イギリスのニュースを読むために知っておきたい、ちょっと特殊な頻出単語

英語のニュースには、さまざまな固有名詞が出てくる。企業名や製品名などもそうだが、その国特有のものの呼び方や略称がついている単語も結構ある。

英単語をどんなに覚えても、こういう単語は「実際に出会うまで知ることのできない」言葉である。

この記事では、イギリスのニュースによく出てくる、イギリス特有の表現がされている特別な単語をいくつか紹介していきたい。こちらに住んで日々ニュースに接していればすぐに慣れるし、住んでいなくても一回知ってしまえば覚える苦労さえいらない簡単な言葉だが、知らなければ知らないままになってしまいがちなもの。

Met/Scotland Yard(ロンドン警視庁)

MetはMetropolitan Policeの略で、要はロンドン警視庁のこと。別名、Scotland Yard(スコットランドヤード)ともいい、どちらも日々頻繁に目にする単語だ。

ニュースでの実際の使われ方はこんな感じ。

Two Met police officers arrested over photo of murdered sisters(殺害された姉妹を写真に撮ったことでロンドン警視庁の警官2人を逮捕)

Scotland Yard to deploy facial recognition cameras to catch capital’s most violent criminals(ロンドン警視庁がロンドンで最も凶悪な犯罪者を捜索するために顔認識カメラを設置)

スコットランドヤードという通称は、初代のロンドン警視庁の本庁舎がロンドン、ウエストミンスターのグレート・スコットランドヤードという通りにあったことに由来する。日本の警視庁を桜田門と呼ぶようなものだろうか。

1890年に本庁舎はグレート・スコットランドヤードから別の場所に移ったが、新庁舎も「ニュー・スコットランドヤード」と呼ばれるようになり、その後数回の移転を経て現在でもその名前が引き続き使われている。

なぜロンドンなのにスコットランド?

渡英して最初にスコットランドヤードの看板を目にした時は、「なんでロンドンの真ん中に『スコットランドの庭』が?」と思ったものだ。

そもそもグレート・スコットランドヤードという通りがなぜその名前になったのかを調べてみた。明確な起源は不明だが、ここにスコットランド国王と外交官が訪れる建物があったのだそうだ。1500年代前半までに建てられた、いわば大使館のような建物だったという。なるほど、だからスコットランドという名前がついているのか。

その後、年代を経るごとに政治家や公務員の官舎が集まるようになり、1829年に初めて正式にロンドン警視庁が成立後、この通りに初代本庁舎が置かれるようになったというわけだ。

No 10/Downing Street(首相官邸、イギリス政府)

これはどちらも「首相官邸」のこと。また「イギリス政府」の意味でも使われる。

なぜこれが首相官邸を指すのかというと、実際に「Downing Street(ダウニング・ストリート)」上の10番の建物に首相官邸があるからだ。

首相官邸の扉

©Number 10

ニュースでの実際の使われ方はこんな感じ。

English pubs’ beer gardens will not open in June, says No 10(「イングランドのパブのビアガーデンは6月に再オープンすることはない」と政府が発表)

Coronavirus: Government can’t say how many test results are coming back within 24 hours – one day before deadline

本文:Downing Street cannot say how many coronavirus test results are coming back within 24 hours(政府は24時間以内にコロナウイルス検査の結果が何件出るか把握していない)

タイトルでは「Government」が使われているが、本文1行目ではDowning Streetが使われている。このように、「government」も政府の意味で使われるけれど、代わりの言葉が使われることもよくあるのだ。

ちなみに、お隣のナンバー11は財務大臣の邸宅となっている。

イギリス政府はWestminsterという呼び方も

また、イギリス議会があるロンドンのウエストミンスター(Westminster)という地区名も、イギリス政府のことを指す言葉として使われる。これも日本の永田町と同じような感じかな。

テムズ川に臨む有名観光地の巨大な時計塔ビッグ・ベンがある建物が、議事堂のあるウエストミンスター宮殿である。この地域は、約1000年にわたり政治の中心であり続けてきた。

MPとPM(国会議員と首相)

政治つながりで、これも覚えておきたい。MPとはMember of Parliamentの略で国会議員のことだが、正確にはイギリスの下院議員のことだ。

イギリス議会は上院と下院のある両院制で、上院は選挙ではなく任命された貴族で構成される貴族院、下院は選挙で議員が選ばれる庶民院である。下院の方が上院より権力が強く、また民衆の代表であるからか、ニュースなどで取材されたり報じられるのは下院議員が多い。

ニュースでの実際の使われ方はこんな感じ。

Coronavirus: MPs to keep two-metre distancing rule despite lockdown easing(コロナウイルス関連ニュース:ロックダウンが緩和しても国会議員は2m間隔を保つ)

複数の場合はこのように「MPs」とされる。

また首相(Prime Minister)はよくPMと略される。PM Boris Johnsonというように使われる。日本の首相を指す場合ならJapanese PM Abeとなる。MPとアルファベットが逆になっただけなので最初は混同しやすいかも? このMPとPMも、記事にはとにかくよく出てくる。

Tory/Tories(保守党議員、支持者)

こちらも政治つながり。Tory(複数形はTories)とは、イギリスの保守党議員、または保守党を支持する人のこと。保守党はTory Party(トーリー党)と呼ばれる。保守党は正確にはConservative Partyという名前があるのだが、保守党の前身がトーリー党という名前の政党だったため、現在の保守党もトーリーと呼ばれているのだ。

保守党の(下院)議員なら、上記のMPと併用してTory MPと表される。

ニュースでの実際の使われ方はこんな感じ。

Tory MP attended lockdown barbecue with journalists(保守党下院議員がロックダウン中にジャーナリストとのバーベキューに参加)

トーリーの語源は「無法者」

トーリーは中世アイルランド語で「盗賊」「無法者」という意味で、 この名付けの起源は17世紀のイングランド王位継承問題までさかのぼる。

当時、イングランドはすでにカトリックと決別したプロステタントであった。1660年に即位したイングランド王には後継ぎがいなかったため、弟のヨーク公ジェームズが王位を次ぐと思われていた。しかし、この弟がカトリックだったので、プロテスタントであるイングランドのポリシーに反する。ここでヨーク公ジェームズ王位継承賛成派VS反対派の大論争が起きてしまった。

反対派が賛成派を侮辱して呼んだ名がこの「トーリー」である。当時、アイルランドでは「トーリー」がイングランド人やプロテスタントを襲っていたという側面があったため、プロテスタントのイングランドに対抗するようにカトリックの人物の王位継承に賛成する人々になぞらえたのだろう。

ちなみに、賛成派は反対派をスコットランド語で「謀反者」を意味する「ホイッグ」と呼んだ。このホイッグも、現在のイギリスの自由民主党の前身であるホイッグ党の起源となった。


この他にもあるだろうけど、とりあえず上記が地名や人名、会社名以外によく出てくるものでパッと思いつくもの。知っておくと、イギリスのニュースの理解度が少し深まるとともに、調べる手間が省けると思う。