5泊6日でポルトガル旅行に行ってきた。ポルトガルの首都リスボン中心部にあるリスボン大聖堂と、市内を一望できる高台にそびえる城、サン・ジョルジェ城の観光レポートをお届けする。
ポルトガルの街の概要と、この旅の目次的な記事についてはこちらから。
目次
リスボン大聖堂
1147年に建設されたこの大聖堂は、リスボンで最古の教会だ。現在のスペインの前身にあたるカスティーリャ王国から独立し、ポルトガル王国が建国された直後に建てられたもので、まさにポルトガル王国の歴史すべてを見てきた建物なのだ。
これまでに幾度もの修復を経ており、ロマネスク様式とゴシック様式が混合している。推定マグニチュード8.5〜9と言われる1755年のリスボン大震災の時に崩壊(この時85%の建物が崩壊したとされる)し、その後再建された。
入場は無料だが、宝物庫と回廊は有料(それぞれ2.5ユーロ)。今回は宝物庫のみ入った。回廊では、古代ローマや中世の建物の遺構が見られるという。
宝物庫は写真不可のため画像はないが、大聖堂で保管されているキリスト教関連の豪華な宝物具が展示されている。
画像は宝物庫の入り口。大航海時代を思わせるようなプレートが壁にかかっていた。
宝物庫に行く途中にあった部屋では、教会後方にあるバラ窓(バラのような形の窓)のステンドグラスを目の前で見ることができる。中央にキリスト、周りに十二使徒が描かれた、カラフルで美しい窓だ。
※この場所まで行くためには宝物庫の料金を払う必要がある
バラ窓の反対側を向くと、上から地上階と主祭壇が見下ろせる。
階段を降りて地上階へ。階段にもこんな見事な装飾が施されている。
大聖堂のメインである祭壇へ向かう。
こちらが主祭壇。ピンクと青色で装飾された天蓋が綺麗。
左右にはパイプオルガンが設置されているが、随分変わった形をしている。まるで多数の大砲が突き出ているかのようだ。
前衛的な形だなと思ったら、左のオルガンは1900年代前半、右のオルガンは1964年(2012年に修復)に作られた、そこまで古くないものらしい。
さきほど間近で見た、後ろ側のステンドグラスを祭壇側から見るとこんな感じ。近くで見られてよかった。
主祭壇の周りは身廊になっており、複数の小さな礼拝堂が並ぶ。ここはぐるりと回って見学できる。
このようなステンドグラスを持つ礼拝堂がいくつもあるのだ。こちらには美しいローブをまとった聖母子像が置かれている。
中には、偉人の棺が安置されている礼拝堂もある。
礼拝堂の1つ、「聖コスメと聖ダミアンの礼拝堂」には、14世紀の王の従者ロポ・フェルナンデス・パシェコと、その妻の棺がある。これは妻の棺だが、ここで奇妙なものを見つけた。
首に鈴をつけたロバ? でも鶏の頭を食べているから犬……?
足元にもう1匹いた。鳥の足を他の犬? 熊? と取り合っている。耳がロバのように見えるし、前脚の曲げ方が犬ではなく草食動物のそれのようだ。でも足の指は蹄でなく犬のものに見える。
この生き物はなんなのだろう……。
ちなみに、昔の西洋の棺では、動物の彫刻が足元に彫られているのはよくある形式だ。夫の棺にも、猟犬(これはしっかり犬とわかる)が伏せていた。
その後ツイッターでこの疑問を投稿したところ、親切な方が調べてくれ、この謎の動物は犬であることが判明した。
そのまま身廊を抜け聖堂内を見て回っていると、閉まっていて見学できない部屋があった。
が、扉から覗くことができた。豪華絢爛な祭壇が見える。ここは司教の更衣室で、この緑色の大きなローブに着替えるための場所だ。あまりに長いので、裾を持ち上げる従者が2人必要だという。
右側には、司教がかぶる冠(ミトラ)が並んでいる。
こちらは洗礼所。蓋の下には水が入った洗礼台がある。ここでキリスト教の新生児を水に浸したり、水をかけたり(キリスト教の宗派によって、また教会によっても方法はさまざまらしい)して洗礼するのだ。
空間を覆っている鮮やかな壁画はアズレージョといい、スペインやポルトガルで一般的な青色のタイル画である。ここでは、洗礼の場面を含むキリストの生涯が描かれている。
住所:Largo da Sé, 1100-585 Lisboa, Portugal
入場無料、宝物庫と回廊はそれぞれ2.5ユーロ(2つセットだと4ユーロになる)
サン・ジョルジェ城
リスボン中心部には、「サン・ジョルジェ城」という中世の城塞の遺跡もあるというので行ってみた。
城は高台にあるため、向かう途中で海沿いの見晴らしの良い場所を通る。
この日も晴天。青い空に白い雲、赤い屋根の組み合わせが素晴らしい。
入口に着いたが、入場を待つ人の列ができていた。周囲には路上演奏をしている人(とても上手だった)やお土産屋さんが並ぶ。
でもそこまで並ばなかったかな。20分くらい。
ようやく入場。広い敷地内に城壁や塔の一部(一部と言っても塔は11本もある)が残っている。ここが最初に要塞となったのは紀元前2世紀まで遡るという。歴史の中でさまざまな人種、権力が支配してきた場所だ。
このサン・ジョルジェ城はアラブ人が11世紀に作ったものだという。当時はアラブ人(イスラム王朝)がこの地を支配していたのだ。その後12世紀にキリスト教がイスラム王朝を押しのけ、カスティーリャから独立したポルトガル王国が建国される。1255年にはこの城は王宮として使われるようになった。
さまざまな時代の名残がここには見られる。人の顔型の水道。
イルカの水道。昔の西洋のイルカやクジラはマスコットのような造形で可愛い。
この城塞は何度も増改築を繰り返し歴代のポルトガル王家に使用され、16世紀まで街の中心的な役割を果たしていた。しかし16世紀には新しい王宮が別の場所に建てられ、この城はその役目を失っていった。
さらにスペインの支配が始まると監獄として使われたり、前述した大地震で損害を受けたりしながら、1900年代半ばまで放置されていたという。
中には博物館がある
中にはとても小さな博物館があり、この城塞の中の人々の生活を知ることができる。
これは当時のイスラム王朝での一般的な遺体の埋葬方法。遺体を覆い、水平に並べる。体はメッカの方向を向いて埋められるのが習わしだそうだ。
この城塞内にも墓地があり、敷地内に住む影響力のある家の人々が埋葬された。
イスラム美術のタイル画や、皿や壺などを展示する部屋。流線型の展示台がオシャレ。
こちらは、時代が下って18世紀のさまざまなパイプを展示しているスペース。実は、16世紀まではタバコはヨーロッパに伝わっていなかった。煙草の原材料となる植物のタバコは、アメリカ大陸に探検したスペイン人やポルトガル人の航海士たちによってヨーロッパにもたらされた。
当時、タバコはさまざまな病気に効くとされており、航海士たちは「聖なるハーブ」と呼んでいた。
17世紀になるとタバコはヨーロッパ中に広まり、数多くのパイプが生産されるようになった。
ここに展示されているパイプの欠片は、城塞が使われなくなってから敷地内に建てられた兵士用の病院から出土したものだ。これらのパイプは18世紀でも、治療方法の1つとして用いられていた。
敷地内は孔雀が自由気ままに歩き回っている
驚いたのは、城に入ってすぐに、野生(?)の孔雀がたくさん現れたこと。
白色が混じった孔雀もいた。綺麗……。自然の創造物とは思えない造形美。羽を広げているところも見られればよかったな。
カフェのテラスエリアでお茶をしている人たちのおこぼれを狙っているのか、人がたくさんいる場所でも気にせず歩き回っていた。
上の階に行くと、ある大きな木に孔雀の群れが止まっていた。数メートルはゆうにある木なのに、孔雀ってこんなに高いところまで飛べるんだ。尾羽が長くて重そうなのにね。
なぜこの城にこんなに孔雀がいるのかは不明(調べてもよくわからなかった)。
木の上でよく鳴いていた。「ミャーミャー」という、猫のような予想外な声。孔雀ってこんな声で鳴くの!? と衝撃で思わず動画まで撮ってしまった。
リスボン全体を見渡せる展望スポットがある
城塞の上へ登ると、絶景が広がる展望スポットがある。
海と、リスボンの街の景色を一望できる場所。なんて平和で、穏やかな光景なのだろう……。
ふと、遺跡の壁を見ていたら、赤、黄色、白、灰色などなんとも色とりどりの石が使われていることに気がついた。これらの石は地元のものだろうか、それとも、どこか遠くから運ばれてきたものだろうか、などとちょっと思いを馳せてしまった。
サン・ジョルジェ城(Castelo de São Jorge)
住所:R. de Santa Cruz do Castelo, 1100-129 Lisboa, Portugal
料金:大人10ユーロ、13〜25歳5ユーロ、12歳以下無料
サン・ジョルジェ城下には小さな教会も
城を出てすぐのところには、城付属の小さな教会もあった。展望台のあるタワーと入場がセットになったチケットがあるらしいが、私の行ったときにはタワーが閉鎖(?)されていて登れず、その代わりなのか無料で教会に入ることができた。
歴代の君主の子どもは、この教会で洗礼を受けていたという。
メインの祭壇。ここも見事な天井画を備えている。人が少なく、静かな時間が流れる空間だった。
Torre da Igreja do Castelo de São Jorge
住所:Largo de Santa Cruz do Castelo 15, 1100-060 Lisboa, Portugal
料金:タワーと教会入場で2.5ユーロ
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