イングランドのドーセットに旅行に行った時の記録。これで最後となる。この旅のこれまでの話は以下から。
この記事で紹介する白鳥園とウィンチェスターは、今回の旅で道中立ち寄ったところ。ウィンチェスターはドーセットエリアではなく、ドーセットからロンドンに帰る道中にある、歴史ある町だ。
アボッツバリー:中世の遺跡が残る街と白鳥園
ドーセット内のアボッツバリーという村には、11世紀の聖堂や14世紀の教会などの遺跡がある。
こちらは聖ニコラス教会。14~15世紀にできた教会だという。
私たちが着いた時には、時間の変わり目を告げる鐘の音が鳴っており、雰囲気たっぷり。
まずは白鳥園に向かう。途中、丘の上に小さな礼拝堂(上の画像の右上)が見えた。物語に出てきそうなセッティング。白鳥園の後にあそこも寄ろう、と決めた。
白鳥園には白鳥の親子がたくさん
この白鳥園(swannery)は、mute swan(コブハクチョウ)に特化した飼育を行っているのだという。英語でミュートと名前についているのは、他の白鳥に比べて比較的鳴かない種であるからだとか。
広い園の中を歩いて白鳥たちが自然のままに暮らすのを観察できる。ちょうど繁殖の季節だったようで、幼いヒナを連れたファミリーをたくさん見ることができた。ここでは檻はなく、白鳥たちは自由に飛ぶ回ることもできる。
この白鳥飼育所は、この場所にあったベネディクト修道院の修道士たちによって1040年代に作られた。なんと1000年もの歴史を持つのである。元々は、晩餐の食材を賄うために白鳥を飼い始めたのだという。現在では、白鳥を保護し、生態を把握するための施設として運営されている。
先ほどのニコラス教会もその一部だが、ここいらのエリア一帯が修道士たちが暮らし活動する宗教的な地区だったのだ。
まるで幼稚園のような光景。ヒナの数は家族によってまちまちで、これは私が見た中でもかなり多い方。
まだ抱卵中の個体も多く、卵の位置を変えたり巣を整えている白鳥が見られた。白鳥の卵ってかなり大きいんだな。
こんなに大量の白鳥を一度に見たのは人生初である。この白鳥園は、コブハクチョウの集団繁殖地としては世界で唯一の場所であるらしい。
もふもふのヒナは長く見ていても飽きない。すでに親と同じ動きで餌を食べているのが面白い。来園したタイミングが良く、飼育員さんが餌をやっているところも見ることができた。
料金:大人10ポンド、子ども(5~15歳)5ポンド
住所:New Barn Rd, Abbotsbury, Weymouth DT3 4JG
丘の上の小さな礼拝堂
先ほど見かけた丘の上の礼拝堂へ向かう。道なき道をひたすら上る。
頂上からは、村周辺が360°見渡せる。
こちらが、丘の上に立つ聖キャサリン礼拝堂。14世紀に建設されたものであるとみられている。トイレや売店などもなく、人が常駐しているわけではない、小さな遺跡である。
中はとてもシンプルな作り。16世紀にここら一帯の宗教施設は取り壊されたが、この礼拝堂は残った貴重な建築物の一つであるという。
丘を下りながら昔修道院のあった区画一帯を眺める。当時は、どんな風景だったのだろう。変わっていない部分も割とあるのではないか。
Abbotsbury, St Catherine’s Chapel
入場無料
住所:Chapel Hill, Abbotsbury, Weymouth, Dorset, DT3 4JH
中世の人気巡礼地だったウィンチェスターの大聖堂
ドーセットからロンドンの自宅に帰る途中、ウィンチェスターという町に寄った。ロンドンから車で1時間半くらいの場所にある。アングロサクソンが覇権をとっていた時代には、イングランドの首都であった町でもあり、その後も巡礼地として重要な役割を担っていた。
ここでの一番の見所は、町の中心にあるウィンチェスター大聖堂。大変歴史ある大聖堂で、最古のルーツは600年代に遡る。10世紀末までに複数の機能を備えた大規模な施設になったという。
外観を撮り忘れたので、wikiにあったパブリックドメインの画像から。
イングランド最大級の聖堂の一つ。建物は部分ごとに11世紀~16世紀に建設されたものが混在している。
ゴシック式聖堂のうちヨーロッパ一長い身廊を持つだけあって、内部の空間は大変広々としている。壁の装飾は多くなく、すっきりした印象だ。
後面の巨大ステンドグラスも存在感がある。
この奥には聖歌隊席と主祭壇がある。
美しい聖歌隊席。この部分の柱などは一部12世紀のものが残っている。ここから装飾がどんどん凝り始めていく。奥の天井の蔓が這ったようなパターンの文様も素敵。
大変細密な、主祭壇の装飾彫刻。磔にされたキリストを中心に、多くの聖人が表されている。
1500年代初期にウィンチェスター大聖堂の主教(教会の高位聖職者)であったフォックス司教のチャペル。この大聖堂には多くの主教が眠る。フォックス(fox)という姓があったことを知った。
下部には故人を表した彫像らしきものがあったが、ガリガリに痩せた死ぬ直前の姿という感じで、ややショッキングな表現だった。
こちらも、おそらく他の主教(または他の高位聖職者)のチャペル。
中にはやはり故人を象った彫刻が寝ていた。こちらは彩色されていて新しく見える。
チャペルの天井も見事な装飾が施されている。中央の彩色された部分では、盾を持った天使が故人を見下ろしている。
チャペル内には小さな台が設けられており、ここにも磔刑のキリストが描かれる。装飾は多いものの、派手さはあまりなく厳かな雰囲気。
こちらも、1800年代にウィンチェスターの主教を務めた人物の墓碑。なんとも豪勢な作りである。主教はかなり敬われていた立場であったことがうかがえる。
柱を支えるのはライオン。巻き毛のたてがみは中国・日本の獅子や狛犬のたてがみにも似ている。
故人を支えるのは天使たち。細部まで抜かりなく彫りこまれている。
足元には堂々と前を見据える鷲。こうした故人を象った彫像の足元にはさまざまな動物が加えられるが、これは今まで見た中でもかなり大きなもの。
今回は寄らなかったが、ウィンチェスターはこの他にも、歴史ある建造物やイギリスの作家ジェーン・オースティンの家があるなど、そこそこ見所がある。他の観光地とセットで訪れるのに向いていると思う。
料金:大人10ポンド、15歳以下無料、日曜は建物内観覧だけなら入場無料
住所:9 The Cl, Winchester SO23 9LS
久々の旅行は新鮮だったが、(コロナ禍の影響で)いろいろな場所で予約が必須になっていたり、オープンしていない施設も結構あるので、まだ以前のようにはいかないな、というのが正直なところ。それでも、自宅に引き籠っていた時期を考えると、移動ができるだけでもありがたい。
今後も国内、海外と自由に旅行ができる世の中にまたなってほしいと切に願っている。
今回の旅の記録を最初から読むにはこちらから。
コメント