外国人に対しては特別に、ワーホリなどのビザを事前に申請する際、その年月分(2年滞在のビザなら2年分)のNHS料金の支払いが義務付けられた。就労ビザなどのTier2ビザに関しては不要(2018年5月現在)。
あともちろん、NHSでは原則英語での会話になる(無料の通訳サービスがあるところもあるので、必要な場合は問い合わせてみよう)し、日系病院でも必ず日本語対応のお医者さんに当たるとは限らない。持病がある人などは、自分の症状や普段使っている薬を英語で言えるようにしておくといい。
NHSナンバーとは
税金や給与に紐づけられる国民保険番号のNIナンバー(ナショナルインシュランスナンバー)と見間違えそうだが、全く違うものなので注意。
NHSナンバーとは、初めてNHS病院に登録する時に受け取れる個人用の10桁の番号である。GPからの手紙に必ず記載されている他、オンラインでも確認できる。
NHSではそれぞれの患者をこのナンバーで確認している。このNHSナンバー、知らなくても診察は受けられるが、いろいろな場面で聞かれることが多いので、把握しておいた方がいい。直近では、コロナウイルスワクチン接種の際に何回も聞かれた。
薬代は有料だが一律料金
診察や治療は無料だが、処方箋の薬代は別途支払う必要がある。薬代は一律で、1アイテムにつき9.35ポンド(2021年6月現在)。街中の薬局やドラッグストアではどこでも、薬を処方してもらえる。任意の薬局をお気に入りの薬局として指定することもでき、
定期的に薬代がかかる人は、サブスクサービスを使った方がお得な場合がある。それに関しては以下の記事も参考にしていただきたい。
NHS病院はアプリから診察予約やリピート処方箋注文が可能
こうしたNHS病院では、NHS公式アプリや、Patient Accessなどのアプリに登録すると、診察予約や処方箋のリピート注文がアプリからできるようになる。
とても便利だが、アプリ登録のためにはGPに来院または連絡をして、専用の個人キーを発行してもらう必要がある。GPに登録する際に、一緒に「オンラインサービスも使いたい」と申し出て、キーを入手するのが一番効率が良いと思う。
緊急時の連絡先と医療関連のアドバイスを受けられる電話番号
緊急時電話番号:999
医療のアドバイスが受けられる電話番号:111
この2つの番号は覚えておこう。999は、いかなる医療関係に限らず緊急事態の場合にも使える番号で、警察、救急車、消防車、その他救助隊など幅広いサービスにつながっている。早急に治療が必要な場合は、救急車でNHSのA&E(救急外来)に運ばれることになる。
「救急外来に行くべき症状なのか迷う……」「この怪我や症状は緊急に対処必要だと思うけどどうすればいいのだろう」という事態に陥った時は、111に電話することをおすすめする。これはNHSの緊急連絡先で、24時間年中無休で
When to use 111(公式サイト)
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