大英博物館のルーム1「王の図書室」見どころを全部紹介するよ!

2017年1月2日アート解説・展示レポ, ロンドン・イギリス生活, 大英博物館, 科学・生物, 西洋美術

知らない人はいない大英博物館。

私も会員になってしまったくらい大好きな博物館なのだが、やっぱり一番の目玉は、数ある部屋の中でも、堂々1番目のルーム1、「King’s Library(王の図書室)」と呼ばれる部屋だと思う。

6年前、初めてロンドンに旅行で来た時、この部屋に入って、「こんなに美しい博物館があっていいんだろうか?」と驚いたものだ。

「King’s Library」とはどんな部屋なのか?

なんで「図書室」と呼ばれているかというと、ジョージ3世(1738~1820)が集めた本が並べてある、本当の図書館だったから。その名残で、今でも壁際には古書がずらり。

現在は図書館(大英図書館)として、違う場所に別館が作られ、所蔵の書物はほぼそこに移されたという。

「啓蒙」のための部屋

「Enlightment(啓蒙の部屋)」というのが正式名称のこの部屋、「啓蒙」というと、ちょっと「洗脳」に近いような怪しげな印象を受ける人もいるかもしれないけれど、本来の意味は、「人々に正しい知識を与え、合理的な考え方を促すこと」

17~19世紀に、考古学や科学など様々な学問が劇的に発展し、蓄えられた知識を人々に広めるために、とつけられた名前だ。

横長のこんな広い部屋になっている。その中には、7つのセクションにわけられて、美術、科学、考古学、民俗学などにまつわる、古今東西あらゆるお宝がぎっしり詰まっている、宝箱のような部屋なのだ。

その中から、素晴らしい品々を私の独断と偏見で紹介していく。

美しいアポロ像

この美しい裸体像は、「アポロ像」。

2世紀、古代ローマで作られたが、上半身の部分と右側の支柱だけ当時のもので、顔や下半身などその他の部分はは18世紀に修復されたもの。

鳥の標本コレクション

大英博物館創設の基礎となったコレクションを持っていた、スローン卿という貴族のコレクションが、ここには多数集められている。
この鳥の標本もその中のひとつ。

長く美しい羽が内巻きにこれまた美しい形に整えられていて、ここの学芸員がこの鳥を展示する際、手で優しくなぞってセットしたんだろうか、とか想像してしまった。もとから整っていたのかもしれないけど。

美容師の人とかならわかってくれそうだけど、この毛が見事にするって流れている感じ、素晴らしいよね。これを担当した学芸員は快感だったんじゃないかなあ。

この鳥はおそらく、ジャングルにいるアレだと思われる。

※こんな感じの(オオハシ)

ハチドリから、尾の長いキジのような鳥まで、様々な標本が飾られた鳥コーナー。

押し花で作られた植物図鑑

スローン卿はこんな風に、植物を押し花状態にして収集し、合計255冊ものアルバムを作った。

自分なりに分類して、「植物図鑑(本物)」を作っていたらしい。当時はとても貴重な資料だっただろう。

巨大なアンモナイトの化石

巨大なアンモナイト。私の影がうっすら反射しているので、それと比べてもらえばどれだけ大きいかわかると思う。

マストドン(古代の象)の化石

マストドンという、古代の象の祖先の下あごの部分の化石。

図書室で化石が見られる場所はここだけ!

グリフィン脚の巨大なボウル「The Trentham Laver」

グリフィンの脚に支えられたボウル。

もとはハドリアヌス帝時代の古代ローマ制だが、後世に画家・建築家のジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージが装飾を付け加えた。

土台には、6つの奇妙な人間の顔が彫られている。

綺麗な足の形。この曲線がたまらなく美しい…。

貝コレクションの奇妙な形の貝

貝コレクションの中に変な貝があった。こんなの見たことない。うにのような…。

キリストのレリーフ(15世紀)

15世紀、イギリスの教会に飾られていたパネルの一部。もともとはカラフルに彩られていたらしい。

左は天使が聖マリアにイエスの懐妊を告げる受胎告知の図。

十字架を持って磔刑場所へと向かうキリスト。でもなんかキリストの目が変。閉じているようにも見えるし、白目にも見える。

もともとは彩色されていたのかな?

知恵の神ミネルヴァ(1783年)

ここにもイケメン~~!!と思ったら女性像だった。甲冑を身に着けた姿で現される、女神ミネルヴァ。

もともとエトルリア神話で知恵・戦争・芸術・学校・商業の神であったらしいが、ローマ神話に取り入れられてからは、知恵、芸術、工芸、戦略を司るギリシア神話の女神アテーナー(アテネ)と同一視され、詩・医学・知恵・商業・製織・工芸・魔術を司る存在となったようだ。

甲冑は、父ゼウスから生まれたときにすでに着て生まれた模様。

西洋では教育に関連するシンボルとして使われることが多いようだ。

ヒエログリフの描かれたエジプトの石碑


エジプトの石碑も置かれている。未だにうっすらと塗料が残っているのはすごい。当時はカラフルだったそうな。

ただ、エジプトの遺跡に関しては、「古代エジプト&スーダン」コーナーの方が色々置いてある。かの「ロゼッタ・ストーン」もそこにあるので、お見逃しなく。

中国の観音像

東アジアのものも展示されている。これは白磁と青磁どっちだろう…。うっすらと青いし、青白磁かな。白磁と青磁の見分けは繊細で難しいらしいので、私にはわからないや。

獅子に乗った文殊菩薩(日本)

知恵の神である文殊菩薩の、獅子に乗った日本製の像。

右手に持っている剣で無知を切り、左手の巻物には釈迦の知が書いてある。獅子の咆哮は、全ての獣を畏怖させることから、仏の説法を表しているとされる。

少しライオンの咆哮と仏教の関係について調べたら、スノー・ライオンというものを見つけた。面白いので少し説明する。

これは日本の仏教ではなく、チベット仏教に登場する獅子で、青いたてがみに白い体を持つ。

無条件の明朗さ、疑心からの解放、明確さ、正確さを表し、仏陀の守護者として、絵画などに描かれることが多い。

そして、咆哮について。

スノーライオンの咆哮は「空」、勇気、真実の音を具現化しているため、ブッダの教えを表す法と同義であるとして扱われ、カルマからの解放、菩提への呼び声を意味する。その咆哮は力強く、1回の咆哮で7頭の龍が空から落ちるとされている。

とある。7頭も龍を落とすのか。恐るべし。

仏教では、獅子の咆哮は昔から何らかの形で釈迦の教えを表すものらしい。

「JAPON」と書かれた不思議な『日本誌』のイラスト(1729年)

ドイツ人の医者、博物学者、エンゲルベルト・ケンペルが著した「日本誌」のイラストのうちの表紙。

実際に2年、ケンペルは日本に滞在し、その経験をもとにこれを書き上げたが、出版されたのは彼の死後だった。スローン卿がその出版をバックアップしたらしい。すごいな、スローン卿…。18世紀に西洋人が日本のことを知るための最も重要な参考資料とされた。

これはそのフランス語版。西洋の天使っぽい女性と東アジア人が一緒の場にいる奇妙な絵になっている。

左のアジア人(日本人ではなくて中国人に見える…)が持っている、紙に書かれた漢字をよく見てみると、

干支じゃん。なぜここで干支なのか。この男は易者だったりするのか。なぜあえての干支なのか。

きちんと計算された意図があるのかもしれないが、ここに西洋人の「漢字をかっこいい見た目だけで選んでデザインに使おうぜ」という現代につながる系譜を見た気がする。いや本当にちゃんとした意図があるんだとしたら知りたい。

18世紀の太陽系の模型

1750年ごろ作られた、太陽系の模型。太陽を中心に惑星や月が設置されている。

宇宙の仕組みを勉強するツールとして、授業で使われたもの。

巨大な足の彫刻

古代ローマ、1~2世紀に作られたもの。ギリシャ風のサンダルを履いている。ナポリに近い場所で、発見され、もともとは巨大な人物像を支えていた足だったと考えられている。

よく彫られているし保存状態もいい。踏みしめた足の力の入れ具合と爪の辺りの表現が見事。

謎すぎるブロンズ像「鶏のトサカが生えた卑猥な男」

謎の小さなブロンズ像を見つけた。

股間が強調されているが、これは古代ギリシャ、ローマで流行した「ファルス(男性器)信仰」のもと作られたもので、このようなモチーフは豊穣や繁栄のシンボルだった。

それよりも私が気になったのは、なぜ鶏のとさかが頭にあるんだ?
あごにも、ひげの代わりに鶏のひだがついているし。

説明がなかったので、ちょっとググってみたが、ローマ兵士が兜に鶏冠型の飾りを着けているのはあったらしいが、ここまで徹底的に鶏を模したイメージは出てこなかった。

しかもあごの下まで真似ているのは相当だ。もはや兜は関係あるまい。とすると何だろう。

たぶん、鶏を多産の象徴として鶏頭の男を作ったのかな?それかすっごい鶏大好きな人か、どっちかだろう。

馬の頭部の彫刻

古代遺跡の装飾だったと思われる、馬の頭部。本物くらいの大きさがあり、精巧に彫られていて迫力がある。

骨を見て彫ったような、というかまるでこれが頭蓋骨のような作品。

小さい「ラオコーン像」

バチカン美術館にある、古代ギリシャ時代の傑作彫刻である「ラオコーン像」の縮小版。本家は大理石だけど、こちらは木製。

トロイの神官ラオコーン(中央)と息子たちが海蛇に巻き付かれている場面。

サイズは小さいとはいえ、本家にも負けないほどの出来栄え。苦痛に満ちたラオコーンの表情がよく再現されている。

ペルーの顔つき瓶

ペルーの瓶だが、顔がついていてなんかシュールなのでお気に入り。東インド会社の従業員が作ったもので、女性や祭司、兵士などの顔が彫られている。人物のモチーフは、古代ギリシャのダレイオス1世が君臨したペルセポリス宮殿からとられたという。

何が何やら、複数の文化が複雑な絡み方をしている。

これは兵士だろうか、女性だろうか、頭の上からさらに小さい頭がぽこぽこ出ているのがおかしい。

人間の形をした入れ物

ネイティブ・アメリカンの、油を入れる容器。人間が臓器をくりぬかれたみたいな形だ。

イギリス海軍士官のジョージ・バンクーバーが、アラスカから北アメリカにかけて航海した1791~1795年の間に見つけ、持ち帰ったもの。

ネイティブ・アメリカンの美術については全く学がないのだが、実用的でありながら、顔や手足は彫刻さながらに実によくできていて、彼らのクリエイティビティはすごいなと思わされた。


この部屋は、もちろん無料で閲覧できるし、大英博物館全体を凝縮したといっていいほど、バラエティに富んだ部屋なので、絶対におすすめ。

むしろこの部屋なしでは大英博物館は語れない!

回る順番は自由なので、好きなように回って、面白いものを見つけるのが、一番の楽しみ方。

その他大英博物館の詳細展示レポはこちらから。