映像と音響が炸裂する、パリのクリムト作品インスタレーションが美しい「Atelier des Lumières」

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フランス

今年(2018年)4月、パリにできた新しい美術館「Atelier des Lumières」に行ってきた。ウィーンの画家グスタフ・クリムトの作品を、映像と音楽を組み合わせた空間で没入体験ができるということで一躍話題となった美術館だ。

タイムスロット制で、3つのアートインスタレーションが約1時間で上映される。その3つのうちの1つが、話題となっているクリムト作品を題材としたインスタレーション「Gustav Klimt」(~2019年1月6日まで)である。

クリムトだけでなく、それ以外の作品もかなり面白かったので、写真と共にその魅力を詳しく伝えていきたい。

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Gustav Klimt

最初は前座的な短いインスタレーションから始まる。ボッティチェリやゴッホなど、西洋美術の巨匠たちの作品が次々と現れる。

ここの会場は、床と壁に映像が投影され、まさに作品の空間に360°入り込む体験ができるのだ。

会場の入口は、この写真の左側。会場中央には回転する柱がある(この写真では女性像が複数映っているところ)。このさらに奥には階段があり、上に昇ると2階から部屋全体を見渡せる。

140機ものビデオプロジェクターを使用して、会場全体に映像作品を投影しているのだという。

そしてついに、クリムトの有名な作品群が現れる。彼の作品に特徴的な金色が大画面でもよく映えている。

日本文化にも影響を受けていた、グスタフ・クリムト

クリムトは、19世紀末のオーストリアのウィーンを代表する巨匠である。エロティックで美麗な女性像を多く描き、特に「黄金の時代」と呼ばれる全盛期には、派手な色彩と金箔を多用しているのが特徴だ。

クリムトは日本文化に傾倒しており、侍の甲冑や仮面などを収集していた他、琳派や浮世絵などの作風の影響も受けていたと見られている。

一度、暗転したかと思ったら、今度はクリムトの「生命の木」が生えてきた。くるくると枝を伸ばし、広がって会場を包み込む。

これを見て、琳派を代表する江戸時代の画家、尾形光琳の作品ともその装飾性が似ていると思った(参考「本金地著色紅白梅図 尾形光琳筆 二曲屏風」↓)。

くるくると渦を巻いた、川の流れの表現。琳派は、こうした細やかな装飾性も特徴の1つだ。

景色は変化し、色彩が移り変わる。

色彩の渦に包み込まれそうになる。

そして、クリムトの代表作であり、黄金の時代の頂点と言われる「接吻」が現れる。

エゴン・シーレの作品も登場

クリムトが引っ込み、一転してエゴン・シーレの作品が映し出される。クリムトと同じく、オーストリアの画家である。シーレは、作風こそ異なるが、クリムトに多大な影響を受けた画家の一人である。

このシーレの一幕も、スタイリッシュで大変見ごたえがあった。

人物群が、流れる音楽に合わせてダンスを踊っているように舞う。クリムトとは違うベクトルで、人間の体そのものが力と存在感を持っている。

黒い背景がまたよく似合う。ぜひ本物の音響と共に体感してほしい。

そしてまた、カラフルな世界観にバックする。

再びの、クリムトの女性たちのお出ましである。シーレの暗めの作品との対比で、ますます色彩の鮮やかさが際立っている。

次から次へと人物像が現れて消える映像は、絢爛な花がぱっと咲いて消えるのを繰り返すような、そんな印象を残していく。

最後に現れたのは、晩年の代表作である「乙女」。黄金の時代を抜け、金色は抑えめになったが、鮮やかな色彩と夢見るような世界観は、より強さを増したような感じさえする。

このクリムトの展示は、2019年1月6日までということなので、パリに行く人はぜひ堪能してもらいたい。平日の昼間でも長い列ができていたので、事前予約することを強くおすすめする。

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クリムト以外のプログラム

クリムトのインスタレーションが終わった後には、2つの他の作品も見ることができる。これらも、大変素晴らしいものだった。

フンデルトヴァッサー(Hundertwasser)

クリムトのインスタレーションが終わって少し間があく。

突如、まったく様式の異なるサイケデリックな空間に包まれる。

この作品は、オーストリアの現代芸術家、フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー(1862~1918年)の作品を用いたインスタレーションである。

フンデルトヴァッサーとは「100の水」という意味で、日本語ではそのまま「百水」という号を使っていたようだ。

このインスタレーションでは、「百水の画」という文字で埋め尽くされた場面もあった。ちなみに、彼は建築も手がけており、東京や大阪には彼による建築物もある。

フンデルトヴァッサーは、曲線を愛し、直線を嫌悪した。自然回帰を唱え、「自然の中に唯一ないものが直線だ」と言っている。曲線や渦巻は、生命の象徴だったのである。

第二次世界大戦後、画家の修行の旅に出た彼は、都市に戻ってきた時に、灰色で四角い高層建築が並んでいる無機質な光景を見て失望する。このショックが、彼を色彩と曲線へ執着させたのかもしれない。

カラフルかつ夢の中のような理不尽さで、次々と現れる世界に目がくらくらしてしまう。

床にも映像が投影され、ぐにゃりと動く場面はなんだか違う世界を歩いているようだ。

こちらも2019年1月6日まで。

Poetic_Ai

最後の作品は、トルコ、ロサンゼルス、ロンドンを拠点に展開している、現代のデジタルクリエーションスタジオによる作品「Poetic_Ai」。

他の2つと比べて短く、10分くらいの作品。モダンなテクノ系音楽とモノクロームのデジタルデザインの映像が炸裂し、一気に違う世界に引きずり込まれる。

光が移り変わる以外、人物も絵画も登場しないのに、陳腐な表現になるが、とてもカッコイイのだ。ミュージシャンのライブを見ているような感覚に陥った。

これがインスタレーションというやつか、と体で理解した気がする。

途中、かなり強い光に会場全体が包まれることがあるので、刺激に弱い人は注意されたい。

こちらは実は2018年8月末までの展示と公式サイトには書いてあったが、なぜか私が行った10月でも見られたので、延長していたのかも? いつまで見られるのか謎である。


パリの新アートスポットとして注目のこの展示で、全くタイプの異なるこれら3つのインスタレーション作品にぜひ浸ってほしい。


Atelier des Lumières

住所:38 Rue Saint-Maur, 75011 Paris, France

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