ロンドンで「日常に潜む、物語に出てきそうな場所」の写真を撮ってきた

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ロンドン・イギリス生活

ロンドンを散策していると、「おっ」と目が引き付けられる風景に出くわすことがある。以前物語を読んでいる時に思い描いたような、映画の中のワンシーンのような、自分の中で作り上げられた何かの記憶のような、そんな風景。

歩いている時は基本的に、私の脳みそは現実と考え事の境目のような、ちょっとふわふわしたところを漂っている。そんな時の脳みそはすぐに妄想や想像を始めるので、目で見たそのシーンから、どんどん物語や架空の世界が膨らんでしまう。

有名な大聖堂やロケ地に使われた場所など、バーンと派手な雰囲気ある場所ももちろん好きなのだけれど、それはまあファンタジーな雰囲気があって当たり前のような感じがする。そうではない、普通に歩いていたら見逃してしまいそうな、何気ない場所にひっそりとある物語スポットの方が、より「やったぜ」というお宝発見感があるのだ。

今まで撮った写真を見返していたら、そういう感じの「本来なんでもない場所だけれど妙に雰囲気のある」一角や空気を切り取った写真が結構出てきた。今回はそれらをまとめて紹介したい。私の主観100%なので、勝手に浸っている感がかなりあると思う。これが私なりの街散策の楽しみ方の一つでもある。

撮影した場所は、ロンドン中心部からやや郊外の住宅街までさまざま。

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おとぎ話に出てきそうな風景

門を通って墓地を抜けた先には、誰かがひっそりと一人で住んでいそうな建物。誰が住んでいるのかな。魔法使いか、人付き合いの悪い男爵か。

実際は小さなローカル教会なのだが、妙に雰囲気がある。木にほとんど隠れた建物が、敷地内の墓地と相まって森の中の怪しい小城を思わせる。

こちらはロンドン中心部のキングス・クロスにある小さな教会。林の中にいきなり現れる邸宅のように見える。木漏れ日の中で見る石造りの教会は、太古の昔からここにあるような、今この瞬間出現したような、不思議な存在感がある。

この敷地内一帯は、林ではなく墓地兼公園のような感じになっている。上に向かって長く枝を伸ばす木々は、実物というより絵に描いたような、想像の産物みたいに見えるところも物語ポイント(?)が高い。

住宅街で見つけた、「物語に出てくる洋館」的な家。そんなに古くはなさそうだが、いい感じに緑の蔦が這っているのが気に入った。

曇り空の下で見たら、また違った雰囲気が出そうだ。

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物語が始まりそうな場所

緩い丘の上に並ぶ5本の木。1本だけ枯れているのは何があったのだろう、と想像が色々沸いてしまう。人っ子一人いない空間と、青と緑の綺麗な対比が絵になる。

これは貴族の古い館。上からカツ、カツ、と上品な足音を響かせて伯爵が出迎えてくれるのだ……(私の脳内の妄想)。

ではなく、実際は博物館Foundling Museumの内部。18世紀から1950年まで孤児を収容していた病院について伝える施設だ。時間になると静かにボーン……と鳴るのっぽの古時計がいい味を出している。

中で撮影したショートビデオ。なんとなく中の雰囲気が伝わるだろうか。階段は病院にあった当時のもので、手すりがなかった頃はやんちゃな男の子たちが滑って遊んでいたという。

王立裁判所の前を撮影。曇りの日に撮ったら、バスだけを鮮やかなカラーにしたモノクローム写真のような感じになってお気に入り。1882年に建設された歴史ある建物は厳かな雰囲気をまとっている。

慣れてしまって普段は気にも留めないが、昔の建築物と現在の乗り物が同じ視界に入るのは面白いものだ、とふとした時に思う。

走っている途中で石にされてしまったような、現代アートの馬の群像。素晴らしい躍動感で、この泉に噴水が上がっている時は本当に走っているみたいに見える。

なんだかアドベンチャーゲームのダンジョンを思わせる、荒れ果てた建造物と入口を守るスフィンクス。これだけちょっと例外。

なぜ例外かというと、この光景はもうこの世に存在しないからだ。ここはクリスタルパレス・パークという公園で、名前は1851年のロンドン万博で使用されたクリスタル・パレス(水晶宮)に由来する。ロンドン中心部のハイド・パークで万博が行われた後、水晶宮の建物がこの公園に移され、その周辺一帯はクリスタルパレスと呼ばれるようになった。

このスフィンクスたちはその水晶宮の一部。宮殿本体は1936年に火事で全焼したが、この彫像は現代まで残った。

だが、2016年に公園内の大規模な改修が行われ、このスフィンクスたちも修復されて当時のように赤く塗られたのだという。私はその前に行ったからこの150年以上の歴史を刻んだスフィンクスの姿を見ることができたのだ。

© Copyright Julian Osley

これが修復後のものらしい。うん、綺麗になった。これが本来の姿なのだろう。でも物語感は薄れてしまったな……。

夜のロンドン

夜にライトアップされている、小型の塔のような形の小さな教会は、綺麗だがちょっとホラーっぽさがある。昼と夜とでは随分見せる顔が違う。

それは石造りだからということもありそうだ、と思う。石の壁は闇に呑まれると随分冷たく硬く見える。

東ロンドンで見た、通りすがりの建物。夜はとても静かで、自分の足音がコツコツと響く。街灯こそついているものの、そんな静寂の中でこの建物の前を通ったら雰囲気がありすぎてぞくぞくした。

切り裂きジャックの事件があったエリアと近いエリアだったため、当時の夜もこんな光景だったんだろうか、なんてことまで考えてしまった。きっと、この静けさと石造建築物の組み合わせは、当時から変わっていないに違いない。

小川に浮かぶ船の本屋。「Word on the Water(水上の言葉)」という看板がまたいい感じである。

こんなのを本当に作ってしまう人がいるんだなあ。数年の間にちょくちょく見たので、定期的に同じエリアにいるのだと思う。

ぼうっと暗闇に浮かぶ姿は怪しげで目を引く。本物の船だが中にも本棚があり、普通の書店のように中に入って商品を見ることができる。

昼間はこんな感じ。夜に比べるとちょっと魔法が解けてしまった感じもあるが、船部分はこちらの方がよく見える。ちなみに、雨の日はきちんと雨除けをして営業している。


すべて予期していなかったタイミングで見つかった風景なのだが、意識して探してみればもっともっとこういう物語的スポットはありそうな気がする(でも頑張って探して見つけたらそれは偶然の「やったぜ」感がないの~! と思ってしまう私の面倒くさい性質)。

こうした日常に潜む素敵な風景に出くわすたびに、「ああ、私はこの国が好きだ」と思う。これからも自分の想像を掻き立ててくれる私だけの風景をこっそり探していきたい。

ロンドンが「全然知らない街」から「好きな街」になった。海外を「ホーム」と思う感覚
イギリスに住んで現在3年、自分の中で「イギリスがホームである」という感覚を随所に持つようになってきた。 生活の中で、自分が移民であることをつくづく思い知らされることもたくさんあるんだけれど、住み続けると、自分がイギリスでの暮らしに順応したんだなあ、と思うことがしばしばある。 旅行して帰ってきた時 一番イギリスをホームと実感する瞬間。イギリスの外に旅行に行って、イギリスに帰ってくる時、とても「...