イギリスに来て知った、はんこのない生活。

イギリスに来てからというもの、当然ながらはんこ(印鑑)を全く使わなくなった。

はんこの代わりにすべてサイン(署名)

イギリスでは、契約書や公的書類などの重要書類に記入する本人の印は、すべてサイン(署名)となる。英語ではsignまたはsignature。基本は手書きだが、デジタル署名で済ませる場面も多い。

日本でも宅配便受け取りの際にタブレットに電子ペンでサインするサービスがあると思うが、あんな感じで、こちらでもサインが必要な宅配便や郵便やデジタルで行われる。

また、契約書でも、ものによってはデジタルで行うものもある。さらに、電子ペンでなくて普通にキーボードで打ち込んだ名前でサインの代わりとする、というものもある(以前賃貸契約の時にそういうのがあった)。デジタルフォントはもはや本人の筆跡でないのにいいのだろうか……と思わなくもないが。

日本とのサインの違い

私がこっちに来て遭遇したさまざまな「サイン」の場面で気づいたのは、西洋での署名は日本で思っていた「サイン」とは違うということである。

  • 下の名前はイニシャルでもOK
  • 判読不能なくらい崩してもOK
  • ちなみに、一文字ずつしっかりと記名をしないといけない欄には、「Print name」といった指示が書かれている
  • 有名人や芸能人のかっこいいサインは、サインではなくて「autograph(オートグラフ)」と言う

日本だと、書類にサインする時はフルネームをそれなりに読みやすく書く、というのが通例だった気がする。普通の書く名前とサインであまり差がない。

こちらで他の人がしているサインを見ると、ミミズがのたくったような感じのものばかり。

例として適当な名前(仮名)のサインを書いてみた。だいたいこんな感じ。これよりもさらに判別不能のものもよくある。

最初は「おお、そんなんでいいんだ」と面白く思ったが、慣れてくると便利。何枚もサインをしなければいけない書類でもすぐ終わる。日本式の記名+押印との時間差は比べるべくもない。

はんこのない生活はとても快適

そんな生活なので、イギリスには印鑑は持ってきておらず、実家に置いてある。はんこのない生活は正直、快適である。ペンさえあればいいのだ。

なくしたらいけないものとして印鑑を慎重に管理する手間もないし、本体だけならまだしも朱肉もセットでないと使えないという煩わしさもない。銀行や役所でも、いちいち持っていくものリストに印鑑を入れなくてもいい。

普段はその存在すら忘れているので、たまに日本の書類を見た時に「ああ、押印の欄とかあったね!」となる。

海外在住者が押印が必要な日本の書類を処理するには?

それでも、日本での手続きにおける書類で、押印や印鑑証明が必要なものもある。そうした場合、海外在住者(日本の非居住者)の場合は押印をサイン、また印鑑証明をサイン(署名)証明というもので代替できる。

特に政府や役所に提出する関連の書類はサインで代替できる。サイン証明は、在英大使館で発行してもらえる(大使館で印鑑証明は発行しておらず、サイン証明のみ)。

日本のはんこ文化をもう少し便利にしてほしい

だが、民間ではそうもいかないところもある。日本の法律では署名があれば押印は必要ないはずなのだけれど、現実には押印が絶対に必要だという書類が日本には多く存在している。

一度、日本の書類で押印が必要な欄に遭遇したことがある。海外在住で印鑑を持っていないのでサインでもいいかどうか尋ねたところ、社内規定で印鑑でなければならないの一点張りで、形だけでいいので実家の家族に押してもらってほしいと言われた時には、「それは意味あるのか…?」と思った。

こういうことがあったので印鑑をこっちに持ってくるか悩んだが、今のところこの1回限りだし、いちいち国を超えて移動させるのも躊躇われる。移動の間に紛失したくないし。

せめてデジタル印鑑なら、一度準備してしまえばその後困らないのに。そして日本に行った時のいろいろな手続きも簡略化できるのに。

日本がサイン文化になる、またははんこがデジタル化することを切に願っている。