【統計で見る】イギリス人の生活習慣を探る:運動と食生活の実態

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イギリスの食文化

イギリスを統計から見るシリーズ。

イングランドの肥満率について統計をもとに紹介した記事に続き、同じ資料「Statistics on Obesity, Physical Activity and Diet, England, 2019 」から、イギリス人の運動、食生活事情について取り上げる。画像もすべてこの報告書に拠る。© 2019, Health and Social Care Information Centre

※この統計はイングランドのみで、イギリス内の他の国は入ってない。

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成人の身体活動

イギリス政府が推奨する運動の目安

イギリス政府が発表している運動のガイドラインは以下のようになる。

  • 19歳以上の成人は日常的に運動すべきである。中程度の強度の運動を150分以上、または高強度の運動を75分以上を1週間で分けて行うこと。
  • 5〜18歳の子どもは中程度の強さ〜高強度の運動を最低60分〜数時間、毎日行うこと。

性別による成人の身体活動の状況

2018年の調査では、成人の66%が政府のガイドラインによると「活動的」、22%が「非活動的」とみなされた。残りの割合は「やや活動的」である。

一番上のグラフが男女の合計、2番目が女性、3番めが男性。男性(68%)の方が女性(64%)より活動的であることがわかった。

貧困と身体活動の関係(成人)

貧困率が高くなるにつれ活動的な人の割合は少なくなるという結果が出ている。

最も貧困率の低い地域では活動的な人の割合が72%だったのに対して、最も貧困率が高い地域では57%であった。

家庭の収入と子どもの身体活動の関係

家庭の収入と子どもの身体活動レベルは大きく関係していることがわかった。In 

一番上のグラフは家庭収入が低いグループ、中央は家庭収入が中程度のグループ、下が家庭収入が高いグループだ。それぞれのバーの色は、青が「毎日活動的である」、水色が「週単位で活動的である」、薄いグレーが「やや活動的である」、濃いグレーが「非活動的である」となっている。

家庭年収が低い家族では、1日の運動量が30分以内と非活動的な子どもの割合は39%。一方。家庭年収が高い家庭では26%と減少するという結果が出た。

大人も子どもも、貧困率が上がるにしたがり活動する人の割合が少なくなるようだ。

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食生活:食費や、食事の傾向について

では、イングランドの人々の食生活の実態はどんなものなのだろうか? 

イギリス政府が定めた健康的な食事のガイドライン

政府が定めている、健康的な食生活のガイドラインは以下のようになる。

  • 11歳以上:1日に最低5ポーション(※)以上の野菜と果物を食べること
  • 19歳以上の成人:1日の肉類、加工肉食品の平均摂取量が70gを超えるべきではない
  • 全年齢:1週間に最低140gの脂肪分の多い魚(サケ、マグロ、サバ、イワシ、ニシンなど)を食べること
  • 1日のカロリー摂取の5%より多くを砂糖(単糖類)で摂るべきではない
  • 1日のカロリー摂取の5%より多くを飽和脂肪酸(肉、乳製品、チョコレート、卵黄などに多く含まれる)で摂るべきではない

さらに詳しいガイドラインはこちらで読むことができる。

※ポーション分の野菜と果物ってなんぞや、と思って調べたら、政府のサイトに説明があった。1ポーション=80g分の野菜か果物らしい。具体的には、1ポーションはいちご7個、(小さい)みかん1個、グレープフルーツ半玉、ミニトマト7個、大さじ4杯分の調理済みほうれん草やキャベツ(? 何だこの単位……)など。

ちなみに、「ポテトは野菜にカウントされない」とちゃんと書いてあった。

イングランドでの平均飲食費は? 

2016〜2017年の調査によると、飲食物(外食、アルコールも含む)に費やす1週間あたりの平均費用は一人43.18ポンド(現在のレートで約6100円)であった。

その中では、家で食べる食材とノンアルコールの飲み物の割合が一番多く、週に26.34ポンドであった。

ちなみに、収入が全体の下位20%である低収入世帯では、家賃、光熱費に続いて食費が最も大きな支出(収入の14.3%)であるという結果も出た。

飲食費の使用傾向

  • 牛乳購入の費用は過去10年で減少している。
  • 鶏肉購入の費用は過去10年で増えており、2016〜2017年時には非加工肉製品で最も人気であった。また2番目に人気の肉は牛肉。(参考:【料理・食文化】イギリスの「肉」事情について語ろう
  • 調理済みの食品やすぐに食べられる肉製品は人気を増しており、2016〜2017年には統計史上最も高い購入費用を記録した。
  • 2006年から魚、魚製品の購入費用は減少し続けている。
  • 緑色野菜(生野菜)の購入は減少しているが、その他の野菜類(生野菜)の購入は増加している。加工済み野菜は全体の30%を占め、安定した購入割合を保っている。
  • いも類の購入は長期的に減少傾向にあり、2013年から8.8%減った。
  • 油脂類の購入も2010年より減少傾向にある。
  • パンの購入も長期的に減少傾向にある。

成人の野菜・果物摂取状況

2017年の調査では、野菜や果物を基準値(1日に5ポーション)以上摂取している成人は29%であり、女性の方が男性より割合が高い。

1日に摂取する野菜、果物のポーション

2017年の調査では、野菜、果物の成人の1日平均摂取量は3.8ポーションであった。

野菜、果物の平均摂取量は年齢によって異なる。この年代別のグラフでは、青が推奨摂取量(1日5ポーション以上)を摂っている人、水色が3ポーションから5ポーション未満、薄い灰色が3ポーション以下、濃い灰色が全く摂取していない人の割合だ。

16〜24歳は最も少なく3.3ポーションで、推奨摂取量の5ポーションを摂取している人の割合は23%と最も少なかった。「全く摂取していない」割合は10%いくかいかないかくらいだろうか。

子どもの野菜・果物摂取状況

2017年の調査では、野菜や果物を基準値(1日に5ポーション)以上摂取している子ども(5〜15歳)は18%であり、男女の差はない。この割合は2003年に11%だったものが2006年には21%と急増したが、その後16〜23%の間で増減を繰り返しており定まった傾向は見られないという。

食事と栄養の摂取状況:砂糖

1日のカロリー摂取量に対する砂糖の割合は、どの年代でも政府の推奨上限を超えているという。甘いもの大好きな人が多いイギリスらしいといえる。

子ども、成人男性、成人女性を大まかな年代別に分けた、1日の総カロリー摂取に対する砂糖摂取割合のグラフ。点線が政府の推奨する摂取割合(5%)だ。どのグループも推奨量の2倍以上となっている。

特に一番多いのが10代の子どもで、1日のカロリーのうち15%近くを砂糖で摂取している。

また、男性は19〜64歳よりも65歳以上の高齢者の方が砂糖摂取割合が多くなっている。

食事と栄養の摂取状況:飽和脂肪酸

さらに、1日のカロリー摂取量に対する飽和脂肪酸の割合も、全年齢で政府の推奨上限(11%)を超えている。

飽和脂肪酸とは脂質の構成要素の一種で、肉、乳製品、チョコレート、卵黄、ココナッツオイルなどに多く含まれているものだ。摂取しすぎると心臓、血管系疾患のリスクが高まる。

こちらのグラフも、点線は政府の推奨上限を示している。成人は男女ともに65歳以上のグループの方が割合が高くなっている。単に全体のカロリー摂取量が減ったから全体に対する飽和脂肪酸の割合が高くなるのか、手軽に食べられる乳製品などを好むのか、肉製品が好きな高齢者が多いのか、はたまた他の原因があるのか、理由はこのグラフだけではわからない。

食事と栄養の摂取状況:脂肪分の多い魚

脂肪分の多い魚の平均摂取量は、政府の推奨摂取量(1日20g、1週間で140g)を大きく下回っている。

ほとんどのグループで推奨量の半分程度/以下である。男性65歳以上のグループが最も高いが、それでも1日15gだ。

1日20gの魚とはどのくらいの量だろうか。日本で一般的に売られている鮭の切り身が一切れ70〜100gくらいらしいので、20gは鮭の切り身1/5〜1/3くらい……。逆に言えば、鮭を二切れ食べれば推奨摂取量は楽に摂取できてしまう……。

そう考えると、日本人からするとほぼゼロのレベルで魚を食べない人たちなのだ。

同じ島国なのに、イギリスの魚事情は日本と比べると本当に貧しいかなり異なるので、住んでいる身としてはこの数値も納得がいく。

参考:日本とはかなり違うイギリスの魚事情:高い、種類が少ない、生食できない

食事と栄養の摂取状況:肉や肉加工食品

肉類と肉加工食品の平均摂取量については、女性は政府の推奨する摂取量(1日に70g以下)を満たしていたが、男性は超過していた。超えてるといっても、グラフを見ると大幅に超えているわけではない。


肉も魚もそこまで食べていないが、砂糖と飽和脂肪酸(つまり油分)を推奨量より多く摂取しているということは、スイーツや乳製品などでカロリーを多くとっているのが平均的なイングランド人の食生活なのかもしれない。それなら、肥満率がかなりの高さになってしまっているのも必然だろう。

イギリス(イングランド)の肥満率についてはこちらから。

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