なぜイギリスではアルコールが高いのか? それには酒税が関係していた!

イギリスに来る前は、イギリスはワインやウイスキーなどの洋酒は物価を差し引いても日本より安いのだろうと思っていた。

旅行で行ったスペインやフランス、イタリアではワインボトルを2〜3ユーロから売っているのを見ていたからだ。輸入していたとしても、EU間では関税がかからないし、輸送費もそんなにかからないだろう…と。またウイスキーやジンなどは生産国だから日本より安いのだろうと…。

だが、それは間違いだった。イギリスではお酒が高い。

体感として、イギリスではビールは安いが、ワインは思っていたより高い。5ポンド以下のワインボトルはほとんどない。

またイギリスの特産であるウイスキーもジンですら、イギリスより日本で買った方が安いというわけのわからないことになっている(実際、イギリスの有名メーカーのジンが日本でイギリスより安く売られているのを見たことがある)。

周辺諸国では(少なくともワインは)安いのに、なぜ…?
日本では輸入アルコールには税金がかかっているだろうに、なぜ…?(←これも一部間違いだった)

実はそれには、イギリスの酒税の高さが関係していたのだ。

イギリスの酒税は何パーセント? 日本との比較

酒の種類によって、またその中でもさらにアルコール度数によって酒税は異なる。

イギリス政府のサイトが公表している酒税の一覧(2019年2月現在)から、イギリスの酒税を見てみよう。

ビール

ビールの酒税は日本と比べるとかなり低い。

  • アルコール度数1.2%より上〜2.8% 8.42ペンス/1度1L
  • アルコール度数2.8%より上〜7.5% 19.08ペンス/1度1L(普通のビールはほとんどこれに当てはまる)
  • アルコール度数7.5%より上 24.77ペンス /1度1L

1度1Lあたりの税率というのがちょっとややこしく聞こえるが、実際の税金額を出すときは以下の計算に当てはめればよい。

1度1Lあたりの税金額×購入するアルコール度数×リットル数

例:アルコール度数5%のビールを1缶(1パイント=568ml )を買った場合。
かかる酒税は19.08×5(%)×0.568(L)=約54ペンス(現在のレートで約77円)となる。

日本のビール税はイギリスより高い

政府が公表している酒税率一覧表より。

日本でビールにかかる酒税は、2019年2月現在1000Lあたり220,000円。つまり1Lあたり220円。ロング缶1本(500ml)あたり110円になる。だいたい同じ量のイギリスのパイントの税額と比べて随分高い。

そう、日本はビールの酒税が高い国なのだ。

しかし、日本政府はビールの酒税の改正をはかっており、2020〜2026年にかけて徐々に税率を引きさげる予定だという。

他のお酒になると、日本とイギリスの立ち位置は逆転する。

ワイン

ワインは泡なしと泡あり(スパークリングワイン)で税率が異なる。

泡なしワイン

  • アルコール度数1.2%より上〜4% 88.93ペンス/1L
  • アルコール度数4%より上〜5.5% 122.30ペンス(1.2ポンドほど。ここから1ポンドを超える)/1L
  • アルコール度数5.5%より上〜15% 288.65ペンス/1L(普通のワインはこれにあてはまる)
    アルコール度数15%より上〜22% 384.82ペンス/1L

スパークリングワイン

  • アルコール度数5.5%〜8.5%未満 279.46ペンス/1L
  • アルコール度数8.5%〜15% 369.72ペンス/1L

ワインの酒税は、1Lあたりの額なので計算はより簡単だ。

例:アルコール度数13%、泡なしの普通のワインボトル1本(750ml)を買った場合、かかる酒税額は以下のようになる。

288.65×0.75(L)=約216.48ペンス。つまり約2.12ポンド(約302円)。この時点で、販売価格2〜3ポンドのワインは成立しないのがわかる。

ちなみに他のヨーロッパ諸国のワイン税は、泡なしのワインでドイツ、イタリア、スペインは酒税0%、フランスではボトルあたりたった2ペンス相当であった。イギリスが突出して高いと言える(ちなみに、参考にしたリンク先で出されているUKのワインボトルあたりの税金額がこの記事の算出より低いのは、リンク先記事が出た頃よりも現在の酒税が上がっているからである)。

日本のワイン税

日本の国産ワイン(果実酒)にかかる酒税は、1000Lあたり80,000円。計算するまでもなくべらぼうに安い。1Lあたり80円で、ボトルワイン1本(750ml)で60円である。

イギリスのワイン税、この5倍なんだけど…?

ちなみにイギリスでは、ほとんどのワインがイタリアやフランス、スペイン、チリなど外からの輸入品である(ちなみにEU間では輸入関税はゼロ。EU離脱後はどうなるかわからないが)。

こんなにワインが安くて美味しい国に囲まれているのに、イギリスに入ってくると一気に高くなってしまう。なんということだろうか。

その他のスピリッツ(ウイスキー、ジン、ラムなど)

純アルコール1リットルにつき28.74ポンド(ペンスではない、ポンドである)

この場合、計算は上の二つの例と異なる。

例:アルコール度数40%のジン1Lのボトルを買った場合、酒税額は以下のようになる。
純アルコールの量は1Lの40%なので0.4L。28.74×0.4(L)=約11ポンド(約1567円)

この税額だけで、日本だったらウイスキー瓶1本とか買えそう…。

日本のスピリッツ税

日本で、ウイスキー、ブランデー、スピリッツにかかる酒税は、アルコール度数37度未満が1000Lあたり370,000円。37度を超える1度ごとに10,000円加算される。40%として計算してみると、1000Lあたり400,000円。つまり1Lあたり400円である。

同じ1Lのスピリッツでも、イギリスと日本では1000円以上も酒税に差があるのだ。ちなみに、日本では海外からのジン、ラム、ウイスキーなどの輸入の関税はゼロ(個人旅行のお土産などの個人輸入とは異なるので注意)なので、酒税と消費税しかかからない。

イギリス産のジンやウイスキーでも、日本の方が安く買えるのは酒税が日本の方が圧倒的に安いから、そして関税がかかっていないからだったのだ。

さらにイギリスで酒にかかる消費税は20%!

イギリスの娯楽品にかかる消費税は20%。お酒は生活必需品ではないので、いわば贅沢品としてこれだけの消費税が加算される。これが上の酒税にプラスされるため、トータルの販売価格はかなり高くなってしまうのだ。

イギリスの消費税についてはこちらを参照→イギリスの消費税(VAT)は20%!でも納得できるシステムなのはなぜか

イギリスのジンやラムは他の国に比べてアルコール度数が低い?

ジンやウォッカ、ラムなどのスピリッツのアルコール度数はだいたい通常40%程度であることが多い。

だが、同じ銘柄のスピリッツでも、ヨーロッパの他の国に行った時に見たものは40〜42%なのに、イギリス国内で売られているものは36%とか38%とか、微妙にアルコール度数が低いものがある。

これはおそらく、税金の高さから小売価格が高くなってしまう/店側が高い税金を払わなければいけなくなるから、といった理由なのではないかと思う。


というわけで、イギリスの酒税は日本と比べてビールだけは良心的だということがわかった。ビール以外では、日本の方が安く買えるのは間違いなさそうだ。

【統計で見る】イギリス人が一番好きなお酒はビールでもウイスキーでもなかった