刑務所の中から生まれたアートに価値はあるのか

2017年9月14日

サウスバンク・センターの一室でやっていた展示「We are all human」(11月13日まで)に行ってきた。

ここでは犯罪者が作った作品を展示している。

「刑務所の中でクリエイティブでいられることで、正気を保てるんだ。(…)陶芸のクラスに通うのはセラピーにもなっているし、素晴らしい経験をしている」(受刑者のコメントより)

仕掛け人はチャリティー財団 

この展示を企画しているのは、Koestler Trustというチャリティー財団。50年以上受刑者や拘留者などの作品を展示・販売している。 

全国から応募された何千点もの作品の中から、優れた作品を選出して賞をあげていて、この展示はその受賞者だけの作品を集めた展示だ。刑務所では、陶芸や絵画や彫刻など、クリエイティブコースのレッスンを受けることができ、そこで作った作品が多いようだ。

作品は会場で購入もできる。私が見に行ったときはすでに売約が確定していた作品が結構あった。

ここに出ている以外(=受賞しなかった作品)も財団で扱っているので買うことができる。
売り上げで得た利益は、財団に25%、被害者支援活動に25%、作家本人に50%の割合で還元されている。

刑務所内で作られた作品の数々

木製の時計(巨大)

入り口に展示されていた、この木製の巨大な時計は、マークという受刑者が作ったもの。
その緻密な造りに見入ってしまった。

木製の時計(小)

 

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上の写真中央の木製の時計は購入済みだった。タイトルは「時間は大いなる癒し」みたいな感じ。
時計をモチーフにした作品が目立っていた。

この作品のように、購入されたものには、タイトル部分に赤いシールが貼られている。

デヴィッド・ボウイの肖像(ペン画)

故デヴィッド・ボウイの肖像画。全てペンで描きこまれている。

この展示をキュレーションした学芸員も、もともと刑務所に入っていたそうだ。彼は今やイギリスでperformance poetry(観客の前で詩を詠むパフォーマンス型で作品を発表する詩人)の先駆者として名が知れている。

「1970年代、私自身刑務所にいた。当時は自分を表現する方法など、囚人には何もなかった。クリエイティブなことをしたいと思っていたけれど、どうしようもなかった。いま、私は言葉で自分を表現している。周りには、マッチ棒や、紙や、絵画など、いろいろな方法で自分を表現する人たちがいる。(…)

『私たちは皆同じ人間』という展覧会タイトルは、シンプルな真実だ。たとえ辛い時があっても、生きようとしているのは皆同じだ。(…)私はここのアーティストたちに、自分たちの作品は表現方法として価値あるものだと知ってほしいんだ」(パンフレットより抜粋・訳。Benjamin Zephaniah 詩人/同展学芸員)

この展示に動物のモチーフが多かったのは、自然要素を取り入れるためだろうか。

ポエムの間

ポエム創作コースもあるらしく、彼らが作った様々なポエム(のうち受賞作品)が展示されていた。HAIKU(俳句)を作ってる人もいた。コースで俳句のことを習ったのだろうか。

いじめられた孤独な鳥

この作品は目に留まった。大勢に攻撃された一羽の鳥。
タイトルは「Prison Gulls」。
Gullとはカモメのこと。カモメはロンドンでは街中を飛び回っていて、鳩のように身近な鳥だ。

「産業革命」の卵

これも気に入った。鳥の巣にある卵から工具が突き出ている。
タイトルは「Industrial Revolution(産業革命)」。このどっしりとした重そうなたたずまいと、味わいのある色が好きだ。

好きな作品をなんで好きか、と言われると言葉で説明するのは難しい。とっさには、「面白いから」とか「美しいから」とか抽象的なことしか言えない。でも「好き」って理屈ではないから、そんなものじゃないのかな?

犯罪者が作ったアートに、どんな意味があるのだろうか

作品が売れているということは、お金を出してでも欲しいと思った人がいるということだ。
ただの寄付なら、財団や他の団体に直接寄付すればいいだけの話。その作品に価値を見出す人が一定数いるんだろう。
実際「ほしい」と思った魅力的な作品もあった。最後の鳥の巣ね。

個人的には、このシステムと彼らの作品には価値があると思っている。

アート自体は、個人の背景に関係なく、生まれてくるものだ。
「クリエイティブになることが許される」環境はいろいろな場所で取り入れていくべきだ。


サウスバンク・センター

住所:Belvedere Rd, Lambeth, London SE1 8XX

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