ロンドン生活では基本自炊しており、そのうちの8割は和食だが、やはり材料からして手に入らないものもある。こっちでは動物の内臓をあまり食べないため、普通のスーパーの精肉コーナーではモツやタンが売っていない。
イギリスの一般的な肉事情について詳しくはこちらを。
今回は、そんな私が牛タンを食べた過ぎて、ついに自宅で牛タンをさばいてしまった時のことを書いていきたい。生の牛タンの写真も出てくるので、ちょっとグロテスクに見えるところもあるかもしれない。
肉屋で丸ごとの牛タンを見つけてしまう
私は臓物に飢えていた。イギリスの普通のスーパーで売っている内臓は、鶏レバーかラムレバーくらいしかないのだ。
特に牛タンを思いっきり食べたい……! 日本食レストランでも扱っているところは数少ないし、たっぷり食べるには高くつく。自分で作って心行くまでたっぷり食べたいが、そもそも材料が手に入らない。
しかし、私は見つけてしまった。出先でたまたま入った肉屋で、丸ごと一本真空パックに入った牛タンが積まれているのを。
これまで、他の肉屋にも何度も行ったが、牛タンを置いているところは見たことがなかった。
ちなみに、そういう内臓とかタンとかを通販で頼める肉屋は結構ある。が、私はこの国の宅配制度をあまり信用していないので、生モノの宅配はなるべく避けたく利用していなかったのだ。
しかし、ここにきて牛タンを買えるチャンスが巡ってこようとは……!
重さは皮つきで1kgで約7ポンド。安い。
次の瞬間には「えっこれは自分で皮むけるのか? ていうか処理は簡単なのか?」という思いと、「安っ! 一本と二本どっちにしよう」という迷いが頭を駆け巡った。スマホで下処理の仕方を調べて「……イケる!」となったので一本購入した。
一応お店の人にも聞いてみたけど、お店で皮を剥いたりさばいたりはしてくれないということだった。おそらく、真空パックにすでに入っているものはそれ以上は手を加えてはくれないのだろう。塊でそのまま売っている他の肉は好きな形や重さに切り分けてくれる。
ちなみに、タンはイギリスではox tongueまたはbeef tongueという。
今回行った肉屋(肉屋は英語でbutcher、ブッチャーと呼ぶ)はこちら。質の良い肉を売っていて、レビューでも大変評判がいい。
Dickenson Quality Meats
住所:365 North End Rd, Fulham, London SW6 1NW
素人ががんばって牛タンをさばいてみた
ここからは、実際に牛タンをアレしてアレした記録である。
真空パックから取り出した直後の状態がこちら。ざらりとした厚い皮がついている(写真だとつるつるしているように見えるけど)。
やっていく。といっても素人なので、うまくはない。「皮を取り除いた状態にすること」だけを目的としていく。
包丁で表面の皮をはぐ。しぶといところは指でひっぱりながら切ったらまあまあうまくいった。
右に積んであるのが取った皮だ。根本(この写真の奥側)は取りやすかったが、舌先の方に行くにつれどんどん困難になっていく。先の方は結構ガタガタになってしまった。今後要練習である。
だが、身構えていたよりはうまくいった。コツは「よく切れる包丁を用意すること(包丁を研いでおくこと)」に尽きるのでは、と思った。我が家はドイツ人の夫が最近包丁研ぎに目覚め、とてもよく切れる新しい包丁があったので、そのおかげで初めてにしては十分戦えた、と思う。
あとは、皮を取るついでに見えている筋なんかも取っておくといい。
他にリサーチした結果としては、
- 一度凍らせて半解凍の状態にすると皮を削ぎやすい
- 皮をはいだ後は冷水に3時間つけて血抜きをすると良い
という情報があったが、この時は時間がなく、またタンへの欲望が切羽詰まっていたため冷凍はしなかった。また血抜きに関しては、切らない状態のまるごとのタンが入る器がなかったので、スライスしてから塩水につけ起きし、数回水を変えるという方法をとった。
そんなこんなで、皮が剥けたので焼き肉用にスライスした(血抜きはこの後)。ちょっと厚めに切って贅沢気分。この時点で私の期待は相当高ぶっていた。
かなりの量のスライスができたので、100gくらいずつ小分けにして冷凍しておく。
裏側の筋張っているような部分と舌先は、固くて焼き肉には向かないらしいので、後日煮込みやシチューにする用にぶつ切りにして冷凍。
この時には、まさか1kgのタンが一週間で消えるとは思ってもいなかった。
牛タンの食べ方いろいろ
さっそくシンプルに焼き肉の要領で焼いてみる。
うまい……!!!!
ひっさびさに食べたタン。食感。歯ごたえ。味。すごい。語彙が消滅した。
塩とレモンで食べると最高。最の高。焼き肉のたれでも美味しい。
そしてすぐ後日、ネギたん塩もやった。
見たまえこの神々しい姿を……!!!
固い部分で作った牛筋煮込みならぬ牛タン煮込み。タンシチューとかカレーでも美味しいんだろうけど、この時は和風がよかったので。
作り方はこんな感じ。
- 牛タンは3~4時間ほど酒+水(酒が手に入らなかったら最悪水だけでもいい)で煮込む。圧力鍋じゃなくてもほろっと柔らかくなる。
- 根菜やタマネギ、ネギなどを入れる。醤油・みりん・砂糖を大さじ1ずつ(全体の量によって変動必要。私は甘さ控えめが好きなので砂糖は少なめにしている)加えてさらに根菜類が柔らかくなるまで煮る。
- 個人的には煮詰めた方が美味しい(煮詰めると味は濃くなるので、その場合はそれを考慮して最初は薄いくらいの調味料を入れる)。煮詰めない場合は一度途中で冷ますと味が入りやすくなる。
醤油+みりんの組み合わせは適当に作ってもそこそこ美味しくできるので、便利。おつまみに良い。
でも、やっぱりレモンと塩が最高だよね~~!! と元祖に戻る。本当に美味しい(しつこい)。
いつも日本から飯テロされている私が、初めてイギリスから逆飯テロできているのではないか? と悦に入るほど良い体験ができた。
見事に一週間でなくなった。これは最後の一皿。また買いにいかなくては。
牛タンは部位によって全然食感が違う
自分でさばいてみて身をもって知ったのだが、根本の方に行けば行くほど、肉質がやわらかーくなっていく。そして先に行くほど固くなっていく。中央の部分は歯ごたえがある食感が良いといえば良いが、私はやはりとろけるような根元の方が好きだ。
こんなに部位によって違うものかと驚いた。新しいことを知れるので、やはり何でも体験してみるものだな、と思ったりして。
ネギ塩だれ、牛肉のたれは自作できる
日本では一家に一瓶が当たり前の焼き肉のたれも、こちらだとお高いためうちにはない。というわけで自作した。クックパッドには何でも載っている。
こちらのレシピを参考にさせていただいた。
- 砂糖 大さじ1
- 酒 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 生姜チューブ 小さじ1
- ごま油 小さじ1
- にんにくチューブ 小さじ1/2
- コチュジャン お好みで
- 白ごまお好みで
を混ぜるだけ。
ということだが、こっちには生姜やにんにくのチューブはない(日系スーパーにしかない)ので、パウダー(これなら普通のスーパーで売っている)で代用。コチュジャンはなく豆板醤があったのでそれを使った。最悪チリオイルとかでも良いと思う。※後に、英系スーパーでもしょうが・にんにくチューブが売られるようになった。
ネギ塩だれはもっと簡単である。
- リークのみじん切り……好きな量
- ゴマ油……ネギに絡む量
- ガーリックパウダー(チューブの代用)少々
- 塩こしょう 少々
を適当に入れて混ぜるだけ。味見しながら作って自分好みに調整するといい。ちなみにゴマ油はtescoやwaitroseというチェーンスーパーに売っている。
私が作った時はこんな感じ。牛タンからも脂が出るので、あまり油を多くしない方がいいような気がする。まあそこはお好みで。で、これをタンに乗せて、レモンを上から絞ると天国に行ける。
というわけで、意外とイギリスで牛タンを心行くまで食べれたというお話でした。これから定期的に買いに行くと思う。
イギリスの食文化についてはこちらから。
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