イギリスに暮らしてわかったことを書いてみる。
イギリスでの体験を、海外生活、とくくってしまってはいけないかもしれないけれど、「日本を出る」という意味では皆同じようなことを経験していると思う。
海外に出て私が感じたメリットとデメリットを書いてみるよ。
目次
メリット
図太くなる、たいていのことに動じなくなる
これ。なんといってもこれ。違う文化圏に住むと、人は図太くなるのだなと思った。
日本と違う文化、違う社会システムの中で暮らしていると、最初はトラブルだらけだ。ただでさえイギリスのインフラは日本よりクオリティが低い。郵便物は届かないし、電車は来ないしよく止まるし、家の水道やヒーティングもよく壊れる。
そして何より人が良くも悪くも適当だ。「〇時に届けます/修理に来ます」とかはいつでも信用できるわけではないし、店で買った何かが不良品だったとか、駅の改札がカードを読み込まないとかそういうトラブルの時も、店員や駅員が「それは私のせいじゃない。アンラッキーだったね」みたいな感じなので(ちゃんとしてる人もいるけど)、どうしても理不尽な対処をされた時にはがっつり文句を言わざるを得なくなる。
でもそれをどうにか対処して生きていかないといけないわけで、これを繰り返しているうちに「図太くなる」のだ。
最初の頃はいちいち凹んでも、少しすれば慣れてくる。小心者の日本人である私も打たれ慣れてきて、心臓はもはや剛毛である。「慣れ」ってすごいな、としみじみ思う。
自分の考えをはっきり言うようになる
上の「図太くなる」と同じルートでだいたい形成されていくのが、「自分の考えをはっきり言うようになる」ということである。
イエス/ノーをはっきり言わない日本のような文化は、日本以外の国であまりないのではないかと思う。少なくともイギリスでは、はっきり自分の希望や考えを自己主張しないと、自分の思うとおりにならない。
「あなたはどうしたいの?」と言われることもあるし、「他人の考えを察する」という文化が希薄なので、失礼とか思わずガンガン自分の考えを言ったほうがいいのだ。もちろんわがままややりすぎはだめだけど。日本人が「これ、言い過ぎ?」と思うくらいはっきり言ってイギリスではちょうどいいくらいだと思う。
「はっきり言う」ようになってから、こんなに物事がスムーズに進むのか、と思うことがある。察しあい、探り合いの文化では前に進まなかったことが、声に出すだけですっと進むのが不思議なくらいだ。
行動的になる
これは人によると思うが、私はこちらに来てからより行動的になった。
「せっかく海外に来たんだから行きたいところに全部行くぞ!」と考えたのが大きい。悔いのないようにいろいろなものを見ておこう、と思った。
単純に知らない文化を見るのは楽しいから、自然と足がいろいろなところへ向かっていくのだ。
また、最初は誰も知り合いがいなかったので、友達を自発的に作らないといけなくて、イベントにたくさん顔を出した。
その時の様子はこちらから。
「世の中にはいろんな人がいる」を肌で感じる
イギリスは移民国家だけあって、とにかく世界中から人が集まっている。アジア人、ヨーロッパ人、アフリカ人、どんな人種もいるし、めちゃくちゃマイナーな国の人にも出会ったりする。ジンバブエの人と知り合ったこともある。
外見の多様性、は完璧に(いい意味で)無視される。肌の色、髪の色、体型、顔つきなどは皆違うからだ。これはロンドンという都心だからかもしれないが、どんな格好をしていても何も浮かない。裸とかでない限り。
髪の毛をピンクや緑にしていたりコスプレしている人もよく見かけるが、日本より皆スルースキルが高い。
また、そういう土壌のせいか、人種関係なく「何をやっていてもあまり変に思われない」文化がある。いろいろな生き方があるし、いろいろな趣味がある、という共通認識があるような気がする。
肩の力を抜いて生きられるようになる
いろいろな人がいて、皆周りの目を気にしないので、こっちに来てからすごく肩の力が抜けた。何をしても受け入れられるような感覚がある。
あと、日本では年齢はいろいろなところで聞かれたり、年齢によっていろいろ判断したりもするけど、イギリスではそれがない。何歳までに卒業、就職、結婚、出産(生物的限界はあるが)などのようなプレッシャーは、もちろんゼロではないだろうが明らかに日本より薄い。
「〇〇していないと普通ではない」という考えがないのだ。
デメリット
日本にいる人たちに簡単に会えない
家族・友達に会えなくなるのはやっぱり結構寂しい。
もちろんこっちでできた友達もいるのだが、中高から付き合っている長い付き合いの友達なんかはみんな日本にいるわけで。
ありがたいことに、ロンドンを訪ねてきてくれる人もたくさんいて、会えた時は感慨もひとしお。
毎回日本に帰るのも待ち遠しい。
イギリスから日本へ行くには、直行便でも12時間かかる。経由便なんか使ったら余裕で20時間以上かかる。
何か緊急のことがあっても駆けつけにくい、というのはデメリットだ。
言葉の壁は薄くなるけどなくならず、いつもそこにある
日本にいた頃よりは、もちろん英語への心理的なハードルは低くなった。でもネイティブにはやっぱりなれないわけで、ネイティブがスラングだらけで早口で喋っているとついていけない。
言葉の使い方なども、辞書に載っていないことは1つ1つ体験して覚えていかなければいけないのだ。
これは長い道のりで、死ぬまで終わることはないのだろうなあ、と思う。私だけでなく、非ネイティブの人は皆そうだ。
ネイティブ並みに英語ができる人でも、英語を第二言語として話している人であれば、壁にはぶつかる。
よく私の英語の間違いを指摘してくれる、ほぼネイティブと比べて遜色ないドイツ人の夫も、語彙や用法は当たり前だがネイティブには届かない。たまに聞き取れていなかったり、意味を取り違えたりする。周りの西洋人の友達や知り合いもそうだ。
あまりの自分のへぼさに、凹むこともあるし、失敗を繰り返さないといけないことに対して疲れることもあるけれど、イギリスは移民国家だ。多くの人が、生きるために苦労しながら英語を話している。
自分だけじゃない(特にヨーロッパ人でも英語に苦労している)ことを知ったら、結構気が楽になった。
信用できるものが少なくなる
私がイギリスで信じられないものはたくさんある。
地下鉄、銀行、郵便サービス、いきなり街で話しかけてくる人、などなどだ。日本では割と全面的に信頼しきっていたもの。少なくとも、あまり疑いは持たなかった。
正しくは「人に無闇に頼らなくなる」「自分を一番頼れるようになる(頼るしかなくなる)」だ。だから、一番最初に書いた「図太くなる」というメリットも生まれるわけだが……。
ロンドンの治安は悪くない。でも、日本よりはよほど気を付けないといけない。騙そうとしてくる人もいるし、自分の都合のいいようにしか動かない人がたくさんいる。
もちろん、私はここで生まれ育っていないから、「嗅覚がない」というのも原因の1つだろう。
そこで生まれ育った人間なら、「何を信じるべきか」「何を信じないべきか」「何が正しいか」「何が間違っているか」などが感覚でわかるのだ。私が日本でそうであるように。
長く住めば、嗅覚も研ぎ澄まされてくるだろうか。
最後は不安なことばかり書いてしまったが、良い面も悪い面も、「視野が広くなった」ということが私にとっては一番の収穫だった。これは日本だけにいては得られないものだと断言できる。
日本で生きていてもいろいろなことがあるし、海外で生きていてもそうだ。それは変わらない。
だから、なるべく自分のいる場所から自分の糧になるものを吸収して生きていきたい。
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