動物の骨と標本だらけの博物館@ロンドン:グラント・ミュージアム

2017年6月14日

私が「ロンドンの生物系・解剖系博物館」でイチオシしたい、穴場な博物館、それが「グラント・ミュージアム(Grant Museum of Zoology)」である。

ここでは豊富な写真で、ツアーのようにその見どころを紹介していくよ。


Grant Museum of Zoology

住所:Rockefeller Building University College London 21 University Street London WC1E 6DE
入場無料

開館時間:月~金 13~17時 ※土日は閉館

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ロンドン大学付属の「グラント・ミュージアム」

ロンドン大学カレッジ(University College London)付属の博物館で、実際に学生の学習や研究にも使われる標本を保管している。それが一般公開されていて見学することができるのだ。

入口は目立たないので、グーグルマップなどを見ないとたどり着けないかも。

「Zoology」とは日本語に訳すと「動物学」。

幅広い意味を持つが、基本的には生き物を分類し、解剖によってその内部構造を理解することを指す。現在ではもっと要素が細分化しているので、この言葉を使うことは少なくなった。

天井すれすれまで標本がびっしりと展示されていて、小さい博物館だけれど見るものは無限にある。

上には上がれないが、(たぶん)人間の骸骨たちが上から覗いているのがちょっと面白い。

展示室の中央には、少しだけれど学習スペースが設けられている。

入口から骨とホルマリン漬けだらけ

入口を入るとすでに、おびただしい量の骨格標本とホルマリン漬けの動物が目に入る。

ウサギの脚の骨のコレクション。

科学の発展で遺伝子学や分子学が急速に研究が進み、地道に生き物の体を解剖して研究することは「古いやり方」になってしまった。

多くの大学でどんどん「動物学」研究は廃れていき、多数の貴重な標本コレクションが廃棄されそうになった。それを救ってコレクションしたのがこの「グラント・ミュージアム」だ。

コウモリの骨格。

豚の胎児や蛇の子供など、あらゆる動物のホルマリン漬け。

子亀のホルマリン漬けもあった。実験や研究にすぐに使えるように大量に同じ場所に保管しておくんだとか。

もぐらのホルマリン漬け。実はこの標本は人気?なのか、このモグラのぬいぐるみが入口で売られていた。そんなに高くなかったと思う。

ぬいぐるみも標本と同じような感じで瓶に詰められていたので、「家でこの標本を再現しよう!」みたいなコンセプトなのかもしれない。

ガラス細工の生き物たち

入口に近い一角には、1800年代半ばに制作された、ボヘミア地方のブラシュカ父子(レオポルド・ブラシュカ&ルドルフ・ブラシュカ)によるガラス細工の生物たちが展示されている。

ブラシュカ父子は世界中の大学や博物館の研究用に、精巧なガラス生物模型を作ったことで有名だ。

芸術作品としても貴重な品物だ。誰もこのクオリティのものは作ることができないという。

これはクリオネ。実物は大変小さい。この透け具合を再現するのは見事というほかない。

イカやクラゲ、カタツムリなど。

多様なイソギンチャク。

ハーバード大学自然史博物館は、このブラシュカ作品の世界最大のコレクションを持っているという。
一般公開されているというから、いつかぜひ見に行きたい。

メイン展示室に行く前に現れる、オオツノジカの頭骨標本。
40万年前~7000年前に生息していた鹿で、角は3.5mあるという。

一番上の棚にはアニメキャラクターのような可愛い恐竜の模型が。走っているみたいだ。

この博物館は上の段に展示されている標本が見られないのが少し残念。

この巨大な骨格はジュゴン。この姿から人魚の伝説が生まれた(個人的にはなぜ女性と間違えたか謎…)。

生きる化石、カブトガニもいた。

お約束のように生きる化石も瓶詰めにされている。

タカアシガニもいた。「Japanese spider crab」が英語名ということは、日本固有の種なのか。

タカアシガニと一緒に「ウミグモ」の標本も。「スパイダークラブ」だからってクモと一緒の棚にされてしまうのか…。

※補足:ちょっと調べてみた。

どうやらタカアシガニも「生きる化石」らしい。お前もか。
現在生息する節足動物では世界最大だということだ。
もちろんクモではない。だがクモガニ科に属するらしい。ちなみにクモガニ科の生き物は200種類くらいいる。

貴重な絶滅した動物の骨も

絶滅した生き物の骨格も見ることができる。

クイズ① これは何の骨格でしょう?

正解は…

オカピでした。

クイズ② ではこの骨格は?

答えが見えてしまっている…!

フクロオオカミでした。別名タスマニアオオカミ、タスマニアタイガーとも。

オーストラリアのタスマニア島に生息していた、見た目は犬のような種だが、北半球のどの捕食動物とも遺伝子が近くない特殊な進化をした動物だという。

これを収斂進化と言って、異なる動物グループが、生息環境が似ているために似た身体的特徴を持つようになった進化のこと。フクロオオカミはイヌ科ではないのに、犬に似た特徴が多数見受けられる。

霊長類の標本

もちろん我らが霊長類のコーナーもある。

チンパンジーの骨格。人と98%DNAが同じなだけあって、やはり似ている。
頭が大きくて、人間の子供そっくりだ。

上から四天王のように見下ろす霊長類たち。

右から、アイアイ、テナガザル、若いチンパンジー、若いオラウータン。やっぱりチンパンジーが一番人間に近いかな。

爬虫類の標本

モロクトカゲ(トゲトカゲ)の標本。砂漠に住む変わったトカゲで、その名の通りトゲだらけである。

皮膚の溝が水を吸うようになっていて、少しでも体が濡れると口元へ水が流れてくるようになっているという、砂漠居住に特化した機能を持つ。進化はすごい…。

 
超巨大なパイソン。展示室の中央に堂々と佇む王者の風格である。この博物館の目玉的な存在。

体が木に絡みついている。よくこんな風に標本を設置できるなと感心した。

トビトカゲ。

空を飛ぶトカゲ。正確には飛ぶというより滑空である。ムササビのようなひだをパラシュートのように使って、木から木へ飛び回って生活する。

大型の亀の標本。甲羅の裏側(腹側)から見るとなんかすごいことになっている。
見てはいけないものを見てしまったような気持ちになったのはなぜだろう…。

甲羅に対してお腹が守られてなさすぎる。なんか隙のある姿を見てしまっているような…。

ワニの子供の標本。

恐竜の化石も見ることができる

恐竜時代の化石も数は少ないけれど展示されている。

翼竜の化石。ランフォリンクスという種だそうだ。右はレプリカで、左は本物の化石。

歯の跡までくっきりと残っている綺麗な化石。翼のひだ(と指)も見える。

始祖鳥の化石。右はベルリンで発掘された化石のレプリカで、左はロンドンで発掘されたもののレプリカ。

羽根の跡までくっきり残っている、かなり完全な化石標本だという。
特に右のベルリン版は浮彫のように全体像がはっきりしている。これを見つけたときは学者は歓喜したのではないだろうか。

海に住んでいた魚竜、イクチオサウルスの化石。イルカに似た姿をしていたけれど、爬虫類。

肉を透明にして骨を見る透明骨格標本

筋肉や脂肪を透明化させ、骨のみを染色して見やすくした標本。

とても綺麗で、私はこの透明骨格標本が大好きなのだ。

研究のために生まれた方法だけれど、出来上がったものはまるでアートのようだ。
実際にこれをアートとして昇華した日本人のアーティストもいる。富田伊織さんという方だ。以前出版社で勤務していた時にインタビューさせていただいたことがある。

もともとは水産系の勉強をしていて、その過程で透明標本に魅せられてしまったのだという。

硬い骨を赤色、軟骨を青色で染めるのが一般的。

数ミリくらいの小さい胎児の標本(なんの動物かは不明)があったので人差し指と比べてみる。

拡大するとこんな感じ。こんなに小さいのに手があって足があって、骨が全部そろって機能しているのは生命の神秘。

哺乳類の標本

再び違う種類のコウモリ。

カバの頭骨。これこそ恐竜みたいな骨格だ。最初見たとき知っている動物じゃないと思った。

骨で見ると全然違う形に見えるから、動物は面白い。

ダマジカの子供の標本。こんな小さい瓶に入るものなの、というくらい小さかった。

これは大型肉食獣のようにも見えるけど、カンガルーの骨格。
骨で見るとなかなかいかつい姿をしている。小型の恐竜のようにも見えてしまう。

後ろ足のサイズが特大。指が二本だけしかないのね。

子供のカンガルーのホルマリン漬け。

大型肉食獣の骨格はやっぱり格好いい

この骨格はライオン。骨格自体も「獣」っぽさが出ていて素敵だけど、こんなポーズで展示するのもニクいくらい格好いい。キュレーターのセンスがいいな。

隣にある、妊娠中の猫の断面図。

これも大型ネコ科の頭骨コレクション。トラやヤマネコなど。

これは上の写真に似ているけど、アザラシやアシカの頭骨。頭骨だけ見ると犬や大型獣にそっくり。

その他海の動物などの標本

水生動物の標本も大量にあったけれど多すぎるので、特に面白いと思ったものをピックアップ。

干物にされた熱帯魚を初めて見たという新鮮な驚きから。

哺乳類のように水から出て呼吸をする「ハイギョ」。アフリカの若い個体。

ウミケムシ。英語ではsea mouseと呼ばれるが、日本語の海鼠(ナマコ)とは違う。

ふさふさした毛が生えたナメクジのような生き物。自分で言ってて気持ち悪い生き物だな…と思ったけど、このウミケムシ、玉虫色をしていてすごい綺麗…。悔しかったけど見惚れてしまった。

でも肉食で毛は剛毛で針のように刺さり、毒があるそう。何気に危険生物。

顕微鏡でとらえたミクロな生物の画像を集めたスペース。

その数2万種類。ここまで多いと圧巻。生き物の95%は親指より小さいそう。「でもほとんどの博物館は大きい動物しか展示しない」と皮肉った解説パネルがあって、イギリスらしい。

これも人気なのか?、入口でポスターが買えるらしい。


長い記事になってしまったけれど、これでも展示しているもののごく一部。

小さい博物館なのに、こんなに凝縮された展示物が見られる場所は他にない。

生物好きには絶対おすすめの場所なのでした。


Grant Museum of Zoology

住所:Rockefeller Building University College London 21 University Street London WC1E 6DE
入場無料

開館時間:月~金 13~17時 ※土日は閉館

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