オランダ・アムステルダム国立美術館の素晴らしい彫刻・工芸品・船の部屋を紹介

2018年11月26日イギリス以外のアート情報, オランダ, 旅行レポ

アムステルダム旅行でじっくりと堪能した国立美術館。

ここに行った一番の目的は、オランダが生んだバロックの巨匠、レンブラントの「夜警」だが、その他にもたくさんの傑作があった。ここではその中でも、彫刻や工芸品を紹介していきたいと思う。

レンブラント以外の絵画にフォーカスした記事はこちら。

レンブラントの「夜警」がある展示室を抜けると、こんな美しいステンドグラスが。展示室外でも気を抜けない施設である。

入口すぐの部屋で目を引いた彫刻

Frans Stracké「two mothers」1893年

2人の母、というタイトルの彫刻作品。きりっとした表情で、しっかりと地を踏み堂々と歩く若い母親の姿に惹かれた。存在感のある魅力的な像だ。

女性は1人だし、このタイトルは一体…?と思っていたら。

すやすや眠る子犬が抱えられている。ベッド代わりになっている、たっぷりとした柔らかそうな布の表現は見事というほかない。

よく見ると、女性の足元には母犬がじゃれているのだった。なるほど、母が1人と1匹。

ここだけ見るとほっこりするが、この作品は無慈悲な人生を語っている側面もある。この女性は漁師の妻で、裸足で漁から帰ってきたところなのだ。彼女の手には魚が二尾だけ。幼子を抱えながら仕事をし、その仕事も成果がでないという、なんとも酷な場面だ。

貴族趣味の絢爛な調度品

三つのドアを持つキャビネット フランス パリ 1835~1838年

オランダ王ウィレム2世がかつて所持していたという、豪華絢爛なキャビネット。全体的に草花をあしらった装飾だ。中央の具象的な花の模様は、磨いた石を嵌め込んで作られている。

装飾として、(おそらく)海の神であるポセイドンの像が施されている。下半身が植物の葉になっている。腰から顔を覗かせているのは、彼といつもセットで表されるイルカ。

ミニチュアの薬屋を模したコレクタションキャビネット オランダ? 1730年

キャビネット自体は大きなものだが、観音開きのその中は、薬屋を模したミニチュアになっている。室内に飾った絵まで再現した、内装の力の入れようは見事なもの。

薬を入れる瓶や壺がずらりと並び、引き出しの中には、化石や鉱石、木材、種子などがコレクションされている。扉を閉じるときにこの小さい壺が落ちたりしないんだろうか(固定してあるかもしれない)…などと考えてしまった。

まるで動物園のようになっている一室があった。異国の猿やら鳥を写実的に、そしてカラフルに再現した大きな展示棚。

写真だと少し安っぽく見えてしまうけれど、実際に生で見ると迫力がある。隙のない精巧な作りで、生き生きとした動物たちを表現した作品群だ。

18世紀前半のヨーロッパの宮廷では、このようなエキゾチックなモチーフを用いた優美なロココ式の芸術が流行した。貴族や王族は皆、驚嘆や圧倒に値するものを追い求めたのだ。

マイセン磁器の時計と燭台 1750年

美しい時計(中央)の燭台(両脇)のセット。燭台には、咲き乱れる花と黄金の土台の中に、白く輝く白鳥が堂々と立っている。

マイセンは、ドイツのマイセンという都市で伝統的に作られている上質な磁器製品だが、当時パリに多くが輸入されていた。この燭台は、パリのディーラーの手元にあった可能性があるという。

時計の装飾には、色とりどりの花と、うっとりと互いを見つめるカップルの姿。一つ一つの花の表情から男女の身のこなしまで、素晴らしい表現力である。ロマンチックな物語が、この時計の空間だけで完結しているように見える。

カップルが見つめ合った一瞬の時を止めたような、倒錯的な作品。

ヨーロッパに残るアジアの痕跡

オランダ東インド会社の商業船「ウイット・ルー」から見つかった磁器 中国 1613年

東インド会社は、アジアから高価な輸入品を欧州に船で運んでいた。時折船は道中で沈んでしまうことがあった。これはそのうちの一つ、1613年に沈んだ「ウイット・ルー」という商業船から1976年に発掘された磁器である。

右側は、海の中で年月を経るうちに鉄の塊にくっついてしまった白いおちょこ。おちょこの横には貝殻もくっついている。歴史をそのまま切り取ったような感じで、面白い。

パゴダの模型 中国 1765~75年

パゴダはいわゆる仏塔だが、当時の西洋人にとっては、パゴダが特に中国のシンボルとして有名であった。こうした磁器のパゴダは、これを収集する西洋人のために作られた。これは七重の塔で、各階には細かく彩色と文様が施されている。

皿 日本 1690~1700年

日本製の漆の皿。正面には、この皿を注文したValckinierという一族の紋章が入れられている。西洋の紋章を日本の漆で表現したものが見られるとは思わなかったので驚いた。

縁の部分には、オランダの貴族が日本の将軍を訪ねる旅が描かれている。当時、オランダ人は出島から、将軍に贈り物をし敬意を見せるための旅に毎年出ていたのだという。

大砲 スリランカ 1745年以前

私の人生で見た中で一番美しい大砲である。鮮やかな青地に金が映える。砲身には太陽や月、獅子の絵が施されている。これらは、スリランカに当時あった王国、キャンディ国の王のシンボルだった。

オランダはこれを1765年に戦利品として持ち帰ってきた。キャンディ国は、ポルトガル、オランダと立て続けに長年植民地支配を受けたのだった。

これを目の前にして、なんだか不思議な気分になった。

250年以上経っても色褪せない、美しい大砲。スリランカの王様の。スリランカから遠く離れたこの地で、2018年の今私がそれを目にすることができるのか。植民地の歴史とか、奪った戦利品がこの場所に展示されるようになった経緯とか、色々なものが渦巻いて、ああでもやはりこんなに美しいものは時代を超えて生き残ってくれるのだ、と、一人でこの大砲が今も存在してくれたことに感謝した。

圧倒される船だらけの部屋

一通り見終えて、1階に戻って奥に行くと、すごい部屋が現れた。

帆船の模型がずらりと並ぶ部屋。超異空間である。これはオランダ東インド会社の本社に展示されており、その後海軍庁の所蔵となった模型だ。

18世紀のオランダ東インド会社が作った船の模型で、当時実際にこんな船が海原を走っていたのかと思うと、ロマンが広がる。

コラコラ インドネシア 1800~75年

この展示室では、オランダのもの以外にもさまざまな船を紹介していた。

これはコラコラという可愛い名前の船。インドネシア諸島の中でもモルッカ諸島で使われていたものだ。両側に目が描かれているのが気に入った。魚のようで可愛い。が、暗くて荒れている海で見えたら怖いかもしれない。

インドネシアは、オランダ東インド会社の貿易の拠点であった。目の横に引かれた青と白と赤の三色の線は、オランダの国旗の色だ。これは、東インド会社の人々が乗っていた船の模型ではないかと推測されている。ここに残るアジア文化には、いつも植民地支配の歴史の影がある。


というわけで、レンブラント作品他の傑作絵画に続いて、今回はアムステルダム国立美術館の彫刻・工芸品の見どころを紹介した。

レンブラントだけでなく、他の作品を見てもとても楽しいので、アムステルダムに行った際にはぜひ立ち寄りたい。

今回のアムステルダム旅行の目次と、アムステルダムの概要はこちら。


アムステルダム国立美術館

住所:Museumstraat 1, 1071 XX Amsterdam, Netherland

料金:大人17.50ユーロ、18歳以下無料