ウォレス・コレクション美術館は無料の宝箱なので絶対行くべし。

2018年5月23日

 ロンドンにある、ウォレス・コレクションは素晴らしい美術品や甲冑を展示しているので、超おすすめの美術館だ。

貴族趣味全開のきらびやかな内装も、見ているだけで楽しい。そしてうれしい入場無料。

この記事では、実際の写真満載でその魅力をお届けするよ。

1897年に建てられた貴族のコレクション屋敷

© Anthony O’Neil

「豪華な屋敷」で思い浮かべる光景がそのまま現実になったようなこの建物は、もともと貴族の一家が住んでいたもの。

©M.chohan

そこに、1897年に第四代ハートフォード侯爵リチャード・シーモア=コンウェイのプライベートコレクションを展示したのが始まりだ。コレクションと屋敷は息子リチャード・ウォレスに引き継がれ、「ウォレス・コレクション」の名がついた。現在はイギリス政府の管理下にある。

この美術館は、外部に作品を貸し出さない。なので、ほかの美術展や美術館では見られない作品ばかりなのだ。

ひとつひとつ色が違う部屋

壁紙の色が部屋によって違っていて、それぞれの部屋に入るたびに印象が変わる。

©M.chohan

この部屋は赤。

©M.chohan

この部屋はゴールド。

この部屋は緑。

壁紙と言っても、絨毯のような織物になっていて、そこに模様が織られている。

中に展示されているのは、15~19世紀の美術品、装飾品、家具、武具、磁器など。特に18世紀フランスのものが多い。

ジャン・オノレ・フラゴナール「ぶらんこ」1767年

ロココ時代の傑作として有名なこの作品、天真爛漫にブランコで遊ぶ女性のドレスが花びらのよう。ほんわかした雰囲気の絵なのだけれど、実はいろいろなことが秘められているのだ。

左下の男性は彼女の愛人なのだが、実はスカートを下から覗いている。ちなみに影に隠れてブランコを押している男性は彼女の夫で、この場面はとんでもない不倫現場なのである。

そして女性の脱げた靴はふしだらな性の象徴。

下世話なモチーフを上品に、そして巧みに描き上げた作品。これを見るためだけでもウォレス・コレクションに行く価値はある。

他の絵画作品についてはこちらの記事をどうぞ。

豪華絢爛な家具がずらり

フランス製の巨大な置時計 1712 – 1720年

1メートルも高さがあるこの時計、金の彫像が2つ施されている。トップの天使のような像は、愛の象徴であるクピド。時計盤下の老人は、時間の象徴だ。

これは「愛の時間への勝利」という、18~19世紀の時計装飾で人気だったテーマであるという。

見事な寄木細工

 テーブルにはめ込まれた、素晴らしいクオリティの寄木細工の絵。

家具や調度品は全体的に動物や植物をモチーフにしたものが多い。家主の趣味だったのか、当時の流行だったのか。

変わったデザインの壺を発見 

白い象の形をした壺。白と明るいグリーンのカラーがなんとも綺麗なコンビネーション。写真では伝わり切らないが、実物はもっと綺麗だ。

ウォレス・コレクションには数多くの壺があるけど、一番好きなのがこの象の作品。始めて見たときに、「象が2頭もついてるよ、豪華だな」とか謎の感動があった。

小さめの彫刻も注目

ウォレス・コレクションには彫刻も含まれるが、大きいものはなく、机の上に置いて楽しむものなど小さめのものが多い。 

Filippo della Valle「クピドとプシュケ―」1732年

クピド(キューピッド)は愛の女神ビーナスの息子で、アモール、エロスという別名もある。美しい人間の娘プシュケーに嫉妬したビーナスは、クピドに愛の矢で醜い男に恋をさせるよう命令する。

しかし間違って自分に愛の矢をうってしまったクピドは、プシュケーに恋してしまう。

天使の羽を持つのがクピド、羽がないのが人間のプシュケーだ。

エロスとプシュケーの物語は数多くの芸術家がモチーフとしてきたが、どのように2人を表すかは人それぞれだ。この彫刻は2人は子どもの姿だが、青年と少女、大人になった姿をとることも多い。

ルーブル美術館にある有名な「アモールとプシュケ」像は、美しい青年と少女だ。→ルーブル美術館で見られるイケメンと美女を紹介するよ――アントニオ・カノーヴァ「アモールとプシュケ(エロスの接吻で目覚めるプシュケ)」

この作品は、いたいけな子供2人がチュッとキスをしている感じで、なんとも可愛らしい雰囲気(正面から見るとプシュケーの顔がちょっと怖いけど…)。

後ろからの眺めも素敵だ。子供特有のふっくらとした腕や脚など、まだ幼い体つきがよく表現されている。

頬をぷくっと膨らませた彫像

ルイ-シモン ポワゾ「オーレイテュイアをさらうボレアス」1810~30年 

この彫刻は、北風の神ボレアスがアテナイの王女オーレイテュイアに恋をし、力づくで連れ去る場面。

なんでこんな顔をしているのかはよくわからないが、風の神なので風を起こしているのではないかと思われる。シリアスな場面のはずなのに、この表情のせいでかなりシュールである。

甲冑好きはロンドン塔よりここに行くべし

1階の展示室では、世界中の刀剣や甲冑、防具などの戦闘用の道具と工芸品を見ることができる。

ロンドン塔(Tower of London)の博物館にも甲冑が展示されているが、数もそこまでないし、何より20ポンドもするのに他の展示はたいして面白くないので、甲冑目当ての人は絶対無料のウォレス・コレクションに行くべきである。

15世紀ドイツの甲冑。この騎馬甲冑はめちゃくちゃかっこいい。馬の兜がユニコーンのようになっているのも魅力的。

人間用の甲冑は計27㎏、馬用は30㎏ある。これで走りながら戦うんだからすごい。

17世紀 北イタリア

16世紀 ドイツ

日本の兜の飾りのように、西洋の兜の飾りにもいろいろなデザインがある。

他にも中東や中国の戦闘服、インドのサーベルナイフなど世界中の武具を見ることができる。

盾 1550~59年 イタリア(おそらくミラノ)

細密画のような装飾が彫りこまれた盾。実用ではなく飾り用だったようだ。

軍隊の勝利の行進が描かれている。中央の旗を持った女性は、勝利の女神ヴィクトリアか、ニケだろうか。

今は黒ずんでいるが、当時は銀色の盾だったという。

ちょっとグロテスクなお皿

ベルナール・パリッシー派 16世紀後半 フランス

リアルな蛇やトカゲが彫られた皿。これも飾るためのものなのだろう。このぬるぬる感はなかなかのもの。

フラミニオ・フォンタナ工房 ワインクーラー 1574年

巨大な金融業によってフィレンツェを支配した、コスモ・デ・メディチのために制作されたとされるワインクーラー。宴会の際に氷と水を注ぎ、ワインを冷たいままに保つために使われた。グロテスクな怪物の装飾は、上半身が人間、下半身が翼をもつ獣の像。

宴会よりも黒魔術の儀式があいそうな見た目だが、当時の富裕層の美的感覚は面白い。

中庭にはフレンチカフェ

美術館内の広場には小さいが洗練されている中庭のようなスペースがあり、レストランが併設されている。2000年にできた、フレンチカフェだ。

天井がガラス張りになっていて、夜は星空の下で食事をとることができる。調べたらスコーンやアフタヌーンティーもあるようだ。でも食事メニューもスズキやポーク、鹿のグリル、各種スターター、チーズプレートにワインリストまでそろっているし、期待できそう。

まだ利用したことがないが、とてもくつろげそうなのでいつかブランチでもとりたい。


Wallace collection 

住所:Hertford House, Manchester Square, Marylebone, London W1U 3BN