北斎の超絶技巧—若冲顔負けの鶏図を発見した

大英博物館
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大英博物館で開催中の北斎展のレビューを書いたが、その中でもとりわけ感動した作品がいくつかあったので、この記事で紹介したい。

ここで紹介するのはすべて、版画ではなく肉筆画だ。

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北斎の鶏図

「軍鶏図」1826~34年

この素晴らしい軍鶏図を見てほしい。

私は伊藤若冲マニアで、鶏を描かせたら若冲の右に出る人はいないと思っているのだが、その思いが覆りそうになったくらい、この作品はかっこいい。

歌舞伎役者のように見得を切っている雄の軍鶏のぎょろりとした目と、力強くふんばった脚はむしろ色気すらある。

そして、羽毛の何パターンもある模様を見事に描ききっているのも見どころだ。若冲の鶏もそうだが、鶏一羽の中にも様々な色彩が隠れているのだな、と思う。

上部の、うっすらと、まるで消えそうなくらいさっと描かれた笹の葉も、アクセントとして良い働きをしている。
もしこの笹がなかったら、この絵の空間はとてもつまらなくなってしまったに違いない。

この絵を見た瞬間に、動けなくなってしまった。「単純な絵としての美しさ」とか、「格好良さ」とか、「生命力」とか、いろいろなものがごっちゃになって、強烈に感性にぶつかってきた。

見せるための完璧に計算された構図とモチーフと表現で、まんまと罠にはまってしまった感がある。こんな罠なら喜んでかかりにいきますとも!!!

濡れて透けた紙の表現

「西瓜図」1834年

これにも度肝を抜かれた。切ったスイカの上に紙と包丁が置かれており、細長く剥かれた皮が上に吊るされている。

薄い皮の表現もさることながら、濡れて透けた紙をこんなに日本画でうまく描けるものなのか……と。

拡大。スイカに張り付いた紙の透け具合がよくわかる。種すらうっすらと見えている。超絶技巧を見せる静物画だ。北斎の写実主義ここに極まれり。

朱色の神様

「朱描鍾馗図」

鍾馗(しょうき)という、疫病神をはらう中国の神様を描いたもの。日本では、疱瘡除けや学業成就に効くとして、端午の節句に絵や人形を奉納する文化があったという(今でもあるのだろうか?)。

この絵だけ赤一色で描かれていて目をひいた。調べてみると、赤色が疱瘡よけになるという迷信が昔はあったそうだ。

髭や髪は細かく柔らかく描かれているのに対し、その他の部分は強い筆致で描かれているのが面白い。

この髪の表現、間近でじっくり見ると、線の繊細さに驚くこと間違いなし。

画風も今のコミックに通じるものがある。線がくっきりしているからか、見ていて気持ちがいい。輪郭をくっきり描くのが北斎の特徴の1つでもある。

ここで挙げた作品は、もう一度見たいものばかり。会期中にまた行くと思う。

日本では大阪に巡回するようなので、行ける人はぜひ見てほしいと思う。全く同じ作品が出るのかはわからないけれど。

日本への巡回

あべのハルカス美術館

〒545-6016 大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階

2017年10月6日(金)~11月19日(日)
前期:10月6日(金)~10月29日(日)
後期:11月1日(水)~11月19日(日)

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