V&A美術館・仏教コーナーには変わったブッダや面白い仏像がずらり

2017年12月7日

今回は、ロンドンのV&A美術館の中にある、仏教コーナーを紹介しようと思う。

仏教コーナーは、17-18・20室、47室と飛び地の2ヵ所にある。

これは最近「エキシビション・ロード」沿いにリニューアルオープンした新しい出入り口。ここから入ると、すぐに仏教展示室17-18・20室が現れる。

ここと奥の47室を合わせて、素晴らしい仏像、面白い仏像の数々を紹介していくよ。

画像はすべてhttp://collections.vam.ac.uk/より。

17-18・20室

イケメンの仏像

これはね~、本当はもっとイケメン仏像だらけの大英博物館の仏教コーナーでやりたかったんだけど、現在そのコーナーは改修中でクローズしているので、まずはV&Aの方を紹介します。

仏頭 400~500年頃 ガンダーラ

たぶんV&Aのブッダの中で一番イケメン。優勝!もはや美しい。
ガンダーラは現在のアフガニスタン東からパキスタン北西あたりにあった古代王国。
ガンダーラ美術はギリシャ、ペルシャ、インドなど様々な文化が混ざり合っているので、ブッダの顔も彫りが深くて綺麗なものが多い。

弥勒菩薩 100~400年頃 ガンダーラ

ダンディなイケメン。弥勒は次のブッダになることが約束された菩薩。
ゴータマ・ブッダの死んだ56億7千万年後にこの世界に現われ悟りを開くという。まだまだ修行中の身なのである。

聖観音(アーリヤ・アヴァローキテーシュヴァラ)1000~1100年頃 インド

ポタラ山(補陀落山)に座る観音像。チベットの「ポタラ宮」も同じ語源である。

静かで聡明な雰囲気の像だ。周りを囲む小さな仏像には朱色がまだ少し残っている。作られたばかりの頃は色鮮やかだったのかもしれない。仏像たちの合間を縫うように山羊や象、獅子、サルなどを含めた動植物が彫られている。

サーンチーの胸像(観音像)900年頃 インド・サーンチー

これはトルソだけど、顔があったら絶対イケメンであろう体をしている(?)。細身でしなやかな体の線が優美だ。やや少年ぽくもある。

これが発見されたのと同じ場所から、通常観音像と対になっている弥勒菩薩の像も後になって発掘されたという。

見事な浮彫彫刻(レリーフ)

The Goddess Parnashavari  1150~1200年頃 インド

仏教とヒンドゥー教どちらでも崇拝される癒しの神。蓮の上に乗り、右手のあたりにヒンドゥー教の象頭の神、ガネーシャを携えている。この画像だとわかりにくいけれど…。

仏教とヒンドゥー教はどちらも古代インドで生まれた。バラモン教に反発してできたのが仏教、バラモンが変化したものがヒンドゥー教だ。
なので2つの中で観念を共有しているものもあり、この作品はその片鱗を見るようでとても面白い。ちなみにブッダはヒンドゥー教にも9番目の聖人として登場する。

台座には「異なる派の仏教徒たちが一堂に会してこの像を作った」というようなことが書かれている。

ブッダの死(涅槃) 100~200年頃 ガンダーラ

輪廻から抜け出て涅槃に入る瞬間のブッダを表現したもの。実はここにもヒンドゥー教の要素が混じっている。

横たわるブッダのすぐ下、脚を組んで瞑想している人物は、スバッダというブッダの入滅直前に弟子となった人物。実はヒンドゥー教の聖典「マハーバーラタ」の登場人物でもある。

インパクト大!黄金の仏像たち

聖観音像 1300~1400年 チベット(制作はネパール)

展示室の真ん中に存在感たっぷりに立っている像。重心を右足に乗せた腰のラインがセクシー。

何かをつまんでいるような左手には、かつて蓮の花(純粋な魂の象徴)を持っていた。

The Mahasiddha Ghantapa 1600~1700年 チベット

チベット仏教美術は私が大好きなもののひとつ。このように男女が絡みついている像はチベット仏教特有のものだ。

Mahasiddhaとは600~1100年の間にインドに住んでいたタントラの修行者たちの総称。その一人であったGhantapaがこの男性像である。

タントラでは、魂の知覚を広げるために、性行為の儀式も修行に含まれる。
つまりこのシーンは、キャッキャウフフしているわけではなく、真面目な儀式なのである。

Kharamukha Samvara 1700~1800年 東チベット

こちらも修行に励んでいる像である。決して快楽に溺れているわけではない。
ロバの頭をした男性は慈愛、女性は智慧を表す。

タイトルのkharaとは、サンスクリット語で「ロバ」「空(くう)」の2つを意味する。

ちなみにサンヴァラとは、wiki先生によれば、9つあるジャイナ教の原理タットヴァのうちの1つである。
1行目の「サンヴァラとはカルマの制御である。」でもうなんか遠くの世界に連れて行かれそうになったので読むのをやめた。詳しく知りたい方はどうぞご自分で。

The Mahasiddha Virupa 1403~24年 中国

これもタントラ修行者MahasiddhaのうちのVirupaさんという人だ。

チベット仏教で崇められている人物だが、この作品は明の第3代皇帝永楽帝のために作られたもの。永楽帝は仏教徒で、チベットの宗教指導者をよくゲストとして迎えていたという。

バイラヴァの仮面 1600~1700年 ネパール

バイラヴァとは、ヒンドゥー教の主神、シヴァ神の恐ろしい側面を象徴する別の姿であり、「絶滅」を意味する。儀式の際には、口からお神酒を注いだという。

ちなみに、このバイラヴァ(マハーカーラとも呼ばれる)は仏教に入り大黒天という名がつけられた。「大黒」の音が「大国」に通じるため、日本の大黒様はニコニコしているが、もとは恐怖の神だったのである。

「バイラヴァ」という名前で渡っていたら、日本の優しい顔の大黒様もいなかったかもしれない。

日本の仏像は…?

と、こんな金ぴかとイケメンの仏像に囲まれて、日本の仏像勢も展示されていた。

日本の仏像は…

如意輪観音 1680年 日本

なんだかのっぺりとした顔であった。どうも他のと比べて迫力がない。優しそうではある。

不動明王 1700~1800年 日本

と思ったら、迫力ある不動明王もおかれていたので安心。

大日如来の別の姿で、人間の煩悩を焼き尽くす炎に包まれている。
神や仏は別の姿をいくつも持っている。

47室

ここからは奥の方の47室の作品を少しだけ紹介。

ド派手で巨大な仏殿

Buddist shrine and associated objects 1850~80年 ミャンマー

まるで城のような、ものすごい存在感を放っている仏殿。どこを見ても金ピカである。

脇にはブッダの弟子のサーリプッタとモッガラーナが控えている。

ブッダの顔がよく見るとマンガみたいである。

弟子(これはサーリプッタ)の方がよほど聡明そうな顔をしているのがおかしい。

木彫りの仏師像

羅漢像 1279~1367年 中国

羅漢とは尊敬されている修行者のこと。この像は説法中のものであると考えられている。

流れるような衣服の表現、骨格を感じさせる身体表現など、ギリシャ彫刻にも劣らない出来栄えだ。
顔の表情も角度によって印象がかなり変わるので、近くでじっくり見た方がいい。

ブッダの顔も多種多様

ここに展示されているブッダの顔を眺めていると、「ブッダの表現にもいろいろあるのだなあ」と感じた。もとは1人の人物であったはずなのに。

瞑想するブッダ 200~400年 パキスタン

割とアジア人ぽい顔立ちのブッダ。すっきりと穏やかな顔だ。かなり写実的である。

座るブッダ 400~600年 パキスタン

すごい濃い顔のブッダ。西洋人やインド人のように、瞼のくぼみが深く、鼻も大きい。

こういうインド人、ロンドンでたまに見かけるわ~などと思った。

仏頭 1200~1300年 タイ

こちらは東アジアっぽい顔。

目を閉じ、大きな口を結んだこのブッダの顔は、カンボジアのアンコールワットを中心としたクメール文化に特有のものだ。

11~12世紀、タイはクメール帝国の一部であり、1238年に初めてタイの独立王朝スコータイ朝が成立した。この像はその独立前後に作られたとされる。
独立してもタイへのクメール文化の影響は大きく、こうしたブッダ像も作られたのだった。


なかなか奥が深い仏教コーナー。V&Aに来たら一度は覗いてみることをおすすめする。

この仏教コーナー47室と隣り合わせの中国文化・日本文化コーナーについても紹介するのでどうぞ見ていってください。