イギリス初のミュージアム、アシュモレアン博物館のおもしろコレクションを紹介したい

2018年6月26日

※Photos on this page are with permission of the Ashmolean Museum, University of Oxford.

オックスフォードのアシュモレアン博物館に行ってきた。人からおすすめされたのだが、まさに「大英博物館のオックスフォード版」とも言えるほどの充実ぶりに圧倒された。

ここでは、実際に見て面白かったものを選りすぐって、撮ってきた写真とともに紹介したいと思う。


Ashmolean Museum

住所:Beaumont St, Oxford OX1 2PH

入場無料

アシュモルさんのコレクション

アシュモレアン博物館は、Elias Ashmole(エリアス・アシュモル)という政治家兼古物収集家が、1682年にオックスフォード大学に自身のコレクションを寄贈し、博物館を開いたのが始まり(ちなみにオックスフォード大学自体は1096年創立。すごい歴史だ)。

イギリスで最初の公的な博物館であり、世界初の大学博物館でもある。約350年の歴史を誇るコレクションである。

アシュモレアン博物館とは、いうなれば「アシュモルさんの博物館」といった意味。ちなみにアシュモル氏はフリーメイソンのメンバーでもあったそうだ。

規模は大英博物館より小さいけれど、それでもかなり広い(フロアは地下1階~5階)ため、全てのカテゴリをしっかり紹介するのは無理がある。なので、ここにあげるのは各展示室のほんの一部にすぎない。

入口から入るとすぐ、古代ギリシャ・ローマの彫刻が立ち並ぶスペースがあり、そこからさらに奥への部屋へと展示が続いていく。他の展示室へつながるドアの前にあったこの柱のような彫刻にまず目がいった。

きちんとしたキャプションがなかったのだが、土台に書いてあったラテン語(?)からしておそらく古代ローマの作。おそらく。

鳥の羽根ひとつひとつ丁寧に彫りこまれている、素晴らしい写実性だ。

これと対になっていたもう1つの柱。

浅い浮彫の繊細な女神。上部の立派な角を持つ山羊の頭も注目いただきたい。

ライオンの脚の装飾。獣脚は世界中の工芸品や彫刻で見られる表現であるが、これはさらに脚とライオンの顔が合体している。

でもものすごく顔がデフォルメというか、わけわからんことになっている…。脚の形に合わせるためにこうなってしまったのだろうか。

古代エジプトの部屋

タハーカ王神殿の壁 第25王朝

古代エジプトの展示室は、何部屋にもわたってかなりのスペースがある。ある展示室の中央にそびえていたこの壁は、古代エジプト末期時代のタハーカ(Taharqa)というファラオの神殿の壁である。

一番左に立っているのがタハーカ王で、その前に座るラー=アメンというエジプトの主神に白パンを捧げている。ラー=アメンの後ろには、その妻ムト、息子コンス、戦いの神モンチュとテーベの神々が彫られている。

書いてて思ったけどラー=アメンってラーメンみたいだよね…いやなんでもないです…ちなみにアンモニアはアメン神殿からとれたのでアメン神由来でそう呼ばれてるらしいよ。

メレスアメン 棺

ここにもアメンの名が入っている。メレスアメンは「Amun Loves Her(アメン神に愛された女性)」という意味があるらしい。メレスアメンとはテーベで働いていた女神官のこと。

とてもカラフルに彩色された棺。これはただの装飾ではなく、意味のある言葉なのだろう。

古代エジプトでは、人は死んでもその名前が保存されていれば永久の時を生きられるとされた。

セベク像 第12王朝

クロコダイルの頭を持つ豊穣の神。ピラミッドに併設されていた神殿に祀られていたものらしい。結構リアルなワニの頭部だ。エジプト美術は、特に彫刻はとても写実的なものが多いように感じる。

セベクという名は、「妊娠するかしないかを決める者」という意味だという。すごい直球な名である。

ギリシャ文化とインド文化が融合したガンダーラ仏像

このブログで何度も書いてきた、イケメンな仏像はここにもいた。

ガンダーラという地域は、紀元前6世紀~11世紀にアフガニスタン東部からパキスタン北西部にかけて繁栄した王国で、古代ギリシャ文化と仏教文化が混じった珍しい土地である。その美術表現は文化の混在が如実に表れている。

ブッダ 300~400年

ガンダーラからは、ギリシャ彫刻のような彫りの深いブッダ像が多数発掘されている。

礼拝者の頭部 300~400年

紀元前327年にアレキサンダー大王がガンダーラに侵攻、その際にギリシャ文化が伝わったとされる。ここで作られる仏像はギリシャ人のように彫りが深い。顔の系統もギリシャ系のように見える。

なぜなら、ここはアレキサンダー大王以後、ギリシャ人国家となった歴史があるからだ。

詳しくはこちら。

鬼子母神 100~200年

日本では鬼子母神と呼ばれる、ハーリティーの像。インドでは、子授け、安産、子育ての神として崇められる。

鬼子母神は多くの子を持ちながら人間の子を捕えて食べており、お釈迦様が見かねて彼女の子の1人をさらうと、彼女は半狂乱になり探し回った。お釈迦さまはそこに現れ、「子供がさらわれることがどんなに苦しいかわかっただろう。お前がしてきたことも同じなのだよ」と諭し、以後彼女は人さらいをやめたという伝説で知られている。

この鬼子母神像は、まるでギリシャ神話に出てくる女神のようないでたちである。

石膏彫刻の部屋

「Casts」という展示室には、古代ギリシャ・ローマの名彫刻をそのまま石膏彫刻で再現した作品がひしめいている。オリジナルそっくりに(もちろん欠けた部分まで)そのまま型をとってあるのだ。

ラオコーン像

世界でも最も有名な像の1つで、オリジナルはバチカン美術館にある。古代ギリシャ神話の神官ラオコーンとその息子たちが海蛇にしめつけられている場面である。

これは彼らが蛇に殺される直前のシーンなのだが、リアルな苦悶の表情、隆々とした肉体の表現、バランスのとれたプロポーションなど、その技術の高さと美しさが高く評価されている。あのミケランジェロにも影響を与えた作品である。

プリマポルタのアウグストゥス

こちらもよく知られている彫像。ローマ帝国の初代皇帝、アウグストゥスの肖像彫刻だ。アウグストゥスの説明では多くがこの彫像の画像が引用されている。オリジナルはやはりバチカン美術館だ。

ほぼ完全な状態で発掘されたこの像は、指先から衣服の細部に至るまで素晴らしい技術で彫られており、また威厳に満ちた皇帝の雰囲気も持つ。

オリジナルは、制作当時(古代ローマ時代)には彩色されていたそうだが、19世紀に発掘された時にはもうこのように色褪せていたという。
後ろにちらりと見える色が派手な像は、実際にこの像を彩色して再現したもの。

寄って全体像を見てみると……

これである。うーん。やばい。全く同じ像なのに全然すごく見えない。

なんかパチモンのように見えてしまう。オリジナルの顔料に忠実に再現したそうなのだが…ちなみに、色が塗られていない部分はオリジナルもそのまま無彩色だったという。

色褪せたほうがよく見えるのは、なぜだろうか。単に目が慣れているからなのか、頭が「そういうものだ」と認識しているからなのか、色が強すぎて視界を邪魔してしまい、繊細な細部にまで目がいかないからか。

漁夫

これは、技術的にはとても高いレベルなのに「その布、意味ないんじゃないんですか!」と突っ込みたくなった作品。

オリジナルは16世紀後半に発見が、最初は哲学者セネカの像だと考えられていた。家庭教師をしていた古代ローマの皇帝ネロの命で、風呂場で自殺をする場面だとされたのだ。
しかしその後、様相やシチュエーションがまったく同じである別の像が見つかり、それは漁師の像だったと判明。この像も漁師であると改められた。

なぜこんなフンドシになってしまっているのかは、説明がないのでわからなかった。しかし生身の人間のようにリアルな人体表現だ。腕に浮いた血管なんか特に。

この部屋の中で一番古い石膏像。オリジナルはヘレニズム文化の頃の作とされる。人間より大きいサイズで、どっしりとした存在感は圧巻である。

強い毛並みや長い牙なども相まって、野生味溢れる猪像となっている。

色がついていたら一瞬本物に見間違えそうな出来。この角度から見るともののけ姫のオッコトヌシにも見える。

その後上の階にある展示室でも、同じ猪を見つけた。これは手のひらサイズ。人気のほどがうかがえる。

ミュロン「円盤投げ」

これも超有名な作品。古代ギリシャのアテネで活躍した彫刻家ミュロンの作で、躍動感ある人体の表現が見事。オリジナルは現存していない。古代から何度もコピーされ続け、今こうしてみることができるのである。


あまりに長くなってしまうので後編に続く。

後編には、

こんなやつとか、

クローブという香辛料で作ったこんな船とか、

その他変な面白いものがばんばん出てくるのでぜひ見てね!

アシュモレアン博物館のハイレベル&珍奇な工芸品@オックスフォード


Ashmolean Museum

住所:Beaumont St, Oxford OX1 2PH

入場無料