日本語の緑と青の混同と、英語の起源における緑と黄色と青の混同についての話

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英語

普段英語で生活していると、改めて日本語について気づくことがある。先日は、「そういえば、日本語では緑のことを『青』と表現することがよくあるな」とふと気づいた。

青信号とか青りんごとか、隣の芝生は青く見える、とか。「青々とした」という表現も、日本語では緑を指している。英語ではそれらは「green light」「green apple」「The grass is always greener on the other side」というように「green」で表される。

というような話をドイツ人夫にしたら、「何それ、面白いね。なんで日本語は緑を青って言うの?」と訊かれ、「なんでだろう……」と思っているので調べることにした。

また、それに伴い英語での単語の起源を調べていたら、その語源となった言語では青と黄色、また緑と黄色が同じ語であったという興味深い話を見つけた。

この記事では、日本語における「緑」と「青」の話、また英語における「黄色」と「青」と「緑」の話について、調べたことをまとめていく。

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日本語ではなぜ緑色を「青」と表現することがあるのか

これについては、素晴らしい説明が「緑色なのに「青信号」と呼ぶのはなぜ? – 大学教授に聞いてみた」という記事の中でされていたので、詳しくはこちらを読むのをおすすめする。その中から要点をピックアップしてみよう。

  • 古い日本語では、「青(あを)」という言葉に青と緑両方の色が含まれており、緑色を「青」と表現する習慣は万葉集の時代(奈良時代)以前からあったと思われる。

  • 日本で青と緑の区別ができたのは平安時代末期~鎌倉時代(西暦1100年頃)と思われる。(…)言語が成熟するにつれて詳細な区分に関するコンセンサスが成立し、古語の「青(あを)」から現代の「緑」と「青」に分化した。

  • 信号の緑色に関しては、日本に信号が導入された当初は「緑信号」と呼ばれていたが、元々日本語では緑を青と表現する慣習があったため、「青信号」が受け入れられ広まっていった。

つまり、日本語では元々青と緑は同じ語であり、緑を青と呼ぶ古い慣習が部分的に現在まで残っているために、緑を青と表現する場合があるのだという。

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英語のblue、green、yellowについて

同記事では、英語のblueとgreenについても言及されている。

この「緑と青の分化」は、他の言語でも成熟の過程で見られる現象で、例えば英語では13世紀頃までは” hœwen”という語が青と緑の両方を指しており、その後greenとblue (“bleu”)に分かれた事が知られています(Biggam, 1997)。

英語でも青と緑両方を表す語があったのだ。だが、現代の英語では、日本語のように「緑」を「青」と表現する習慣(もしくは逆)はない。

英語の起源については、私も調べてみたところ面白いことがわかってたので、これにさらに補足したい。

このhœwenという語は現代のblueやgreenになったわけではなく、以下の語が取って代わったのである。

greenの起源

起源の古英語はgrene。そのさらに起源となったインド・ヨーロッパ祖語の語根*ghre-は「grow(育つ)」という意味を持ち、成長する植物の色と関連付けられていた。

*語根……単語の基本をなす部分で、これ以上分解不可能な最小単位のこと。

blueの起源:青の他に黄色の意味もあった

現在の英語のblueという語は古フランス語のbleuに由来するもので、bleuには「pale, pallid, wan, light-colored; blond; discolored; blue, blue-gray」とさまざまな意味があった。ブルーやブルーグレイの他に、「ブロンド」という意味があるのがわかるだろう。

このbleuのさらに起源となったインド・ヨーロッパ祖語のbhle-wasは、「light-colored, blue, blond, yellow(薄い色、青、ブロンド、黄色)」を意味していたという。この語根であるbhel-の意味は「shine(輝く)」である。

つまり、元は同じ語が青と黄色どちらも指していたようだ。

また、このbhle-wasからはさらにラテン語の「黄色」、古スペイン語の「黄色っぽいグレー」、ギリシャ語の「白」などの言葉が派生した。

yellowの起源:緑と黄色両方を表す語もあった

そこでyellowの語源も調べてみたところ、古英語で黄色を意味するgeolu、geolweの元となったインド・ヨーロッパ祖語の語根ghel -は、緑と黄色両方を表す語であったという。

こちらも意味は上のbhle-wasと同じく「shine(輝く)」であった。

青と黄色と緑は混同しやすい色?

日本の青と緑を区別しない古い習慣に加え、こうした英語の色名の語源を見てみると、青、緑、黄色は人間にとってはごく似た色、または同種のカテゴリとして捉えられるものだったのかもしれない、と思わされる。

自然界では、これらの色は混ざっているように見えたり、区別がつかないように見えることもあったのだろう。今だって、どちらともつかないような色は自然の中で多く見つけることができる。

blueは他の色名よりも遅く登場した

余談になるが、上に挙げた日本語の青と緑についての記事では、「日本語で最初に登場した色名は赤、青、黒、白の4色」と説明があるが、英語は事情が異なる。

英語では、まず最初に登場した色名は白と黒、その後赤、黄色、緑、そして青となる。blueは他の色名よりも遅れて使われ始めた。

また、英語ではないが古代ギリシャの文献では、白や黒、赤、黄色といった色名は記されていても、青という色名は出てこないのだという。これはなかなか面白い。

参考資料:

(語源辞書サイト)etymonline: blue, green, yellow

(塗料製造会社)Dunn-Edwards Corporation, Inc: The Color Blue: History, Science, Facts

(色彩専門家のブログ)Sensational Color: Origin Of The Word Blue

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