ロンドンのヒンドゥー教寺院は異世界に迷い込んだような空間

ロンドンにヒンドゥー教寺院があるらしいと知った。何でもヨーロッパで一番古いヒンドゥー教寺院だという。

まさかイギリスにキリスト教以外の宗教建築があると思っていなかった。「誰でもウェルカム」とサイトに書いてあったのでいそいそと見学に出かけた。


BAPS Shri Swaminarayan Mandir

入場無料
※露出度が高い服では入れないらしいので注意

住所:105-119 Brentfield Road
Neasden, London NW10 8LD, UK

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交通状況
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200年の歴史を持つ寺院で、Swaminarayan(スワミナラヤン)という神を祀っている。

ロンドンのゾーン3にあるので、割と行きやすい。駅からは20分ほど歩くが、バスを使ってもいける。

到着して思ったのは、「門からしてすでにここはイギリス感がない」ということ。異国に来たみたいだ。

ワクワクしてきたぞ…!!

が、この正門ぽい門は閉まっていたので、警備員さんが立っている横の小さな入口へ向かった。

セキュリティチェックがある

警備員さんに「道路を渡った先に荷物を預けるところがあるから預けてきて」と言われ、預けてから、さらに金属探知機のチェックをくぐってやっと入れるのだった。

ちなみに寺院内はカメラ禁止で、カメラも預けないとならない。携帯と財布は持ち込んでいいとのこと(でも携帯でも建物内でも写真撮影は禁止)。

外からは写真を撮ってもいいらしい。

寺院は白を基調とした洗練された佇まいの建物。

建物の外壁には、神像が至る所に配置されていたり文様が施されている。装飾性の高い建築だ。

ここが入口。ここからは写真が撮れなかったので、イメージ画像でお届けするよ。

靴を脱いで上がる

この入り口を入ると、カラフルなカーペットが敷かれているホールにレセプションが見え、「靴箱はあちら」というサインがある。どうやら靴を脱いで見学しないといけないらしい。男女別になっているので、女性用靴箱に靴を置いて、見学開始。

当然中にいる人は皆裸足(又は靴下)で、額には赤い印がついている。オレンジ色の法衣を着たお坊さん?らしき人が歩き回っていたり、ロンドンでは通常見られない光景が広がっていた。

この建物の見どころは、大理石の広間と展示室である。お土産ショップもあるので、記念に何か買って言ってもいいかもしれない。

大理石の広間には彫刻作品がたくさん

2階には白い大理石でできた広間がある。写真を撮れなかったのが本当に残念に思うほど、素晴らしく美しい空間だった。

白い壁には木製の観音開きの大きな扉がいくつもついており、中には神像が祀られているらしい。私が行ったときは閉まっていて、外側に神像の写真が表示してあった。儀式の時などに御開帳するのだろうか。

この広間には、同じく大理石の太い柱が何本も立ち並び、一本一本にヒンドゥー教の神様の像が彫られている。

ヒンドゥー教で奉られる神像と言えば、三大最高神のシヴァ、ヴィシュヌ、ブラフマーに加えて、シヴァの妻パールバティー、その子供の象頭を持つガネーシャなど。その他多くの神がいる。

柱の浮彫を一つ一つ見ていくうちに、気になったものがいくつかある。

ライオンの頭、猪の頭、魚の下半身、亀の下半身

1つの柱につき4つの彫像がぐるりと柱を取り囲んでいるのだが、ライオンの頭を持った人間像、猪の頭を持つ人間像、上半身は人間で下半身が魚の人魚のような像、上半身は人間で下半身が亀の4体が彫られた柱があった。

これは最高神のうちの1人、ヴィシュヌ神であるらしい。

ヴィシュヌ神は世界の守護者として悪を遠ざける役割を果たすのだという。ヴィシュヌの神話の一つで、「現実世界はヴィシュヌが見た夢だった」というものがあるらしく、これは中国の思想家、荘子の「胡蝶の夢(自分が蝶の夢を見たのか、蝶が人間になった夢を今見ているのか)」の話を思い出させる。

ヴィシュヌ神には別の姿であるアバター(ヒンドゥー教ではアヴァターラという)が多数おり、中でも重要視される10つの中に、この4体があるのだという。

ここで見たものと近い形のものを参考画像でご紹介しよう。

©Adityamadhav83

ライオンの頭を持つアヴァターラ、ナラシンハ。

©I, Sailko

猪の頭を持つアヴァターラ、ヴァラーハ。

©Ks.mini

魚の下半身を持つアヴァターラ、マツヤ。

©Rajasekhar1961

亀の下半身を持つアヴァターラ、クールマ。かなりシュールだ。

猿の神ハヌマーン

©PHGCOM

柱には猿の神であるハヌマーンも彫られていた。ヒンドゥー教の聖典である「ラーマーヤナ」に出てくる猿族の王で、ヴィシュヌ神を何度も助けた勇敢な戦士とされている。

ヒンドゥー教に深く根付いている神の一つで、多くの寺院で奉られていたり、ハヌマーンにまつわる踊りもある。私はカンボジアの孤児院で、そこの子たちが演じるハヌマーンの踊りを見たことがあるが、とても格好良かった。

半男半女の像

©Jean-Pierre Dalbéra

右半身が女性、左半身が男性とくっきりわかれている不思議な像を発見した。

これは、シヴァ神とその妻パールバティーが合体して作る姿、アルダナーリーシュヴァラという両性具有の神なんだそうだ。

宇宙における男性性と女性性の融合を表し、あらゆる創造のシンボルとされている。

ヒンドゥー教について学べるミニ展示

この寺院、入場は無料だが、中に2ポンドで入れるミニ展示室がある。入る時にガイドブック(英語)ももらえる。ヒンドゥー教についてわかりやすく解説した内容で、小さな展示室ながらも見ごたえがあり、いろいろ知ることができたので、解説を参考にここに書き留めておく。

ヒンドゥー教について

ヒンドゥー教は世界最古の宗教の一つで、紀元前6500年頃インドで発祥したとされる。

キリスト教のイエス、仏教のブッダ、イスラム教のムハンマドのような決まった創設者は存在しない。三神一体といい、シヴァ、ヴィシュヌ、ブラフマーを最高神として崇めるが、その他にも多数の神を奉る多神教。

カーストと呼ばれる階層制度や牛を聖なるものとする思想も、このヒンドゥー教から生まれたものである。輪廻転生があり、魂は何度も生き返り、魂が高みに行くチャンスを与えられる。また、カルマ(業)の思想もあり、自分の行動に責任を持たなくてはならない、という側面もある。

ヒンドゥー教の言語はサンスクリット語。史上最も古い体系化された言語だという。語彙が豊富で、「土」を表すが65種類、「水」を表す言葉が70種類ある。聖典である4種類のヴェーダはこのサンスクリット語で書かれている。

オリジナルのヒンドゥー教=古代インドの文化 という感じなので、この展示はほぼインド文化の展示だと言っても差し支えなかった。

インドについて

展示内では、古代インドで発明された物事が列挙されていたのだが、実際、世界最古の大学は紀元前700年ごろにインドのタキシラにできた僧院で、さまざまな分野の高等教育が行われており、様々な技術や知識がインドから生み出されたのもうなずける。

この大学には、アラビア、バビロニア、中国、ギリシャ、シリアなど世界中から留学生や学者が集まり、生徒は1万500人をかぞえたという。

インドで発展した学問と言えば、ゼロの概念、幾何学、パイ、十進法などの数学、整形手術を含む医学、科学など多岐に渡る。

ちょっと面白かったのは、「インドすごいぞ!」感が若干出ていた展示だったこと。例えば、以下のような例が列挙されていた。↓

  • コペルニクスの1000年前にインドでは地動説が唱えられていた!(実際に太陽中心説を初めて唱えたのは紀元前3世紀のアリスタルコスだけど)
  • ニュートンの1200年前にインドでは引力が知られていた!
  • 今から1500年前のインドで計算されていた1年間の日数は365.258756484日。現在の365.2596日と0.0002%の誤差しかない!(ただ現在の日数の計算方法は3種類あり、通常使われる公転周期は365.2564日なので、ズレはやや大きい。それでもすごいけど)

と、突っ込みつつも「はえ~ほんとにインドすごい」となることが沢山解説されていて楽しめた。

スワミナラヤンさんは意外と最近の人

http://www.swaminarayan.info

スワミナラヤン派の寺院なので、奉っている神スワミナラヤンの生涯についても説明しているコーナーがあった。人の姿をした神のような扱いらしい。

スワミナラヤンは1781年生まれ。あれっ…意外と最近…というのが正直な感想。

ただその生涯がすごい。

  • 7歳でヒンドゥー教の聖典を多数マスター
  • 10歳で弁論大会で勝利
  • 11歳で7年間の布教の旅に出る
  • 20歳でSwaminarayan Sampradayaという宗派を創設、トップとなる
  • 29歳で女性や子供、恵まれない人たちのための福祉制度を始める
  • 45歳で教義を書いた聖典(Shikshapatri)を著す
  • 1830年、49歳で亡くなる。スワミナラヤン派でアクシャルダムという神の住み場所に行ったとされる。

前半の生涯は本当なのだろうか、と思うくらい伝説的な人物であったようだ。

 

というわけで、予備知識なく行ったもののかなり面白かった。いい意味でイギリスらしくない、異世界的な雰囲気が楽しめるので、ちょっと変わった観光をしたい人にはかなりおすすめ。


BAPS Shri Swaminarayan Mandir

入場無料

住所:105-119 Brentfield Road
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