チェコが生んだアール・ヌーヴォーの画家、ミュシャの作品をプラハで見る

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チェコ

プラハ旅行に行って、ミュシャに関連するものをたくさん見ることができた。

それもそのはず、ミュシャは活躍したのはパリだが、もとはチェコ出身の画家である。ミュシャは「Mucha」と書くが、チェコ語での発音は「ムハ」で、ミュシャはフランス語読みである。

ここでは、プラハの街中や美術館で見つけたミュシャの作品をセレクトして紹介したい。

その他のプラハの見どころについて、今回の旅の目次はこちら。

プラハの特徴とおすすめの見どころ【交通・食事など基本情報あり】

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ミュシャの作品の特徴

ベネディクティンというフランスのリキュールの宣伝ポスター。ミュシャはこのような商業的なポスターを多く制作した。

以下がミュシャの作品の大きな特徴である。

  • 装飾的
  • 豊かな色彩
  • 曲線の多い文様

曲線を多用して、主に華麗な女性像を描く。女性像は、季節や花など、概念や事物を擬人化した姿であることも多い。装飾化した花や植物、幾何学的で繊細な文様を周囲に散りばめる。

画面は色彩豊かで、繊細なグラデーションを伴う。これらの美しい女性像は、当時から多くの人を魅了し続けている。

アール・ヌーヴォーとは

アール・ヌーヴォーとは、19世紀末から20世紀にかけてヨーロッパで起きた美術運動。ミュシャはその代表的アーティストであり、多くの芸術家に強い影響を与えた人物である。

曲線を多く用い、自由な様式で装飾的な表現が特徴。自然界の要素を取り入れているものも多い。ウィリアム・モリスが主導した「日常生活に芸術を」というアーツ・アンド・クラフツ運動が源流となっているため、建築、工芸品、グラフィックデザイン(ポスターや本の装飾など)などの日常生活に即した分野で広がりを見せた。

アール・ヌーヴォーというフランス語からもわかるように、この動きは特にフランスで強い影響力を持ったが、ミュシャがフランスに渡っていたこともそれを後押ししたのかもしれない。

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ミュシャとチェコ

ミュシャは1860年にチェコ東部のモラヴィアで生まれた。子どもの頃から絵を得意としていたが、1878年、まだ20歳前であったミュシャは、プラハ美術学校を受けるも失格。「他の仕事を探すように」とアドバイスを受けた。

チェコで受け入れられなかったミュシャは、19歳(1979年)でオーストリア、ウイーンのデッサン学校に通い、パトロンの援助を得て25歳(1885年)でドイツのミュンヘン美術学院、28歳(1888年)でフランス、パリのアカデミー・ジュリアンという美術学校に行くなど、各国を転々としていた。そして1895年、フランスの女優、サラ・ベルナールの舞台のために作成したポスター「ジスモンダ」で一気にその名声を博したのだった。

「ジスモンダ」

このポスターは、本来手掛けるはずだった画家がホリデーに行っていたため、ミュシャにお声がかかったという偶然によって生まれた。そしてパリにおいて、ミュシャはキャリアを成功させていったのである。

そんなミュシャだが、チェコのためにした仕事もいくつかある。

ミュシャデザインのステンドグラス

プラハで一番有名な宗教建築である聖ヴィート大聖堂には、ミュシャがデザインしたステンドグラスがある。

大聖堂についての詳しいレポはこちら。

美しすぎるプラハの聖ヴィート大聖堂とイジー教会、プラハ城の見どころ

こちらがそのステンドグラス。他のステンドグラスのようにカラフルなのだが、ここでは柔らかなグラデーションが目立つ。このグラデーションと、人物表現はミュシャ特有のものだ。

丸顔で口の小さめの女性像は、ミュシャが描く女性像の特徴である。

このステンドグラス、豊かな色彩を持っているが、特に青が美しい。他のステンドグラスと比べても、凛として壮麗な雰囲気が漂っていた。

ミュシャの手がけた市民会館

プラハ市民会館 (スメタナホール)は、コンサートや美術展が行われている大きな建物。こんな装飾的な建物が市民会館だとは……すごい……

中にはミュシャが描いた天井画や壁画、カーテンや柱の装飾まで全部ミュシャが手がけた「市長の間」があり、ガイドツアーに申し込めば見学できるとのこと。私は残念ながら今回は行けなかった……。

写真にある外観正面のモザイク画は、カレル・シュピラーという画家の「プラハの春」という作品。


Municipal House

住所:nám. Republiky 5, 111 21 Staré Město, Czechia

ミュシャの手がけたチェコの紙幣

ミュシャはチェコの紙幣のデザインも手がけたことがある。

10コルナ札 1927年

アール・ヌーヴォー仕様の美しい紙幣。「日用品を装飾する」というアール・ヌーヴォー運動の際たるものに私には思える。

50コルナ札 1929年

100コルナ札 1920年

この紙幣が見られるのは、プラハにあるアートギャラリー。以下でその展示をレポートしたい。

ミュシャ作品が見られるプラハの美術館

プラハでミュシャの作品が見られる美術館は、ミュシャ博物館(Mucha Museum)と、プラハアートギャラリー(Gallery of Art Prague)である。

私は今回、旧市街広場にあるプラハアートギャラリーの方に行った。ここは、ミュシャ、ダリ、ウォーホルという全くスタイルの異なる3人に特化している珍しい美術館だ。ミュシャ博物館は撮影禁止らしいが、こちらのギャラリーは撮影可。

ここではミュシャとダリを見たのだが、ダリは著作権が切れておらずブログに載せるのが憚られるので今回はミュシャのことだけ書いていく。

ただ写真に撮ると額の表面が反射しまくりだったので、ものによっては角度や映りが変だったりするがご了承願いたい(ネット上で画像が入手できる作品はそちらを載せている)。

またこのギャラリーはキャプションがついている作品が少なく、解説どころか作品名も書いてないものも多いので、そこは私が補足した。

壁をミュシャの作品が覆っている部屋はとても華やか。前述したベネディクティンとジスモンダのポスターもこのギャラリーで見ることができる。

ルフェーブル=ユティール・ビスケット 1896年

私はここに展示されていた中でも特にビスケットのポスターが好きだ。自信ありげな少女の顔とポーズがかっこよく、赤系を基調とした情熱的な色合い。

四季:夏 1896年

4つの連作「四季」のうち、夏を描いた作品。この少女は夏の擬人化である。赤い花をいっぱいにつけた彼女は足元を水辺につけて涼んでいる。

暑さのせいか、少し気だるげな様子でツタに腕を絡ませるこの少女は、まるで森の妖精のようだ。

ロレンザッチオ 1896年

舞台のポスター。珍しく男性を描いた作品と思いきや、これは女優のサラ・ベルナールが15世紀フィレンツェのメディチ家当主、ロレンツォ・デ・メディチ(ロレンザッチオ)に扮している姿である。男装の麗人とでもいおうか。

メディチ家最盛期を治め、ルネサンス文化をバックアップした張本人で、ずば抜けた政治・外交能力に加え、人間性も評価されている。若きミケランジェロの才能を発掘した人物でもある。

Hospodarsko prumyslová a národopisná Vystava 1902年

チェコ語のポスター。書いてある文字を翻訳にかけてみると「工業と民族の博覧会」みたいな意味になるので、そうしたイベントの宣伝用なのだろう。

チェコの民族衣装を着た少女が花束を抱えている。なんだか少し寂しそうな顔をしているのが儚げな印象を与える。

ヒヤシンス姫 1911年

1910年にチェコに帰ったミュシャが、その翌年に手がけた作品。チェコで一番人気だった女優が演じた舞台のポスターである。ヒヤシンス姫の名の通り、彼女が頭に飾っているのはヒヤシンスの花。

まっすぐ正面を見つめる青緑の瞳に、どうしても視線が惹きつけられてしまう。まるで本物の人間がそこにいるかのような存在感だ。女優の美しさだけではない、品格のある力強さが感じられる。

Nectar 1902年

ネクターというリキュールのポスター。ネクターの語源は、ギリシャ神話で神の酒を意味する飲み物とされる。この胸をさらけ出したセクシーな女性像は女神なのだろうか。

ミュシャのモデルとなった女性の写真もいくつか展示されていた。これはそのうちの一人。

ポスター以外の商業的作品

ドンペリニョンを製造していることで有名なフランスのシャンパン会社、モエ・エ・シャンドンのための白紙のメニュー表。メニューまで贅を尽くしているのね……。

ぶれてしまっているが、ミュシャのデザインが施された絵葉書。こんな綺麗なのに、絵をうめつくすほどびっしりと文が書いてあって、もったいないと思う反面、よほど書くことがたくさんあったんだろうなとちょっとおかしかった。

日用品をミュシャ風に装飾したスケッチ

ミュシャがデザインした日用品や、さまざまなパターン、文様が多数展示されている部屋があった。1901年に出版されたミュシャによるスタイルブック「Documents Decoratifs」に載っているものだということ。

ヘアピンからカトラリー、家具に至るまでミュシャの個性が発揮されたデザインとなっている。

これがなかなか面白かったのだ。

動物をモチーフにしたパターンを描いたもの。

食器やカトラリー。曲線が多い装飾的なデザイン。

指輪や髪飾りなどの貴金属と、なぜか右上に威嚇(?)する猿。不思議な組み合わせである。

ミュシャの世界観が好きな人には、ミュシャ博物館か、このアートギャラリーを訪れることを強くおすすめしたい。有名な作品から、マイナーなもの、スケッチまで幅広く楽しめること間違いなし。


Gallery of Art Prague

住所:Celetná 15, 110 00 Staré Město, Czechia

料金:1アーティストは170コルナ(850円)、2アーティストは280コルナ(1400円)、3アーティストすべては350コルナ(1750円)。

 

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