イースター祭の祝日を利用して、ロンドンからマルタ島へ飛んだ。
マルタ島はとても小さい。
どれだけ小さいかというと、島全体で東京都の7分の1の面積しかない。
車があれば丸4日でもゆったり観光ができる。
逆に言えば4日で十分だと感じた。車なら各観光地がとても近い。
私は首都ヴァレッタの少し北のパーチビルという町に泊まっていたが、島のどこへ行っても1時間かからなかった。
ダイビングなどのマリンスポーツをしたり、ゴゾ島など他の島に足を延ばすのならもっと日数が必要かな。
目次
古く見える建物が多い
マルタは実際古い歴史を持つ島で、古代からの遺跡も数多く残されているのだが、現代の建物も古く見える(いい意味で)ものが多い。おそらく石造りで石の色も白~茶などの古びて見えるものが多いからだと思う。
建物は普通の家でも全部上の写真みたいな感じなので、私も最初はマルタの建物はどれも超絶古いのかと思っていた。
こういう色の新品の石で新築の家を作っている作業現場を見るまでは。
「あっ新築でもこういう色なのね」と理解した。色の力はすごい。
遺跡も同じような色なので、正直外観だと遺跡なんだか現代の建物なんだかよくわからない。形が今と昔であまり変わっていないということもあるだろうけど。というか変えないように努力しているんだろうけど。
暖かい国だからか、サボテンがたくさん自生していた。
オレンジのサボテンも見つけた。初めて見たけれど可愛い。
島中を東西南北回っているうちに、いろいろな遺跡と素晴らしい自然に巡り会ったので、ここではそれらを紹介したいと思う。
何かの建物の跡を海辺で見つける
島南端に出かけた時のこと。緑の海がとても綺麗で、もっと近づけないかな、と思っていたら岩礁のあたりで釣りをしているおじさんを見つけたので、私もそのあたりまで行ってみることに。
行ってみると、明らかに人工的な建築物が作られたような跡があった。
なんの変哲もない海沿いの地域で、観光客は私たち以外ゼロだし、看板なども何もない。
だからこれが何なのかわからなかったけれど、明らかに地面が四角形に区切られていて、接着剤のようなものを使った跡も見られた。建物が建っていたのだろうか。
くぼみには海水が蒸発してできた塩が(写真の白い部分)。舐めてみたらしょっぱかったので確かに塩であった。
ここはマルタで一番謎の遺跡として私の心に刻まれた。
新石器時代の遺跡建築物 ハジャール・イム神殿
さらに南の海岸線を沿って西に行くと、新石器時代に建設された巨大な石の神殿「ハジャール・イム」がある。
紀元前3700~3200年の建物。地球上でもっとも古い宗教建築物の1つだ。
新石器時代にマルタ島にいた人々は、先進的技術も、金属の道具も、文字すら持たなかったという。そんな彼らがこれだけの大きさの自立する建築物を作ることができたのは驚異的である。
新石器時代とは、石器時代の最後の時代で、旧石器時代=狩猟・採集の暮らしだったのに対し、新石器時代=狩猟・採集+農耕・牧畜の時代。つまり人類が定住生活をするようになった時代だ。
だから、「自分たちの定住地」に、これほど大きな不動の神殿を作る意味は大きかったのかもしれない。
マルタは太陽光が強いので、晒されているとダメージを受けてしまうらしく、保存のためにこうしてシェルターで覆ってある。
大きなブロック石を多数積み重ねて構成されている。
ハジャール・イムは、ハジャー(岩)とイム(崇拝)から来た名前だという。イギリスのストーンヘッジのように、儀式に使われていた。
この神殿から敷地内をさらに歩いていくと、もう1つの神殿「イムナイドラ神殿」がある。
もともとは、神殿の一部はちゃんと屋根に覆われていた。
複数の種類の石灰岩を用いて作られた。外壁は固い石灰岩、内部は装飾が彫れるように柔らかい石灰岩でできている。
装飾は消えてしまったのか、それとも壁に開けられた大量の小さな穴が装飾だったのか、よくわからない。
ここの遺跡の大部分は、後世に修復されたものだが、↑この部分は新石器時代オリジナルのもの。
両側の縦に長い岩に彫られた小さな穴は、カレンダーか何かを数えるのに使った跡ではないかという説がある。
ハジャール・イム神殿(Ħaġar Qim Temples)
住所:Triq Hagar Qim, Il-Qrendi QRD 2501, Malta
ピンクの塔「聖アガサタワー」
ドライブ中にピンクの可愛らしい塔を見つけた。
マルタを治めていた領主が1649年に建てた見張り台。正式名称は「聖アガサタワー」だが、その色から別名「レッド・タワー」と呼ばれている。
首都ヴァレッタへシグナルを送るのにちょうどいい位置で、当時は大砲と近衛兵によって警備されていた。
聖アガサ(またはアガタ)とは隣の島シチリア島で殉教した聖女で、キリスト教を迫害するローマ人権力者に目をつけられ、乳房を切り落とされる拷問を受けたという。
アガサ信仰はマルタにも伝わり、1565年にオスマン帝国がマルタ島に侵攻した際、マルタ十字軍の奮闘により追い返したが、これを聖アガサの守りと人々が信じたため、マルタの守護聖人となった歴史がある。
聖アガサのカタコンベが別の町にあるのだが、そこは個人的に大変がっかりスポットだった。それについては以下の記事をどうぞ。正確には行ったのは聖パウロカタコンベだけど、アガサも中は同じなので。
屋上に登ると、島をぐるりと見渡せる。当時配置されていたのだろう場所に大砲も置いてあって、なんだかここだけ中世から切り離されて残っているみたいだ。
小さい塔だけれど、歴史好きにはとても面白いのでおすすめだ。
聖アガサタワー(St. Agatha’s Tower)
住所:Triq Tad-Dahar, Il-Mellieħa, Malta
飛び込みスポットと小さな地元の教会
島の北端に行ってみると、南端同様美しいブルーの海が広がっていた。
そこに、「コーラル・ラグーン」というスポットがある。
崖にぽっかり穴が空いたような地形で、オープンな洞窟のよう。下は海が広がる。
ここから飛び込みもできるという。
……いやいやいや! 絶対無理でしょ! 死を感じる。めちゃくちゃ高いからね!?
もちろん、飛び込んだら岩を登ってくることはできない。
反対側から見たところ。
「海へとつながる出入り口(上記写真に写った割れ目だと思われる)があって、そこから外に泳いで出て、岸までたどり着くしか陸地に上がる方法はない」「天候や海の状態をよく見て危険な時は飛び込まないこと」みたいなレビューがグーグルマップに載っていて、ああ、一定数飛び込んだ人がいるんだね……と思った。勇気ありすぎでしょ。すごいな。
コーラル・ラグーン(Coral Lagoon)
住所:Mellieha, Malta
そのまま近くを散策していると、小さなローカルの無人教会があった。地元の漁師の人たちに愛される教会。
19世紀に、釣りに出ていた2人の漁師が海上で嵐にあい波に呑まれ、1人は亡くなったが1人は生還した。
生き残った漁師は、神に感謝するために小さな教会を建てたんだそうな。
その教会は時が経つにつれて地盤沈下で崩れてしまい、まったく同じデザインで数メートル内陸側に建て直された教会がこの教会だということだ。
中はとてもこじんまりとしている。
捧げもの。マルタ語と英語で「聖なる(司祭によって清められた)オリーブの葉」と書いてある。
無原罪の御宿り教会(Chapel of Immaculate Conception)
住所:Mellieha, Malta
工芸職人村と軍事飛行機博物館
聖アガサタワーの受付のおじいさんに、この辺でおすすめの観光地はないか聞いたところ、「車で行けば近いところに工芸職人村がある」と言う。
木工、金属、ガラス、陶器などいろいろな工芸職人の工房が集まった村だそうで、足を延ばしてみた。
「アタード」という小さな村だ。
木工職人の工房。実際に制作をする作業場で、作品販売もしている。
陶器の工房。花瓶や食器だけでなく、家のプレートや水瓶? のようなものまで。
他にもガラス職人の工房を覗いた。ちょっとしたお土産を買ったり、ものづくりが好きな人は職人の作業風景を見られるので楽しいと思う。
この村の中に、なぜか軍事飛行機博物館もある。
マルタに限らず、いろいろな国の軍用機が集められているようだ。これはイギリスの「ホーカー・シーホーク」。
結構広くて、見ごたえがある。私はこういう分野にとても疎いのがちょっと悲しい。
巨大なエンジン。
とてもゆったりした時間が流れている空間で、メカや飛行機が好きな人には大変おすすめできる博物館。入場料は1人7ユーロ。
ここで初めて「マルタ島のネコ」を見た。
マルタ軍事航空博物館(Malta Aviation Museum)
住所:Attard, Malta
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