イギリスの国家統計から読み解いてみるシリーズ。
今回は、「イギリスの若年層ニートの数(2017年最新版)」について。統計データは2016年のものである。
興味深かったものを抜粋して訳してある。
元資料:Young people not in education, employment or training (NEET), UK: Feb 2017 (PDFダウンロードもあり)
目次
イギリスのニートの数は日本の3.6倍! ……本当に?
2016年10~12月にとった統計で、16~24歳のニートの数は82万6000人。前年同時期に比べると3万6000人減少した。16~24歳の11.5%がニートという計算となる。これも前年同時期と比べると0.4%減少した。
日本の15~24歳のニートの数は、「労働力調査2016年(総務省統計)」によると23万人。
ざっと計算して、同じ年代のニートの数は、イギリスが日本の3.6倍。日本は15歳から、イギリスは16歳からの統計だが、そこまで大きくは影響しないと思われる。
ニートの定義が違うことによる統計トリック
しかし、この数値差を単純に比較して「イギリスには日本の3.6倍ニートがいるらしいよ!」と騒ぐことはできない。統計の方法が違うからだ。
トリックとタイトルに書いたが、正確にはトリックではなくて、統計定義の違いである。
ここでまず、それぞれの若年層ニートの定義を見てみよう。
日本の若年層ニートの定義
総務省によれば、「若年無業者(ニート)の定義:年齢15歳~34歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない者」とある。
- 「家事もしていない」とあるので、主婦(夫)はニートから除外される。
- さらに、就職活動中の人は「完全失業者」の分類に入り、ニートから除外される。
ここがポイントである。
イギリスの若年層ニートの定義
若年層とは
16歳~24歳までを指す。
日本ではニートの人数統計は15~35歳までの範囲で出ているが、イギリスでは16~24歳の範囲でしか出ていない。ので、24歳以降のニートの数は不明。
ニートの定義とは
NEETの定義は、「仕事に就かず、教育も訓練も現在受けていない人」である。仕事はパート・タイムでも就業者と見なされるので、パート・タイム従事者はニートではない。
以下に当てはまらない人は「教育も訓練も現在受けていない」と見なされる。
- 何らかの教育課程に参加している(休学中も含む)
実習や研修中である(イギリスにはapprenticeshipという通学しながら企業で研修を受ける制度がある)
政府支援の雇用・訓練プログラムに参加している
資格取得のために勉強している・働いている
過去4週間内に仕事に関連した訓練や教育を受けていた
イギリスのニートは定義が広い
イギリスのニートの定義は、単純に「仕事に就かず、教育も訓練も現在受けていない人」である。
家事や介護をしていようが、就職活動中だろうが、病気で働けない状況であろうが、この定義に当てはまればニートなのである。
つまりニートの定義が日本より広いのだ。
イギリスの中では、ニートはさらに「就職活動中の人」「就職活動をしていない非労働力層(主婦、病気の人などいかなる理由も含む)」でわけられる。
イギリスのニートのうち就職活動中の人数
16~24歳のニートのうち、過去4週間以内に就職活動をした人は34万4000人。男女別では、22万3000人が男性、12万1000人が女性であった。
日本のニートの定義に当てはめるなら、この人々は除外されることになる。
82万6000人ー34万4000人=48万2000人。日本の2倍まで下がった。
残るは、非労働力層に分類される人たちだ。
非労働力層うち、男性は19万6000人、女性は28万6000人であった。ここに、家事をしている人も含まれる。内訳は公表されていないので、日本の定義で言うニートがどのくらいいるのかははっきりとはわからない。
女性の非労働力層が多いことから、子育てや介護などをしている主婦も結構な数いるのではないかと思われるので、実際の「日本の定義でのニート」数はここからさらに下がると見ていいだろう。
つまり、実質の比較で言えば、「イギリスのニート数は日本の2倍より下になる」ということ。
統計方法の違いでかなり結果に差がつくことがわかる好例。
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