【オランダ旅行】アムステルダムの風俗街「飾り窓」文化と売春博物館

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オランダ

アムステルダム旅行で見てきた、性風俗文化についてこの記事では紹介したい。

この旅の目次と、アムステルダムという街の概要についてはこちらから。

アムステルダム旅行レポ:アートと可愛い街並み&大麻と性風俗が共存する街
ユーロスターを使い、ロンドンからアムステルダム旅行に数日間行ってきた。 私にとっては初めてのオランダ。以前から、周りの人が口をそろえて「アムステルダムはいいよ」「大好きな街」と言っていたのを聞いていたが、実際に行って「なるほどね」と思った。今回は、アムステルダム旅行で見てきた面白い物、興味深い物を順次レポしていきたいと思う。 この記事はその目次の役割を果たす。そして、アムステルダムとはどんな街...
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レッドライト・ディストリクトとは

アムステルダム中心部には「レッドライト・ディストリクト」という、売春が合法で行われている地区がある。なぜこんな名前なのかというと、夜になるとこの一帯には、赤いライトが灯るからだ。

赤いライトをつけた小部屋はガラス張りで、一部屋につき一人、セクシーな姿の女性が立ってお客を待っている。「飾り窓」と呼ばれる形態の性風俗である。女性と客はドア越しに直接交渉して、交渉が成立したら、客は中に入りカーテンが閉められる。

昼間は何の変哲もない街並み。観光エリアの一角で、大人も子どもも普通に通る。しかし、夜になるとガラリと顔を変えるのがこの地区。

この赤くガラスが灯っているところはすべて、その部屋である。※彼女たち個人の写真を撮ることはマナー違反

この飾り窓、アムステルダムで約400軒が営業しており、そのうちのほとんどがこのレッドライト・ディストリクトに集中している。

街の中心部にある教会。昼間に通った時は全く気が付かなかったが、夜になると、この教会の周りをぐるりとレッドライトが取り囲んでいて驚いた。何とも皮肉な環境である。

アダルトショップも多数

このエリアには、当然のことながら? セクシーショップも多数軒を連ねている。

※念のためぼかし加工
そういう雑誌や映像や道具や衣装などに特化したお店である。

ここはコンドーム専門店。

なんか可愛い動物の人形があるな、と思ったら(右側のプラスチックの棚に並んでいるやつ)、全部コンドームであった。

もはや私には何が何だかわからない。見世物の域に達しているのでは? というものもある。すごい世界である。

これはレッドライト・ディストリクトではないが、アムステルダム内のお洒落なセクシーショップ。地区外でも、私の住んでいるロンドンと比べるとこういうお店の数自体が多い気がした。

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飾り窓文化について紹介する博物館「レッドライト・シークレット」

この飾り窓文化について紹介する「レッドライト・シークレット」という博物館も、地区内にある。かつて実際に娼館だった建物を再利用した施設だ。

夜11時まで営業しているので、普通の観光が終わった後でも立ち寄れる。

ここでは、かなり詳しく、飾り窓の営業形態やそれにまつわる法律、女性たちのバックグラウンドについて知ることができ、興味深かった。ここで知ったことを書いていきたいと思う。

アムステルダム性風俗の簡単な歴史

14~15世紀頃、アムステルダムには貿易用の大きな港があり、船乗りたちは街に滞在中、バーや宿で女性を買っていた。当時は売春は合法であった。16世紀末、売春は違法となったが、もちろんこの仕事がなくなることはなかった。

18世紀後半に最初の「レッドライト」が出てくるようになる。より高級感ある内装の娼館がオープンし、ドアに赤いランタンを吊るして目印とした。今に続くレッドライト・ディストリクトがだんだん形を成していったのである。

その後、売春は違法になったり合法になったりを繰り返しながら、2000年にオランダの娼館や風俗店が合法となり今に至っている。他の職業と同じように、れっきとした職業の1つとして扱われ、そのための法律もしっかりと作られた。客も女性たちも、定められた決まりに従わなければならない。

飾り窓で働ける条件

アムステルダムの飾り窓で働く女性は、21歳以上でヨーロッパのパスポート又は永住権を持っている必要がある。

働く際には公的機関に登録し、娼婦として働ける状態にあるか(部屋を借りれるかなども含む)面談を受けなければならない。

また、飾り窓はほとんどが客にも18歳以上という年齢制限を設けている。そのため女性たちも18歳未満の客を入れることはまずないという。

飾り窓で働く女性たちは自営業者扱い

飾り窓で働く女性は、誰かに雇われているわけではなく、自営業者として働いている。一人一人、自分たちでレッドライトの部屋を借り、営業を行っている。部屋を貸しているのは、売春職のオペレーター(個人または団体)である。

また、飾り窓で働く女性のスカウトなども存在しない。スカウトは違法である。また、客も「この女性は売春を強制されている」と感じたら通報する義務がある(匿名可)。

あくまでも、女性側が自発的に営業を行う場合のみ合法なのである。もちろん彼女たちは、自営業者として税金も払う。

博物館内の、飾り窓用レンタルルームのオフィスの再現。

部屋は基本的に10時間で最大150ユーロという単位で貸し出される。1日にして最大300ユーロ(!)にもなるという。飾り窓で働こうにも、まず部屋を借りる初期費用が必要になってくるのだ。ほとんどの女性は週に4~6日働いているという。

オペレーターの役割

飾り窓で働く女性に部屋を貸す、いわば大家であるが、彼らには女性たちをチェックすることが義務付けられている。売春を誰かに強要されていないか、きちんと有効な書類を持っているか、などだ。

また、今のアムステルダムで新たに飾り窓用の部屋を設けることは許されていない。現在飾り窓用に許可を得て貸し出されている部屋のみで、これ以上の許可は発行されていないそうだ。

飾り窓で働く男性はいるのか

飾り窓で働く男性もいる。しかし、彼らは男性から女性になったトランスジェンダーであり(客も主に男性である)、いわゆる、本来の意味での「男娼」は存在しない。アムステルダムの飾り窓では、女性のみが働いている状況になっている。

また、女性客が娼婦のもとに訪れることももちろんできる。男女混合でサービスを利用する客も決して稀ではないという。

ちなみに、このディストリクトでサービスを受ける男性客の数は1日で2000人以上とのこと。

飾り窓の営業

博物館内にあった、飾り窓の中の部屋の再現。最低限のスペースしかない、ごく小さな部屋である。

サービスの値段……最低50ユーロからが通常の値段らしいが、女性たちは自分で価格を決められる。客の要望に応じて、価格は上がっていく。最初の交渉時に、サービス内容と値段を決定する。また、コンドームを使用しないでの行為は許されていない。

客の平均滞在時間……6~15分。なんとも短く感じるが、欲望を満たすためのサービスという側面が大きいようである。それは後で述べる娼館との違いを見てくれればよくわかると思う。

SMなどのサービスもあり

サービス内容は客の要望によって多岐にわたる。そして娼婦によっては、アブノーマルなものに対応する人たちも(安全性が確保される限り)いる。写真は首輪や手錠などSMに使われる各種道具。

監禁室のような一角も再現されていた。設備だけだとほぼ拷問部屋に見える……。この部屋には入って雰囲気を楽しむ(?)こともできる。

娼館と飾り窓の違い

オランダには飾り窓だけではなく、娼館も存在する。これは博物館内の豪華な娼館の再現。ラグジュアリーな浴槽。

シャンパン付きの華美なベッド。

娼館は最低75ユーロから、使おうと思えば青天井である。飾り窓と娼館の違いとして、娼館では1時間ごとに料金を支払うのに対し、飾り窓は固定価格を支払うことが挙げられる。そのため、飾り窓の女性たちはなるべく一人当たりのお客に充てる時間を少なくしようとするのだ。

娼館では、女性たちはよりおもてなしに力を入れる。また入浴やシャンパンなどのラグジュアリーなオプションを追加することができる。

つまり、飾り窓と娼館ではそもそものサービスのスタンスが違うのである。飾り窓は安く早くサービスを受けられる場所、娼館は雰囲気やそのひと時を含めてサービスを楽しむ場所、といったところか。

殺人に巻き込まれる女性たち

娼婦は殺人に巻き込まれることが多い職業である。

1956年、この博物館がまだ娼館として機能していた頃、中国系オランダ人の娼婦がここで殺された。犯人は未だにわかっていない。

オランダでは、娼婦が勤務中に殺害される事件が毎年起きているという。

娼婦たちは、アラームボタンを持っている。自衛のための武器(スプレーなど)を所持することはオランダでは違法だが、それでもそれらを持ち歩く娼婦は多いという。

また、飾り窓は通常複数の部屋が隣り合わせになっている。1つの部屋で何か問題が起きた時、近くの部屋の同僚に助けられた人も多いという。

飾り窓で働くことを選ぶ理由

アムステルダムで娼婦として働く女性の数は、2010年の調査では6750人以上に及ぶと推測されている。そのうち飾り窓で働くのは1090~3380人との推定が出ている。女性たちの出身はオランダに限らず、ヨーロッパ中から働きに来ている。

博物館では、実際の女性たちのインタビュー内容が展示されている場所もあった。それによると、この職業を選んだ理由に共通しているのはやはり「お金」である。飾り窓ではかなりの金額を稼げるため、やむを得ずこの職に落ち着いた、という女性も少なくない印象を受けた。もちろん、お金が必要になった背景は人それぞれ違うだろう。実質、「これしかなかった」という状況の女性も多いような気がする。

仕事に対する気持ちは人によって異なる。「セックスは嫌い」「私はこの仕事に誇りを持っている」……十人十色である。この仕事を楽しんでいる女性も、楽しんでいない女性もいる。

ある女性の、こんなエピソードもあった(一部訳)。

「勉強のためにアムステルダムに来て、運河沿いのクラブで働き始めたの。初日は、知らない男性と性行為をしたことにすごく嫌悪感を持った。ほとんどの場合は、知らないどころか好きじゃない人としなければいけなかったけど、でもすぐに慣れた。

人とかかわるのは好きだし、自分を綺麗に見せるのも好き。酷いお客さんもいるし、大変な仕事だけど、仕事は楽しんでやっていることが多い。

3年働いてきて、たくさんお金を稼げたから、勉学のためのお金を借りる必要もなかった。この仕事を誇ってはいないけど、恥じてもいないわ。2年後、法律事務所で働くの。3年前にこの選択をして良かったと思ってる」

博物館内のルートの最後の方にあった「懺悔室」。キリスト教教会の、罪を告白する懺悔室を模したものである。「ここであなたのセクシャルな『罪』を告白してください」と紙とペンが置いてある。

小さなお土産ショップ。コンドームも売っている。

合法の職業としての売春がどのように運営されているのかを知ることができて、大変興味深かった。ルールや登録制度などは思ったよりもきちっとしているのだな、と感じたが、それでもトラブルに遭う女性は多くいて、公には知られていない事実や思いもたくさんあるのだろう、と思った。

なかなか普段触れられない文化を学べるので、興味のある人はぜひ寄ってみてほしい。


レッドライト・シークレット(Red Light Secrets)

住所:9VFX+FJ Amsterdam, Netherlands

料金:オンライン予約10,50ユーロ、窓口でのチケット購入12,50

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