日本でも一部の地下鉄の名称として使われている「メトロ」。世界の他の国でも、地下鉄を「メトロ」と呼んでいる国は多い。
実は、このメトロという言葉の語源は、ロンドンの地下鉄の1つであるメトロポリタン・ラインだったのだ。
ロンドンを通る世界最古の地下鉄メトロポリタン・ライン
メトロポリタン・ラインの前身となる線は、世界初の地下鉄として1863年に開通した。当時は蒸気機関車であったということからも、その歴史の古さがわかるだろう。
この現在のロンドン地下鉄マップでは、赤紫の線がメトロポリタン・ラインだ。現在では、中心部にごく近い東ロンドンのエリアから、北西ロンドンの郊外をつなぐ路線である。
おそらくこの線が通る駅で最も有名なのは、ベイカー・ストリート駅とキングス・クロス駅だろう。
誕生当時は、パディントン〜ファリンドンという今とは異なる区間を走っていたが、現在その区間は違う路線にとって変わられている。
当時は地下鉄=メトロポリタン・ラインだったのだろう。
フランスがパリに1904年に地下鉄を開通した際、「Chemin de Fer Métropolitain(英語のメトロポリタン・ラインの仏語直訳)」と名付けた。それを略したものが「メトロ(Métro)」であり、現在のパリの地下鉄も「Paris Métro」と一般的に呼ばれている。
この「メトロ」という名前は、その後世界各地に広まった。
最古の歴史を持つメトロポリタン・ラインの車両は2012年に新型に取り替えられ、かなり快適になっている。ロンドン地下鉄の多くは、狭いし通気性も悪いし冷房もなしという相当不快指数が高い作りだが、このメトロポリタン・ラインは、冷房完備、車内もそこそこ広く、多くの他の線に比べればモダンな内装である。
「メトロポリタン」の語源
「メトロポリタン(metropolitan)」とは、人口の多い大都市、大都会を指す英単語で、ロンドンという大都市に開通した地下鉄としてこの名前が付けられたのは至極当然と言えるだろう。では、そもそもの「メトロポリタン・ライン」という名前はどこから来ているのだろうか?
このメトロポリタンという言葉の最初期の語源は、ギリシャ語のmetropolis(メトロポリス)である。古代ギリシャでは、植民地として支配した土地の政治、文化の中心地の呼称で、meter(母)とpolis(都市)、つまり「母なる都市」という意味であった。
このmetropolisを元に、ギリシャ語でmētropolitēs(メトロポリスの住民のこと)という語が生まれ、それが後期ラテン語を経て中世後期英語のメトロポリタンという語が生まれたのだという。
ちなみに「メトロポリス」という英単語もあり、これはメトロポリタンエリア(大都市エリア)の中の、さらに中心部を指す。
イギリスでは地下鉄は「メトロ」とは呼ばない(サブウェイでもない)
イギリスでは、地下鉄は「Underground(アンダーグラウンド)」、または「Tube(チューブ)」と呼ばれる。チューブとは、地下にある筒状の線路を地下鉄が通るそのさまがまさにチューブに似ていることから来ている。
ちなみに、アメリカ英語で地下鉄を意味する「subway(サブウェイ)」は、イギリスでは歩行者が利用する「地下通路」の意味となる。
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