先日、人生初の大腸内視鏡検査をロンドンの病院で受けてきた。自分用の備忘録も兼ねてその時のことを記録していきたいと思う。本当にただの体験記録なので、これまでに内視鏡検査をしたことがある人にとって有益な情報はないと思う。
結果を先に行ってしまえば、腸内は何も問題はなかった(だから呑気にこんなブログを書けているわけだ)。
流れとしては、まず地元のクリニックで総合かかりつけ医(General Practitioner=GP)の診察を受ける→検査を行う→その結果、専門医のいる病院で内視鏡検査を受けるように指示される(病院に紹介される)というものだった。ちなみに、すべて国営保健サービスを利用しているため、処方箋の薬以外はすべてのプロセスで料金は無料である。
イギリスの医療制度についてはこちらを参照。
かかりつけ医に専門医を紹介される
ある日の朝、救急車を呼ぼうかという考えが頭をよぎるくらいの猛烈な腹痛に襲われた。原因はよくわからない。いつもと違うことといえば前夜に脂身の多い牛肉を食べたくらいしか原因らしい原因は思いつかない。ただ、一晩も経ってから影響があるのか? とも思うし、そこまで脂身に耐性がないとは今まで感じたこともなかったので、いまいちはっきりしない。
その日は日曜日でGPクリニックは開いておらず、なんとか耐えた。一晩明けてもまだ症状が治まらないので、翌日朝いちばんにGPに電話をかけた。
基本、GPは予約制である。緊急の場合はすぐに見てもらえるが、私のかかっているGPクリニックは、医師が電話でまず症状を確認し、緊急度のトリアージ(治療優先度の決定)を行う。緊急性が高いと判断すれば当日に診療してもらえるという仕組みだ。
今回は、まずGPに電話して症状を受付の人に説明する→受付の人から「午前中以内に医師から電話をかけます」と言われる→割とすぐに医師から電話がかかってきて、症状を詳しく説明する→医師から「実際に診た方がいいでしょう、今日の11時は空いていますか?」と言われたのでそのまま当日診察の予約をする、という流れだった。
問診と触診の結果、「胃腸が荒れている深刻な病気ではなさそう・食事に気をつけていれば数日で治る・胃酸を抑える薬を4週間処方する」ということだった。
でも念のため、血液検査と便潜血検査をしましょう、ということに。便潜血検査は検査キットをクリニックの受付で受け取り、血液検査は、近くにある別の大きな病院で行った(クリニックでは行っていないぽい)。血液検査の予約は自分で行う。オンラインで当日の予約がすぐとれたのは良かった。
どちらの検査も終えた2日後に、GPから携帯電話にメッセージが入った。「便潜血が陽性だったので、念のため胃腸の専門医にセカンドオピニオンをとりました。以下の総合病院から2週間以内に連絡が来ます。その期間内に連絡がない場合は問い合わせてみてください。(病院の連絡先)」という内容だった。自分ではそんなことには気づかなかったので「便に血……!?」とちょっと怖くなる。
ちなみに、この2週間以内という期間は、即入院というような本当に緊急の患者が入ってきた際に、それを最優先するために設けられた猶予期間なのだという。
専門医の検査を予約、事前にコロナ検査を受ける
だが、2週間も待つことはなく、同じ日に総合病院の内視鏡科からすぐ電話がかかってきた。その電話では、看護師が私の病状を詳しく聞いた上で、「では大腸内視鏡検査をしましょう」ということになった。
私にとっては人生初の内視鏡検査ということで、簡単な検査の説明や注意事項を話してもらったが、「鎮静剤を使用するからジン&トニックを飲んだみたいにリラックスして少し眠くなりますよ~(笑)。検査後は紅茶とビスケットが出ますよ~」と言われたところが一番イギリスみを感じた。笑
どうでもいいことだが、イギリスではジントニックのことをジン・アンド・トニックとアンドをつけて呼ぶ。
その後、内視鏡科の事務方か日程予約のための電話がくるという説明があり、電話は終わった。その通り数日後に事務方から電話が来たが、検査日の3日前に病院に行ってコロナ検査を受けなければならず、またその時に検査前の準備キットを受け取ってください、という指示があった。
GPは家のすぐ近くだが、指定された総合病院はロンドン中心部にある。普段通勤もなく割と家に引き籠り状態なので、コロナ検査のために電車に乗って病院に行く方が感染のリスクが高いのでは……? と思ったが、そういう決まりならしょうがない。キットも受け取らなくてはならないし。
そして検査3日前、病院でのコロナ検査とキット受け取りは秒速で終わった。受け取ったのは、水に溶かして使う粉末の下剤と、内視鏡検査についての詳細な説明と準備の指示が書かれた小冊子、そして検査当日の予約表。小冊子には食事制限や下剤の使い方、詳しいスケジュール、当日の流れなどが詳しく書いてあるので心の準備ができる。ちなみに、この時には腹部の痛みや違和感などの症状は完全に治って、体調は普通に戻っていた。
この病院を訪問した日の夕方に、再び内視鏡科の事務から最終確認の電話がかかってきた。今服用している薬についての質問や、鎮静剤についての説明、また当日家でコロナのラテラルフローテストをしてから来られるかといった事項を確認された。すでにコロナ検査をしたのに当日も家でテストしないといけないのね、厳重だなあ……。
鎮静剤にするか、鎮痛剤にするか
検査時に痛みを和らげる方法は2種類あるらしく、通常の鎮静剤(sedation)は、全身麻酔のように気を失うわけではないが、リラックスして眠くなるような薬だという。これは効果が長引くため、患者を家まで送りそのまま24時間付きそう付添人がいることが必須となる。検査後の病院内での安静時間も最低1時間と長め。それ以外でも当日の行動に色々と制約がある。
もう1つはgas and air (Entonox、笑気ガスという一般名称もある) という吸入ガスの鎮痛剤で、即時効能があるのだという。効果は処置後すぐに消えるため、付添人は必要なく、検査後の安静時間は30分程度ですぐに家に帰れる。
今回は夫が海外にいたので付き添えない状況にあり、平日の昼間に友達に頼むのもなあ、と思って後者のgas and airにした。分娩にも使われることがあるガスらしいから、小さい管を入れるくらいそれで耐えられるだろう……と思った。まあそれはやや間違いだったことが後で判明するのだが。
3日前から内視鏡検査の準備
基本的に準備の仕方は日本の検査と変わらないようである。日本でも内視鏡検査はしたことないので、軽くネットで調べてみての比較だけど。
3日前から食物繊維を控えた食事をし、前日の午後から下剤を飲み始める。野菜が全然とれない3日間は地味にきつかった。日本と違うかな? と思ったのは、日本では乳製品やパスタも取らない方がいいものとされていることが多いのに対し、イギリスでは全然OKという感じだったことだ。また「食べていいもの」にtofuが入っていたのが、豆腐の浸透度の高さを感じた。
検査は午後3時から。スケジュールは以下のようになっている。
- 前日の14時から食事禁止(24時間以上断食するの!?と恐怖)
- 前日の16時から2時間かけて下剤1Lを飲む
- 当日の朝7~8時からまたさらに1L飲み、検査2時間前から水分摂取も禁止
下剤はまずいのかなあ……と思っていたが、オレンジ味のポカリみたいな感じで思ったより全然イケた。日本でも使われているらしいモビプレップという下剤。
ただ1Lを飲む間にそれとは別で最低500mlの水分をとらないといけないので、量を飲むのが結構大変。お腹ぱんぱんになるので、恐れていた断食による空腹はあまり感じなかった。トイレに何回も行くことになるが、痛みもなく淡々と液体を外に出す事務作業という感じ。
検査当日朝の1Lの方が、お腹がすでに空になっているからか飲むのはずっと楽だった。それよりも、普段からよく水分をとる私としては、検査2時間前から水分を絶たなくてはいけないのが辛かった。無意識に飲んでしまったらどうしよう……とハラハラしていた(自分への信頼がない)。
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さて、こんな体験談、2回に分けるほどのものではまったくないのだが、文字数が多くなってしまったのでここでいったん区切る。続きは後編で。
後編は検査当日の流れについての記録。果たして紅茶とビスケットはもらえるのか……?(そこ?)
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