【統計で見る】イギリスのがん罹患状況:性別、年、人種別など。日本との比較あり

広告
健康・医療

統計からイギリスを見るシリーズ。

現代日本人で2人に1人がかかると言われるがん。ではイギリスではがんにかかる人はどれくらいいるのだろうか。

今回は、イギリスの王立がん研究基金Cancer Research UKの統計資料(2017年のデータ、執筆記事当時最新)を基に、イギリスのがんに関する状況を見ていく。

広告

イギリスのがん患者に関わる状況

  • 2015~2017年の1年間の新規がん患者数は、毎年およそ36万7000人。2017年の新規がん患者数は、女性が約17万9000人、男性が約18万7000人であった。2分に1人、がんと診断される人がいることになる。
  • 1990年代初頭と比較すると、がん患者の罹患率は12%増加した。女性の罹患率は16%増加、男性の罹患率は2%増加した。
  • イングランド(2014年)と北アイルランド(2010~2014年)では、診断されたがんのほぼ半数が後半のステージだった。
  • 2013年末の時点で、以前にがんと診断された人のうち227万3200人は生存していた。
  • イギリスのがん罹患率は欧州国の2/3より上である。
  • イギリスのがん罹患率は世界の90%より上である。

ちなみに、日本の国立がん研究センターによると、2017年の日本の新規がん患者数は97万7393人。数だけ見るとイギリスの約2.6倍だが、日本の総人口はイギリスの総人口の約2倍ということを考慮しておきたい。同年の総人口を踏まえて計算すると、2017年の新規がん患者数は、日本が人口の0.7%、イギリスが人口の0.5%と、日本の方がやや多いということになる。

男性に多い種類のがん

イギリスでは、新規がん患者(男性)に多いがんトップ10は以下の通り(2017年)。4位以下の割合(%)は、資料の数字を基に筆者が算出した概算の数字である。

  1. 前立腺がん(26%)
  2. 肺がん(13%)
  3. 腸がん(13%)※肺がんと同じく2位
  4. 頭と首のがん(4.6%)
  5. 悪性黒色腫皮膚がん(4.4%)
  6. 腎臓がん(4.3%)
  7. 非ホジキンリンパ腫(4.2%)
  8. 膀胱がん(4.0%)
  9. 食道がん(3.4%)
  10. 白血病(3.1%)

日本の男性に多いがん

日本の新規がん患者(男性)に多いがんトップ10は以下の通り(2017年)。資料はこちら。

  1. 前立腺がん
  2. 肺がん
  3. 胃がん
  4. 大腸がん
  5. 肝臓がん
  6. すい臓がん
  7. 食道がん
  8. 悪性リンパ腫
  9. 胆のう・胆管がん
  10. 白血病

女性に多い種類のがん

イギリスでは、新規がん患者(女性)に多いがんトップ10は以下の通り(2017年)。4位以下の割合(%)は、資料の数字を基に筆者が算出した概算の数字である。

  1. 乳がん(30%)
  2. 肺がん(13%)
  3. 腸がん(10%)
  4. 子宮がん(5.2%)
  5. 悪性黒色腫皮膚がん(4.3%)
  6. 卵巣がん(4.0%)
  7. 非ホジキンリンパ腫(3.5%)
  8. 脳、その他の中枢神経系、頭蓋内腫瘍(3.4%)
  9. すい臓がん(2.8%)
  10. 腎臓がん(2.7%)

日本の女性に多いがん

日本の新規がん患者(女性)に多いがんトップ10は以下の通り(2017年)。資料はこちら。

  1. 乳がん
  2. 大腸がん
  3. 肺がん
  4. 胃がん
  5. 子宮がん
  6. すい臓がん
  7. 悪性リンパ腫
  8. 甲状腺がん
  9. 卵巣がん
  10. 肝臓がん

日本とイギリスのランキングの大きな違い(男女ともに)として、イギリスのトップ10には日本ではランクインしていない皮膚がんが、日本のトップ10にはイギリスでランクインしていない胃がん、肝臓がんが入っているのが目につく。

がんの10年生存率

※こちらのデータはイギリス全体ではなくイングランドおよびウェールズのみ。年齢調整済みの割合。

男性の主ながんにおける10年生存率

  • すべてのがん…54%
  • 前立腺がん…84%
  • 肺がん…4%
  • 腸がん…56%

男性において10年生存率が最も高いがんは精巣腫瘍(98%)で、最も低いがんはすい臓がん(1%)である。

女性の上位3位のがんにおける10年生存率

  • すべてのがん…54%
  • 乳がん…78%
  • 肺がん…7%
  • 腸がん…57%

女性において10年生存率が最も高いがんは悪性黒色腫(92%)で、最も低いがんはすい臓がん(1%)である。

日本での10年相対生存率を見ていて、イギリスと開きが大きかったのは肺がんである。日本では肺がんの10年生存率は男性18.1%、女性31.2%とイギリスの一桁台にくらべて大きく上回っている。

年齢による分布

すべてのがんにおいて、罹患率は年齢に大きく関係している。男女ともに最も罹患率が高いのは85~89歳である。

若い世代では、女性の方が男性より罹患率が大幅に高く、高齢の世代では男性の方が女性より罹患率が大幅に高くなる。男女の罹患率のギャップが最も大きいのが40~44歳で、女性の罹患率は男性の2.1倍となる。

0~14歳、15~24歳はすべてのがん患者のうち1%未満である(2015~2017年)。すべてのがん患者のうち、25~49歳は9%、50~74歳は54%、75歳以上は35%となる。50~74歳の世代は75歳以上の世代よりも全体の人口が多いためがん患者の数も多くなるが、罹患率は75歳以上の世代の方が高くなる。

人種による違い

男性の年齢調整後のがん罹患率(非黒色腫皮膚がんを除くすべてのがん)は白人・黒人の方がアジア人に比べはるかに高い。

  • 白人男性…10万人あたり408.2~416.8人
  • 黒人男性…10万人あたり316.7~488.3人
  • アジア人男性…10万人あたり168.3~258.9人

女性の年齢調整後のがん罹患率(非黒色腫皮膚がんを除くすべてのがん)は、白人が黒人・アジア人に比べはるかに高い。

  • 白人女性…10万人あたり351.0~358.4人
  • 黒人女性…10万人あたり215.0~322.0人
  • アジア人女性…10万人あたり168.4~249.8人

調べてみて、多いがんの種類が日本とイギリスで異なっていることに気づいた。人種や生活習慣も関係しているのだろうか。

イギリスの医療制度や健康に関する記事はこちらから。

 

「健康・医療」カテゴリの記事

コメント