「アメリカ英語の方がイギリス英語より古い」は本当?その詳細を解説

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英語

アメリカ英語とイギリス英語には数々の違いがある。発音の仕方もかなり異なるし、スペルの違いや単語の意味の違いまで、その差異は大きい。

以前、「アメリカ英語の方がイギリス英語よりも古い英語であり、今のイギリス英語は最近発展したものだ」というのをどこかで聞いたことがあった。

どうやらこれはある程度一般に広まっている(?)説のようだ。

本当のところどうなのか気になったので調べてみた。結果、「基本合っているが、実際はより事情が複雑である」といったところのようだ。

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アメリカに英語が伝わったのはいつか

アメリカに英語が伝わった時期とは、イギリスの人々がアメリカへ渡った時である。

宗教改革により、カトリックとは異なるキリスト教的思想を持つピューリタンは自分たちの新天地を求め、1620年にメイフラワー号という船に乗って北アメリカに渡った。アメリカの英語の歴史は17世紀から始まったのだ。

BBCの記事「How Americans preserved British English」で詳細が説明されていたので、これを中心に訳しまとめてみた。

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アメリカ英語に残った古いイギリス英語の特徴

現代のアメリカ英語の特徴に、「R」の発音の仕方がある。rhoticityと呼ばれるものである。彼らはこれをしっかりと巻き舌で発音するが、イギリスでは巻いて発音しない。

しかし、1600年代のイギリスでは、多くの人が現代のアメリカ英語と同じように、Rを巻いて発音していたという。イギリスでRを巻かなくなる傾向が生まれたのは、ちょうどイギリス人がアメリカに渡ったのと同じ頃とされるが、アメリカに渡ったイギリス人の多くは、まだRを発音していた地域から来た人々であった。

このRの音については、現在のアメリカ英語は当時のイギリスの発音を残していると言える。

アメリカの孤立した地域はより昔のイギリス英語を残している

上記のような特徴を除けば、アメリカ英語全体が17世紀のイギリス英語の要素を強く残しているとは言い難く、それはアメリカ内でも孤立した地域、島や山間部などに限られるようである。

その一例として知られているのが、バージニア州のタンジール島だ。この島は外界から孤立している場所であり、携帯電話の電波もほとんど入らないという。ここには、1700〜1800年代にイングランド南西部のコーンウォールやデヴォンという地域から人が渡り、ずっと住み続けている。

今でも住人の苗字は限られたいくつかのものしかなく、入植当時からずっと孤立してきた歴史があったことを思わせる。

彼らの英語は強い方言を持っており、他地域のアメリカ人が聞いても理解が難しい場合があるという。この方言は、当時(1700年代)のコーンウォール方言の影響を色濃く残しているという説がある。一方で、「これは長く孤立したことによりできた方言であり、コーンウォール云々の影響は薄い」とする学者もいる。

これと同じように、17世紀のイギリス英語の特徴を持つ英語が、ノースカロライナ州の山岳地帯であるアパラチア地方でも話されているという。アメリカ英語の一方言というよりは、より古い英語の影響の方が強いとみられている。

「シェイクスピア時代の英語」はクイーンズ・イングリッシュよりアメリカ英語に近い

容認発音と日本語で訳されるクイーンズ・イングリッシュは、英国王室や教養のある上流階級の人々が行う発音法だ。公共放送BBCのアナウンサーの発音法としても知られる。

シェイクスピア作品の演劇では、通常この発音が用いられる。

しかし実際は、シェイクスピアの時代、またはエリザベス女王1世の時代(1500〜1600年代)のイギリス英語のオリジナルの発音(Original Pronunciation)は、クイーンズ・イングリッシュよりも現代のアメリカ英語に近く聞こえるのだという。

シェイクスピア時代の実際の発音「Original Pronunciation」

2000年代初頭から、シェイクスピア時代の実際の発音とされる「Original Pronunciation」で演劇を行う動きが現れている。Original Pronunciationは、当時の人々が日常的に使用していた発音だとされる。

このOriginal Pronunciationを学ぶアメリカの俳優たちに言わせると、これはクイーンズ・イングリッシュよりアメリカ英語の発音に近いという。

つまり、クイーンズ・イングリッシュですら、その形をそのまま残してはおらず、時代と共に変化してきたものであるということだ。

また、Original Pronunciationはものによって北アイルランドや、西イングランド、南アフリカの英語にも聞こえるという。

イギリスでは過去数百年で英語の発音がかなり変わっている。

  • Original Pronunciationと現在のイギリス英語
  • Original Pronunciationと現在のアメリカ英語

上の2つを比較すると、前者の方がより違いが大きいということであるらしい。


というわけで、結論としては「アメリカ英語の方が現代のイギリス英語よりも古い時代のイギリス英語に近い」というのは正しいようだ。だが、実際に古いイギリス英語の特徴が強いアメリカ英語は限定的な地域にしか残っていない、というところだろう。

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