イケメンすぎる西洋人顔の仏像@大英博物館

2018年5月23日

大英博物館にある中国~東南アジアセクションは、2017年はほとんどリニューアルのため閉鎖していた。同年12月にやっと再オープンしたので、見に行ってきた。

中は、インド、中国、東南アジアの文化に関連する展示物がひしめきあっており、主に宗教に関する彫刻や工芸品をたくさん見ることができる。

その中に、燦然と輝く「イケメン仏像」がいるのだ。とはいえ、仏教だけでなくヒンドゥー教その他もあるので、正確には仏像神像である。今回はこの展示室で見られるイケメン&セクシーな彫刻作品を紹介していきたい。

イケメン彫刻

シヴァ神 インド 1100年頃

展示室の中でも一際目立つ、踊るシヴァ神の像。ヒンドゥー教の最高神で、破壊と再生の神とされる。「無知」の象徴の悪鬼を足で踏みつけている。

この姿はナタラージャという踊りの王の形をとって表されたもの。すっきりとした顔立ちの男性像だが、しなやかな手足は女性性も持っている。

ヒンドゥー教はさまざまな文化が混同しており、シヴァのルーツもはっきりしていない。シヴァはその時々によって他の神と同一視されたり、異なる姿をとって表現されるのだ。

展示台に落ちた影がくっきり浮かび上がっていて、なんだか印象的だった。

軍神像(韋駄天) 中国 1626年

中国明時代、建物を守るために置かれた軍神である韋駄天の像。日本でも僧坊の守護神とされている。鬼神が仏舎利を盗んだ時、走って取り戻したという伝説を持ち、「韋駄天走り(速く走ること)」の語源となった。

80cmとそれなりに大きな像で存在感があり、涼やかな切れ長の目が凛々しい。鮮やかなブルーの鎧は、多数展示されていた彫刻群の中でも目を引いた。

阿閦如来(あしゅくにょらい) チベット 1300年代

日本ではあまり聞かない如来の像。煩悩に屈しないゆるぎない悟りを得た如来だという。

男にも女にも見えるような両性的な顔をしていて、滑らかな肌の表現とあいまってとても洗練された雰囲気を醸し出している。「静」を感じる如来像である。
ボリュームある冠も含め、かなり装飾品が多いのにゴテゴテしたいやらしさはない。

彫像(おそらく弥勒菩薩) ネパール 900年代

ブッダの次に仏となるはずの弥勒菩薩である。この像はブッダと変わらない姿をしている。

足を組むブッダが多い中、すらりとした足をのばし、また下半身の衣のたっぷりとしたひだをよく表現している珍しい作品。この衣の表現は初期のグプタ文化の影響があるとされる。

小顔ですらりとした体躯が、今時のモデルのようで印象的だった。

ギリシャ風のブッダ

説法するブッダ パキスタン 200~300年

正統派イケメンぽい、彫りの深いブッダ。発掘されたのは古代ガンダーラと呼ばれていた地域で、ここはアレクサンドロス大王の遠征により、ギリシャ文化が混ざっていることでよく知られている。

この作品のように、ガンダーラで見られる仏像はギリシャ風の顔立ちをしたものが多い。

詳しくはこちら。

横顔を見るとよりよくわかるだろう。ラインがギリシャ彫刻そのままだ。

髪も螺髪というよりウェーブのかかった髪を束ねたような感じで、ちょっと変わっている。この像は彩色されていた可能性もあるとのこと。

弥勒菩薩像 パキスタン 100~350年

やはり彫りが深い男前を発見。こちらはブッダではなく、悟りを目指して修行中の弥勒菩薩である。V&A美術館の仏教コーナーにいた弥勒菩薩像にとても似ている。

参考↓

ブッダの死んだ56億7千万年後にこの世界に現われ、悟りを開くと言われている。

後方に師匠(ブッダ)もいた。
どちらの像も頬がふっくらと立体的で、体も肉厚。健康的な美丈夫の姿だ。

テラコッタ像 インド 600~800年

こちらもガンダーラ地域発掘の老若男女の頭部彫像群。どの顔も、ギリシャ文化の影響を受けているのが見て取れる。

この中央の像はブッダではないことは明らかだが、誰を象ったものかよくわからない。説明抜きで見たら、古代ギリシャで彫られた貴族の娘の顔とでも思ってしまいそうだ。とても綺麗な顔をしている。

セクシーな彫像

お色気たっぷりのセクシーな彫像もいくつかあったのでご紹介。

ヨギーニ 南インド(タミル・ナードゥ)900年頃

ヨギーニとはヨガをする女性の総称。豊満な胸とややくねらせた細身の身体がとってもセクシー。

(色々な角度から撮ったところ、この角度が一番よかった)

体はパーフェクトなのに、若干顔が怖いのが気になる。

と思って解説を読んでみたら、実はこの像は当時の王朝パッラヴァ朝が戦争で滅ぼされた頃に作られたもので、恐怖や緊張した状態の世相が現れているのだとか。イヤリングは蛇の形をしており、腕が4本あるなど、この女性、只者ではない。

おそらく、ネガティブなイメージの女神とか、そんな感じのものなのかもしれない。

ターラー 700~800年 スリランカ

日本では多羅菩薩とも呼ばれる女性の菩薩。観音菩薩の涙から生まれたという。

実際の人間ほどある大きな彫像で、腰を少しひねっている。ウエストラインはコルセットで固めたみたいな形だ。

髪の毛に空いている穴には、大乗仏教の仏である阿弥陀如来が座っていたと推測されている。

横から見ると、下腹が少したぷんとしているのが妙にリアル。

シヴァとパールバティー インド 1100~1200年

ヒンドゥー教のシヴァ神が妻パールバティーを自分の膝に乗せているシーン。1.8メートルもある大きな彫刻で、その緻密な彫りは目を見張るほど美しい。

パールバティーは愛と豊穣の女神で、シヴァとお互いを補い合う存在だ。

お互いの体に手を添える様子が艶めかしい。

シヴァ神がさりげなく乳房に手を添えている。なんか今まで紹介してきたセクシー彫像は皆巨乳である。いや別にいいのだが、皆巨乳である。別にいいのであるが。

でもまあ真面目な話、乳房は女性特有のシンボルだから、はっきりと表現するのが好まれるという側面もあるんだろう。

空間恐怖症ばりに、2人の周りはさまざまな神像や動物、儀式の道具でうめつくされている。
2人の足元にはライオンと雄牛が座っている。どちらもヒンドゥー教で神聖視されている動物だ。

シヴァの横には半人半獣の姿の生き物が。これは何を表しているのだろう。

密教の仏像 チベット 1600年代

チベット仏教(密教)特有の像。金色で男女の像が絡みついているのが特徴である。

この性的な活動も修行の1つであり、この像は特に「秘密集会タントラ」という経典を具現化したものだという。随分怪しげな名前の経典だ。

私には、このチベット仏教の極端なまでにセクシュアルな面に振り切っている表現が、とても面白く思えるのだ。

群像 インド 1100~1200年

ホイサラ朝という王朝時代のヒンドゥー教寺院の外壁に設置されていた群像の一部。

ものすごい装飾性である。踊り子だろうか、女神だろうか。若い女性が集まってキャッキャしているようなエネルギーがあった。

イヤリングやネックレスなど、装身具の細部まで綺麗に掘り出されていて、こんな彫像がたくさん並んでいる寺院の外観はどんな姿だったろうかと創造が膨らむ。

おまけ

骸骨のマスク チベット又は北インド 1800年代

ちょっと怖いけれど、変わったお面を見つけた。仏教のお祭りでこのマスクをかぶって踊るらしい。ドゥルダと呼ばれる踊りで、現代でもブータンで見られるとか。

当時は1年の終わりに災厄を遠ざけるために行われていた儀式だという。

また、人間という存在のはかなさ、永遠のものはないという思想も象徴しているという。これは私たちがよく知る「諸行無常」と同じである。


リニューアルしたこの展示室も、もちろん無料で入ることができる。大英博物館を訪れた際にはぜひ立ち寄ってこの美男美女たちを眺めてもらいたい。

V&A美術館のイケ仏はこちらからどうぞ。

大英博物館には、日本文化の専用展示室もある。それをレポした記事はこちら。