むせかえるほどの装飾を持つ教会発見。セビリア「ロス・ベネラブレス病院」がすごかった

スペインのセビリアで出会ってしまった、ものすごい密度の装飾を持つ教会がある不思議な病院「ロス・ベネラブレス病院 (Hospital los Venerables)」の見学レポ。

今回の旅の概要と見どころ、クリスマス・年末年始の街の様子などはこちらの目次代わりの記事から。

南スペインの都市セビリア・コルドバの旅行レポとお役立ち情報

アートな見どころたっぷりのロス・ベネラブレス病院 

この病院は、1675年に貧しい高齢聖職者たちのための病院として建設が始まり、1697年に完成した。1805年まで寄付金によって運営されており、1970年代まで住居として使用されていた。現在は観光スポットとして公開されている。

ここの見どころはたくさんある。

  • バロック建築とイスラム建築の融合を見ることができる
  • 豪華な装飾で埋め尽くされた教会が中にある
  • セビリアの生んだ有名画家、ムリリョの作品(複製も含む)を見ることができる
  • スペイン絵画の巨匠、ベラスケスの作品が見られる展示室「ベラスケス・センター」がある

この記事では、これらの見どころをたっぷりと紹介していきたい。

イスラムの建築様式が融合した美しい内装

セビリアにいくつもあるパラシオ(豪邸、宮殿)と同じように、ここにも中央にイスラム庭園の特徴であるパティオ(中庭)がある。

この中庭を取り囲むように回廊があり、それぞれの展示室や部屋につながっている。

壁は色彩豊かなアラベスク文様で覆われている。ここをぐるりと歩くだけですでに楽しい。

階段の装飾も見逃さずに

2階に向かう階段もやたら濃厚である。

2階に上がる寸前に、こんなド派手な天井装飾が見えてきた。楕円型の紋章のような感じで、植物のモチーフと天使が絡み合った迫力あるもの。なぜ階段にさえこんなもりもりの飾りを…?

と思いながら2階へ上がる。2階に何か展示されていたような気がするが、印象が薄く覚えていない。

なぜなら、2階からとんでもない光景を見てしまったからだ。

!? なんだこの空間は…?

1階を見下ろせる内窓から、おびただしい量の絵画に埋め尽くされた空間が見えた。そしてよくよく見るとどうやら教会のようであった。ここで2階の記憶はすべて吹っ飛び、私はすぐさま1階に降りてこの教会への入口を探したのだった。

美麗な絵で埋め尽くされている付属教会

1階の回廊から教会に入ると、そこは異世界のような空間だった。

回廊のアラベスク文様など目でもないほどの、装飾、装飾、装飾。こんな教会は初めてだ。

空間恐怖症的な執着さえ感じるほどの。それでいて調和があり、美しい。壁と天井には鮮やかな色でキリスト教の聖人や天使が描かれている。

この教会も病院建設と同時期に作られ、これらの壁画は、17世紀スペインに活動していたJuan de Valdés Lealとその息子Lucas Valdésによるフレスコ画だという。

左右両側の壁も、素晴らしい彫像と壁画で埋め尽くされている。

後方を振り返ると、大量の壁画に負けない存在感の煌びやかなパイプオルガンも見える。質と量で迫ってくる圧巻の空間だ。

この教会の奥にはひっそりと小さな展示室があり、金細工製品やキリストの彫像などを展示していた。

とても小さな部屋で、展示品は少ない。

この部屋の天井画もまた素晴らしかった。メインの壁画を担当した画家の一人、Juan de Valdés Lealの作品である。

天使たちが十字架を運びながら舞う様子は、躍動感があるのにどこか時が止まったかのようにしんとした印象があった。

これがこの展示室のメインと言えよう。

正面の祭壇付近にはスクリーンが設置され、セビリアが生んだ17世紀の画家ムリリョの作品に関する解説動画が流れていた。

この病院内で見られるムリリョの作品

17世紀のスペイン絵画黄金時代に活躍したバルトロメ・エステバン・ムリーリョの作品は、宗教画を主とし、柔らかく優美な雰囲気が特徴だ。

特に女性や幼児の甘美で可愛らしい表現で知られる(一方で暗い作品もあるが)。

この病院では、ムリリョの作品をいくつか見ることができる。すべてオリジナルではないのだが、ここで紹介しよう。

1階の回廊の一部には、ムリリョの作品(複製)がかけられている。以下が詳細である。

「無原罪の御宿り」1658年

ムリリョ作品で最も有名なものの一つであるこの絵画は、この病院のために制作された。現在はここではなくマドリードのプラド美術館に所蔵されている。

少女のようなマリアの周りを、あどけない顔をした大量の天使たちが舞っている。

「巡礼者にパンを施す幼児キリスト」1678年

この作品は、現在はブダペスト国立西洋美術館に所蔵されている。聖母マリアに支えられた幼子キリストが、巡礼者に彼の「肉」であるパンを手渡しているところ。

奇跡的な光景を目の当たりにした巡礼者たちは、なんとも驚いた様子だ。

建物内には「ベラスケス・センター」という、ベラスケスその他複数の芸術家の作品を展示する部屋があり、そこでもムリリョの作品を見ることができる。

ムリリョやベラスケスの作品が展示されているベラスケス・センター

ごく小さな展示室だが、素晴らしい作品の数々を鑑賞できる。一部を紹介していきたい。

マルティネス・モンタニェース「洗礼者ヨハネ」1623~1624年

「木工の神」と呼ばれたスペインの彫刻家の作品。物憂げな表情を浮かべる、中性的にも見えるヨハネ。

腕の血管まで表現された写実性は見ものである。

ヨハネは子羊を抱えている。洗礼者ヨハネは子羊とともに表されることが多い。これは、ヨハネがキリストが自分の方に向かってくるのを見て「見よ、世の罪を取り除く神の小羊だ。」と言ったと聖書に書かれていることから来ている。

キリストは神の子羊と呼ばれており(また、信者も子羊と呼ばれる)、羊はキリスト教にとって大変重要なシンボルなのだ。

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「The San Pedro penitent de los Venerables」1675年

聖ペトロが懺悔をしている様子。ムリリョの制作で、元々は病院内の教会の主祭壇におさめられていた。だが1810年にフランスの手に渡り、その後2014年にセビリアに戻ってきたばかりの作品だという。

これは老いたペトロの生々しい肉体表現、恐ろしくも見える暗い背景とムードがありありと描かれた、ムリリョの「暗い表現」を見事に表す作品だ。この暗闇は、イエスを裏切ったことを懺悔するペドロの心境を体現しているかのようだ。

髭の先から、踏みしめた足の指まで、その描写力が光る。

バルトロメオ・カヴァロッチ「聖家族」1620年

イタリアの画家で、カラヴァッジョ派の一人とされる。暗い背景に人物の顔や体がくっきりと明るく浮かび上がり、光と影を描きわけるバロック様式の表現が特徴的だ。

中央には聖母マリアと幼子キリスト、左側には子供の姿をした洗礼者ヨハネ、右側にはキリストの養父である聖ヨゼフがいる。ヨゼフはマリアに比べて随分おじいさんに見えるが、髭をたっぷりたくわえ、老人のような姿で描かれることが多い人物だ(マリアが美化されているという面もある)。

色彩の美しさと滑らかな筆致、子供たちと聖マリアの柔らかな表現と、ヨセフのごつごつとした男性的な表現の対比が見ごたえがある。

ディエゴ・ベラスケス「聖ルフィーナ」1630年

聖女ルフィーナの肖像。彼女は姉妹の聖フスタと共にセビリアで殉教したとされ、フスタと二人でセビリアの守護聖人となった。

きりりとした目線を投げかけてくる彼女は、強い存在感を放っている。白い陶器の質感表現、それを支える影に暗く沈んだ手の表現も素晴らしい。全体的に白色と暗色の対比によってメリハリがつけられている。

フランシスコ・エレーラ・ザ・エルダー「Inmaculada con San Joaquín y Santa Ana」1625~1630年

無原罪の御宿りの場面。聖母マリアを中央にして左右に立つのは、マリアの両親である聖ヨアキムと聖アンナである。柔らかな光が全体を覆っているような印象を覚える作品。

よくある表現だが、マリアの足元には顔だけの子供が何人も見える。これは天使で、マリアを支えているのだが、体を省略して顔だけがぼこぼことある描き方がちょっと面白い。また、マリアが踏んでいるかのようにも見えるのがなんだかシュールである。


このように、見どころが多いのに人が少ない、「ロス・ベネラブレス病院 (Hospital los Venerables)」。

素晴らしい場所だったので、セビリアに訪れた際はぜひ立ち寄ることをおすすめする。

Hospital los Venerables

住所:Plaza Venerables, 8, 41004 Sevilla, Spain

料金:10ユーロ

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